徹底解剖!アメリカ大統領選2024(1)

~仕組みと重要イベント~

前田 和馬

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Q.米国大統領はどのように選ばれるか?

A. 4年に1度の一般投票に基づき、各州に割り当てられた538人の選挙人のうち過半数を獲得した者が大統領に選出される。合衆国憲法で規定された選挙人制度は、当初は選挙人の方がより適切に大統領を選出できることを前提にしていたものの、実質的には有権者の代理人としての役割を果たしている。選挙結果に反する投票を行う「不誠実な選挙人」も過去にはいたが、こうした選挙人の存在が国民投票の結果を覆したことは歴史上ない。

大半の州において、最多得票の候補がその州の全ての選挙人票を獲得する(勝者総取り方式)。選挙人を投票に応じて比例配分する場合、人口の多いカリフォルニア州などの影響が大きくなる一方、こうした総取り方式であれば大統領候補者は人口の少ない州にも選挙運動を展開する必要が生じやすい。なお、メーンとネブラスカの2州に限り、州全体と下院議員選挙区ごとのそれぞれ投票結果に基づき選挙人を配分する。また、州ごとの選挙人の配分は10年毎に実施される国勢調査(直近は2020年)の人口数に基づき見直される。

Q.大統領候補としての立候補資格は?

A. 憲法上の規定は35歳以上、米国生まれの市民、米国に14年以上在住の3つのみ。実刑判決を受けている場合や服役中であっても大統領候補になる資格がある。但し2回を超えての選出はできないため、大統領を務められるのは2期8年に限られる。なお、副大統領候補は上記3つの条件に加えて、大統領と異なる州の住民であることが求められる。

大統領選挙における各州の投票用紙には候補者名が印字され、有権者は候補者をマーキングすることで投票を実施する(注1)。投票用紙に名前を記載するためには州ごとの要件を満たす必要がある。具体的には国政選挙における所属政党の得票率、或いは一定数の署名などの条件があり、少数政党や独立の候補者には一定のハードルがある。2大政党以外の候補者が当選する確率は非常に低いと考えられるが、1992年の選挙では実業家のロス・ペロー氏が独立候補として出馬し18.9%の票を獲得した。

Q.大統領選に関わる重要イベントは?

A. 主な日程は下記の通り。括弧内は2024年大統領選挙における日付。
  • スーパーチューズデー(3月5日):2~3月の火曜日にある予備選・党員集会の集中日。民主・共和両党における指名候補争いのヤマ場であり、各州・地域に割り当てられた代議員の3分の1以上の票が決まることもある。

  • 全国党大会(共和党:7月15~18日、民主党:8月19~22日):大統領選挙がある4年に1度開催され、2大政党の大統領候補が正式に指名される。事前の予備選において指名候補はほぼ確定しているため、大統領候補が指名受諾演説などを通じて有権者へアピールする意味合いが大きい。また、党の選挙公約である政策綱領が採択されることが多いほか、副大統領候補が未公表の場合には全国大会にて判明する。

  • 大統領選挙投開票日(11月5日):11月の第1月曜日の翌日火曜日に実施される。勝敗は日本時間の翌日昼頃から夕方にかけて判明することが多いものの、一部の州は接戦の際に投票の再集計を義務付けており、結果判明に時間を要する場合がある。例えば、2020年は郵便投票が多かったためバイデン氏の勝利宣言が投票日の4日後となった一方、2000年はフロリダ州の再集計を巡る法廷闘争へと発展し12月中旬に漸く勝敗が決着した。また、全議席が改選される連邦下院選挙、約3分の1議席が改選される連邦上院選挙も同時に実施される。

  • 選挙人投票(12月17日): 12月の第2水曜日後の火曜日に各州で選ばれた選挙人が投票を実施し、大統領選の正式な勝敗が確定する。選挙人538人の投票で過半数(270人以上)を得た候補がいない場合、1月招集の下院議会で大統領(各州代表による投票)、上院議会で副大統領(議員100人による投票)をそれぞれ選出する。

  • 新大統領就任(2025年1月20日):米国大統領の任期は選挙翌年の1月20日から開始される。同日に就任式を実施することが多く、就任演説では新政権の政策方針を示す。

【注釈】

  1. 一部選挙区では電子投票機が用いられるものの、機械の誤作動やハッキングの懸念が強く、有権者が投票用紙にマークを書き込み、これらを電子集計機でスキャンする選挙区が多い。また、多くの州では空白欄に名前を書き込むことで名簿以外の候補者にも投票が可能である。

【参考文献】

トーマス・H・ニール(2010)「選挙人団制度―現代の大統領選挙における選挙人団制度の役割」CRS Report for Congress

(参照 2024-3-5)

以上

前田 和馬


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前田 和馬

まえだ かずま

経済調査部 主任エコノミスト
担当: 米国経済、世界経済、経済構造分析

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