為替に(日銀以上に)重要な意味を持つ米CPI

藤代 宏一

要旨
  • 日経平均は先行き12ヶ月41,000程度で推移するだろう。
  • USD/JPYは先行き12ヶ月145程度で推移するだろう。
  • 日銀は、10月に追加利上げを実施するだろう。
  • FEDは9月に利下げを開始、FF金利は年末に5.25%(幅上限)への低下を見込む。
目次

金融市場

  • 前日の米国株はまちまち。S&P500は+0.2%、NASDAQは▲0.0%で引け。VIXは12.6へと低下。

  • 米金利はカーブ全般で金利上昇。予想インフレ率(10年BEI)は2.356%(+1.2bp)へと上昇。実質金利は2.147%(+3.0bp)へと上昇。長短金利差(2年10年)は▲37.1bpへとマイナス幅拡大。

  • 為替(G10通貨)はUSDが中位程度。USD/JPYは155後半へと上昇。コモディティはWTI原油が79.3㌦(+0.3㌦)へと上昇。銅は9904.5㌦(+0.5㌦)へと上昇。金は2340.3㌦(+18.0㌦)へと上昇。

米国 イールドカーブ
米国 イールドカーブ

米国 イールドカーブ(前日差)
米国 イールドカーブ(前日差)

米国 名目金利・予想インフレ率・実質金利(10年)
米国 名目金利・予想インフレ率・実質金利(10年)

米国 長短金利差(2年10年)
米国 長短金利差(2年10年)

米国 イールドカーブ、前日差、名目金利・予想インフレ率・実質金利、長短金利差
米国 イールドカーブ、前日差、名目金利・予想インフレ率・実質金利、長短金利差

経済指標

  • 4月ミシガン大学消費者信頼感指数は67.4へと急低下。予想インフレ率は1年先が+3.5%へと0.4%pt上昇、5-10年先が+3.1%へと0.1%pt上昇。インフレ懸念が消費者心理悪化に直結する形となった。もっとも、原油価格先物は上昇基調が一服しており、先行きはインフレ鈍化方向に寄与すると期待される。

ミシガン大学消費者信頼感指数
ミシガン大学消費者信頼感指数

予想インフレ率(ミシガン大学調査)
予想インフレ率(ミシガン大学調査)

ミシガン大学消費者信頼感指数、予想インフレ率(ミシガン大学調査)
ミシガン大学消費者信頼感指数、予想インフレ率(ミシガン大学調査)

注目点

  • 今週15日に米CPIが発表される。年初来、インフレ沈静化を望むFed、円安抑制を望む日銀を含む、広範な市場関係者の希望を打ち砕き続けてきた経緯もあり、今回発表の4月分がインフレ再燃を印象付ける結果となれば、市場関係者のインフレ認識は大きく修正を迫られることになろう。

  • 総合CPIは前月比+0.4%、前年比+3.4%と高い伸びが見込まれている(3月は前月比+0.4%、前年比+3.5%)。5月に入って原油価格先物は落ち着いているものの、4月までのガソリン価格は上昇したとみられ、これが総合CPIを押し上げる見込み。他方、コアCPIは前月比+0.3%へと減速が見込まれており、前年比でも+3.6%に伸びが鈍化するとの見方が中心的(3月は前月比+0.4%、前年比+3.8%)。市場予想通りの結果となれば、凸凹道を乗り越え、インフレが沈静化に向かっているとの見方に安心感をもたらすだろう。

米国 CPI
米国 CPI

  • 注目はコアCPIに集中するだろう。特に重要視されそうなのは、家賃を除くコアサービス、いわゆるスーパーコアの動向。遅効性の強い家賃を除いたコアサービスは、労働コスト由来のインフレ圧力を計測するのに適しているとされ、Fedが重視している。この尺度は、金融引き締めの効果が浸透し始めた2022年秋頃にピークアウトすると、その後は持続的な低下基調を辿り、インフレ沈静化の有力な証拠として存在感を示してきたが、直近3ヶ月は上向きの曲線を描き、インフレの粘着性を浮き彫りにする存在となっている。瞬間風速を示す3ヶ月前比年率は+8.2%、その3ヶ月平均でも+7.2%と著しい加速基調にある。ただし、3月の伸びは(過去の自動車修理費等を反映した)自動車保険料の上昇といった、ややテクニカルな要因を含んでおり、必ずしも直近のインフレ動向を映じる結果とはなっていない点に注意が必要だろう。実際、企業が認識するインフレ指標として、サービスPMIの販売価格とこのスーパーコアを同じグラフに描くと、両者の乖離が目立っている。長期的にみて両者の関係は必ずしも頑健ではないが、ここまでの乖離はCPIが何らかの要因で押し上げられている可能性を示唆する。そうだとすれば、スーパーコアCPIは低下基調に回帰しよう。

米国 CPI
米国 CPI

米国 スーパーコアサービス・PMI
米国 スーパーコアサービス・PMI

米国 CPI、米国 スーパーコアサービス・PMI
米国 CPI、米国 スーパーコアサービス・PMI

  • 筆者はインフレの主背景である平均時給の減速基調とその継続を裏付ける労働市場データ、すなわち減少傾向にある求人件数、低下基調にある自発的離職率、コロナ期前の水準まで低下している雇用判断DI(CB消費者調査)などを踏まえ、インフレ沈静化が経路を逸脱していないとみており、Fedが9月にも利下げに踏み切るとの予想を維持している。

  • なおFedの利下げについて、その累積幅は中立金利までの距離となる。Fedが認識する中立金利が2.5%~3.0%程度であるとするならば、2.5%~3.0%の利下げが想定幅となる。他方、日銀の利上げ幅の想定が1%を超えるとは俄かに考えにくい。為替を日米金利差で語るなら、やはり米国側の動向が圧倒的に重要な意味を持つ。

藤代 宏一


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藤代 宏一

ふじしろ こういち

経済調査部 主席エコノミスト
担当: 金融市場全般

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