“投資詐欺広告”
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コロナを理由に金融緩和を継続できるだろうか

藤代 宏一

要旨
  • 日経平均は先行き12ヶ月28,000程度で推移するだろう。
  • USD/JPYは先行き12ヶ月130程度で推移するだろう。
  • 日銀は現在のYCCを6-7月に修正するだろう。長期金利の変動許容幅拡大を見込む。
  • FEDはFF金利を5.25%(誘導幅上限)まで引き上げるだろう。
目次

金融市場

  • 前日の米国株は上昇。S&P500は+0.3%、NASDAQは+0.3%で引け。VIXは17.0へと低下。
  • 米金利はベア・フラット化。予想インフレ率(10年BEI)は2.311%(+0.7bp)へと上昇。実質金利は1.286%(+8.2bp)へと上昇。長短金利差(2年10年)は▲59.8bpへとマイナス幅拡大。
  • 為替(G10通貨)はUSDが全面高。USD/JPYは134半ばへと上昇。コモディティはWTI原油が80.8㌦(▲1.7㌦)へと低下。銅は8964.5㌦(▲59.0㌦)へと低下。金は1994.2㌦(▲8.0㌦)へと低下。

図表1
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図表2
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図表3
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図表4
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図表5
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経済指標

  • 4月NY連銀製造業景況は+10.8へと極めて大幅な改善を記録。もっとも、過去数ヶ月、季節調整の難しさもあってか指数は安定性を欠いており評価は難しい。正確な実勢把握にはフィラデルフィア連銀製造業景況指数など他の地区連銀調査および製造業PMIの公表を待つ必要がある。

  • 4月NAHB住宅市場指数は45へと僅かに改善。人手不足が足かせとなる反面、建設資材価格の落ち着き、住宅ローン金利の低下などを追い風に底打ち感を強めている。この指標の先行性に鑑みれば、住宅着工件数や新築住宅販売件数の持ち直しが期待される。

図表6
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図表7
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図表8
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注目点

  • 植田総裁にとって初となる4月28日の金融政策決定会合は金融政策の現状維持を見込む。総裁就任会見やその後の発言に鑑みると、黒田総裁就任時に流行したレジームチェンジという言葉が馴染むような鮮烈な開幕にはならなそうだ。4月10日の就任記者会見で植田総裁は「現状の経済・物価・金融情勢に鑑みると、現行のYCCを継続するということが適当」、「前体制からの大規模緩和を現状では継続する」、「デフレでない状況を作り出して、私どもにバトンタッチして頂いたということは、非常にありがたい」などと黒田路線に概ね肯定的であった。またG7で訪米中の12日には「物価高への対応が遅れるリスクよりも、時期尚早に金融緩和を終了して2%のインフレ目標が未達になるリスクに日銀はより注意を払うべき」との見解を示した。これら発言から判断すると、就任早々YCCの修正に踏み切るとは考えにくくなった。

  • もっとも、4月の金融政策が完全なる現状維持になるかといえばそれも疑問。YCCの修正は無くともフォワードガイダンスが変更され、それがYCC修正の布石と捉えられる可能性には注意したい。その点、筆者は引き続き新型コロナの感染症法上の分類変更が重要であると認識している。日銀は2020年4月より「当面、新型コロナウイルス感染症の影響を注視し、企業等の資金繰り支援と金融市場の安定維持に努めるとともに、必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じる。政策金利については、現在の長短金利の水準、または、それを下回る水準で推移することを想定している」というフォワードガイダンスを維持している。端的に言えば、緩和継続(YCC)の理由がコロナに紐づいており金融緩和を継続する一つの根拠になっている形だ。感染症法上の分類が変更され、また企業の資金繰りが安定しているにもかかわらず、日銀がいつまでもコロナを理由に緩和姿勢を維持する方針を掲げておくことは不自然だろう。日銀短観では貸出態度が厳格化し、資金繰りが窮屈になっている様子が映し出されているが、その度合いは限定的と言え、特例的な政策対応の必要性は薄れている。政府と日銀が政策態度の足並みを揃える必要があるという点において、新型コロナの感染症法上の分類変更は重要な論点と考えられる。

図表9
図表9

  • 仮にフォワードガイダンスから「コロナ」を削除するとしたら、「当面~(中略)~講じる」部分を削除するだけに留まるだろうか。一つの選択肢として考えられるのは、それに付随して「(政策金利について)または、それを下回る水準」を削除することであろう。利下げバイアスの削除それ自体に大きな意味はなくとも「布石」としての役割は十分に果たせる。フォワードガイダンスが修正されれば、6-7月の政策修正に一歩近づくのではないか。

藤代 宏一


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。