半導体の躍進に支えられた日本株(1月鉱工業生産)

藤代 宏一

要旨
  • 日経平均は先行き12ヶ月38,000程度で推移するだろう。
  • USD/JPYは先行き12ヶ月138程度で推移するだろう。
  • 日銀は4月にマイナス金利を解除した後、当分の間、金利を据え置くだろう。
  • FEDは5月に利下げを開始、FF金利は年末に4.50%(幅上限)への低下を見込む。
目次

金融市場

  • 前日の米国株は下落。S&P500は▲0.2%、NASDAQは▲0.5%で引け。VIXは13.8へと上昇。
  • 米金利はブル・フラット化。予想インフレ率(10年BEI)は2.323%(+0.1bp)へと上昇。実質金利は1.939%(▲3.8bp)へと低下。長短金利差(2年10年)は▲37.6bpへとマイナス幅縮小。
  • 為替(G10通貨)はUSDが全面高。USD/JPYは150半ばへと上昇。コモディティはWTI原油が78.5㌦(▲0.3㌦)へと低下。銅は8448.5㌦(▲25.5㌦)へと低下。金は2042.7㌦(+8.7㌦)へと上昇。

米国 イールドカーブ、名目金利・予想インフレ率・実質金利(10年)、長短金利差(2年10年)
米国 イールドカーブ、名目金利・予想インフレ率・実質金利(10年)、長短金利差(2年10年)

(%) 米国 イールドカーブ
(%) 米国 イールドカーブ

(bp) 米国 イールドカーブ(前日差)
(bp) 米国 イールドカーブ(前日差)

米国 名目金利・予想インフレ率・実質金利(10年)
米国 名目金利・予想インフレ率・実質金利(10年)

米国 長短金利差(2年10年)
米国 長短金利差(2年10年)

注目点

  • 日本の1月鉱工業生産は自動車生産の落ち込みによって大幅減産となったが、引き続き、IT関連財の在庫調整が進展し、同セクターの本格的な増産局面入りが近づいたことを示した。

  • 1月鉱工業生産は前月比▲7.5%と経産省予測値(▲10.5%)を上回ったものの、大幅な減産となった。これまでの鉱工業生産は、自動車生産が回復基調を維持する中、電子部品・デバイス工業や半導体製造装置の底打ちによって緩やかな増産基調にあったが、1月は自動車の大幅減産(▲17.8%)によって急低下した。もっとも、自動車生産の弱さは専ら供給側に起因しており、需要の弱さを反映したものではない。今回の工場稼働停止(品質管理・地震)に加え、過去数年の供給制約(半導体不足)によって潜在的な需要は豊富に存在しているため、落ち込みの大部分は時間が解決するとみられる。なお、本題から逸れるが、こうした特殊要因による景気減速は政府や日銀など景気の現状・先行きを説明する立場にある組織や人にとっては、先行きの回復を見込む根拠を無理なく説明できるため、ある意味で都合が良い(※内閣府で月例経済報告の作成に携わった筆者の主観)。したがって、政府の景気認識が大きく下方修正されることもなければ、日銀の金融政策(4月のマイナス金利解除)に与える影響も限定的だろう。

鉱工業生産指数、生産 自動車工業
鉱工業生産指数、生産 自動車工業

鉱工業生産指数
鉱工業生産指数

生産 自動車工業
生産 自動車工業

  • 2月初旬に実施された生産予測調査に基づけば、製造工業の生産計画は2月が前月比+4.8%、3月が+2.0%と反発の見込みが示された。経産省がバイアスを補正した2月の予測値は+0.8%と鈍い反発となっている。輸送機械工業の生産計画は2月に+6.6%、3月に+3.7%と2ヶ月連続の増産が見込まれているが、落ち込みを完全に取り戻すには至らず、復旧までになお時間を要すことが示された。なお需要側に目を向けると、北米市場でガソリン車の根強い人気が示されるなど明るい話題が多い。

  • 株式市場と関連の深い電子部品・デバイス工業の生産に目を向けると、1月の生産は前月比▲5.8%と大きく落ち込んだが、前年比では+4.4%へと伸び率が拡大し、生産が増加基調に転じたことを示した。ノートPCやスマホの需要が力強さを欠く中、世界半導体売上は前サイクルの頂点よりも低い水準に甘んじているが、本邦企業においては在庫調整が進展したことで製品需給は引き締まる方向にある(半導体製造装置も似た構図)。生産計画に目を向けると2月は+3.7%、3月は▲0.6%と緩やかながらも増産傾向にある。

IT関連財 生産、世界半導体売上高
IT関連財 生産、世界半導体売上高

IT関連財 生産
IT関連財 生産

世界半導体売上高
世界半導体売上高

  • 電子部品・デバイス工業は1月に出荷が+1.6%と2022年10月以来で初めてプラスを記録し、在庫は▲34.5%と一段と減少した。これによって出荷・在庫バランス(両者の前年比差分から算出)は+36.1%と5ヶ月連続でプラス圏推移し、3ヶ月平均でも+26.9%と完全に離陸した。在庫循環図の位置取りは、左下領域(在庫減・出荷減)から右下方向(在庫減・出荷増)に移行しており、今後、右下領域から右上領域(在庫増・出荷増)に進路をとると期待される。

電子部品・デバイス工業
電子部品・デバイス工業

電子部品・デバイス工業
電子部品・デバイス工業

電子部品・デバイス工業
電子部品・デバイス工業

  • 長期的に電子部品・デバイス工業の出荷・在庫バランスと日経平均株価は連動性を有してきた。株価指数において半導体を直接手掛ける企業の存在感は必ずしも大きくはないが、半導体製造装置や化学品など「広義半導体」で見ればその存在感は大きく、結果的に日本株全体のうねりを作り出すという構図が背景にある。今後ノートPC・スマホの販売低迷が長期化したり、データセンタ向け投資の抑制が続いたりして需給バランス好転が遅れる可能性はあるが、AI向け半導体の爆発的需要やコロナ初期局面にあたる2020年に購入されたPCの一部が買い替え期に差し掛かることで、新たな需要が発生すればIT関連財市況は持ち直し、日本株上昇のエンジンとなった半導体株の躍進が正当化されるだろう。

日経平均・出荷在庫バランス
日経平均・出荷在庫バランス

藤代 宏一


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

藤代 宏一

ふじしろ こういち

経済調査部 主席エコノミスト
担当: 金融市場全般

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