“投資詐欺広告”
“投資詐欺広告”

一筋ではいかない半導体市況回復(7月PMI)

藤代 宏一

要旨
  • 日経平均は先行き12ヶ月34,000程度で推移するだろう。
  • USD/JPYは先行き12ヶ月138程度で推移するだろう。
  • 日銀は現在のYCCを10‐12月期に修正するだろう。
  • FEDはFF金利を5.50%(幅上限)へ引き上げるだろう。利下げは24年1-3月を見込む。
目次

金融市場

  • 前日の米国株はまちまち。S&P500は+0.0%、NASDAQは▲0.2%で引け。VIXは13.6へと低下。

  • 米金利は中期ゾーンを中心に金利低下。予想インフレ率(10年BEI)は2.349%(+3.2bp)へと上昇。実質金利は1.483%(▲5.8bp)へと低下。長短金利差(2年10年)は▲101.5bpへとマイナス幅拡大。

  • 為替(G10通貨)はUSDが堅調。USD/JPYは141後半へと上伸。コモディティはWTI原油が77.1㌦(+1.4㌦)へと上昇。銅は8452.0㌦(▲33.5㌦)へと低下。金は1966.6㌦(▲4.3㌦)へと低下。

注目点

  • 本日発表された日本の7月総合PMI速報値は52.1と6月から不変であった。サービス業PMIが53.9と小幅低下も高水準を維持した反面、製造業PMIが49.4へと0.3pt低下した。今回の結果はサービス消費の回復と企業の旺盛なDX投資によって内需の強さが続く反面、製造業はIT関連財の在庫調整に時間を要しなお生産活動が抑制されていることを示唆する。半導体不足の段階的解消に伴う自動車生産の回復は続くものの、それだけでは全体の生産活動を押し上げるには至らないという構図が浮かび上がる。

  • サービス業PMIは2023年入り後に鋭い回復を遂げた後、7月も強さが維持された。政府の旅行支援が概ね終了し、食料・エネルギーの負担も増す中ではあるが、賃金上昇が支えとなっていることもあり、消費者が過度な節約に動いている様子は見受けられない。この間、企業はDX投資等の支出に前向きな姿勢を維持。全体として内需の強さが失われている様子はない。そうした下でサービス業の「販売価格」は水準を切り上げており内生的な物価上昇圧力が高まっていることを示唆。

  • 製造業PMIのヘッドラインを構成する5つの項目は、生産(48.1→48.4)が上向いた反面、新規受注(49.6→48.3)は低下し、雇用(51.1→51.0)は概ね横ばいであった。その他では中間財投入を示す購買品在庫(52.1→51.3)が減少しヘッドライン下押しに寄与、サプライヤー納期(49.4→49.7※筆者が符号調整、数値低下は納期短縮を意味)は小幅に長期化しヘッドライン押し上げに寄与した。1~3ヶ月先の生産活動を見通す上で有用な新規受注・在庫バランスは改善が一服した。

  • 筆者は(日本の)鉱工業生産ベースの電子部品・デバイス工業の出荷・在庫バランス(出荷と在庫の前年比変化率の差分)が底打ち気配を強めていることを以って、日本企業を取り巻くIT関連財市況の回復が近づいている一つの証左としてきた。しかしながら、それ以外のデータに目を向けると依然として弱い指標も多く、市況回復が一筋縄ではいかないことを物語っている。期待外れのデータと言えば、IT関連財の生産集積地である台湾の輸出受注が再度落ち込んだことがある。2021年末をピークに低下基調を続けてきたこの指標は2023年3月の▲25.7%を付けた後、5月は▲17.6%までマイナス幅を縮小したものの、6月は再び▲24.9%に落ち込んだ。この指標はいわゆるシリコンサイクルの先行指標としてよく知られており、半導体関連銘柄が多く含まれる日本株を読む上では極めて重要な存在である。

  • 米国におけるソフトランディング期待の高まりや日本企業の資本効率改善など日本株を押し上げる要素が存在するのは事実であるが、この5月にみられたような半導体関連銘柄主導の日本株上昇は期待しにくく、むしろ短期的には反動も懸念される。

藤代 宏一


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。