失業率が上がってもインフレ退治を続ける方針を示したFOMC 株安、逆イールドは大きく取り扱わない

藤代 宏一

要旨
  • 日経平均は先行き12ヶ月28,000程度で推移するだろう。
  • USD/JPYは先行き12ヶ月133程度で推移するだろう。
  • 日銀は、現在のYCCを少なくとも2023年4月までは維持するだろう。
  • FEDは、年内に125bpの追加利上げを実施。利下げは早くても23年後半以降だろう。
目次

金融市場

  • 前日の米国株は下落。NYダウは▲1.7%、S&P500は▲1.7%、NASDAQは▲1.8%で引け。VIXは28.0へと上昇。
  • 米金利カーブはツイスト・フラット化。債券市場の予想インフレ率(10年BEI)は2.369%(▲2.8bp)へと低下。実質金利は1.156%(▲0.5bp)へと低下。
  • 為替(G10)はUSDが全面高。USD/JPYは144近傍へと上昇。コモディティはWTI原油が82.9㌦(▲1.5㌦)へと低下。銅は7690.0㌦(▲68.0㌦)へと低下。金は1665.8㌦(+4.8㌦)へと上昇。

図表1
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図表2
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図表3
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図表4
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図表5
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注目点

  • 9月FOMCでは大方の予想通り75bpの利上げが決定され、FF金利(誘導目標上限値)は3.25%へと引き上げられた。ドットチャート(中央値)で示されたFF金利は2022年末が4.50%、2023年末が4.75%、2024年末が4.00%、今回新たに示された2025年末は3.00%とされた。中立金利は2.5%で不変。失業率は2022年が3.8%、2023-24年が4.4%、2025年が4.3%。PCEデフレータは2022年が+5.4%、2023年が+2.8%、2024年が+2.3%、2025年が+2.0%であった。6月の見通し対比ではFF金利、失業率が共に上方修正された形。2022-23年の予測値からは失業率が上昇しても、インフレが沈静化するまで金融引き締めを講じるとの意図が明確に読み取れる。

  • 金融市場参加者にとって驚きだったのは2022-23年末のFF金利水準。従前の織り込みよりも25~50bp高い数値が示されたことで、年内の利上げ停止観測はおろか11月FOMCにおける利上げ幅縮小観測も吹き飛んだ形。2022年末の利上げ経路は11月に75bp、12月に50bpが想定され、2023年は少なくとも1回分(25bp)の利上げが予想される。FF金利先物は、ドットチャートで示された見通しに吸い寄せられる格好で上昇し、2023年前半の数値が4.75%付近へと達した。

図表6
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  • Fedの政策方針を受けた金融市場の反応は株安、ドル高、金利はツイスト・フラット化であった。改めてイールドカーブの形状をみると2年金利が4%を超えて上昇したのに対して10年や30年は低下した。すなわち逆イールドは一段と深化しており、このことは債券市場参加者の景気後退懸念が強まったことを意味する。

  • 通常であれば、Fedは自らの金融引き締めが行き過ぎていないかを確認するために長短金利差を参照し、逆イールドが発生すれば、金融引き締めの度合いを緩めるなどしてオーバーキルを回避するよう努める。しかしながら、今次局面に至っては「失業率が上昇しようともインフレ沈静化まで金融引き締めを止めない」といった姿勢を露にしており、もはや確信犯的にオーバーキルを引き起こそうとしているようにすらみえる。逆イールドが深化すれば、Fedの政策態度が軟化するだろうという通常時の思考パターンは高インフレが終息しない限り、封印しておいた方が良さそうだ。Fedが株安に配慮するとも考えにくい。

図表7
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藤代 宏一


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