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ジョンソン首相の後任選びが始まる

~小さな兵隊さんが8人、投票したら6人になった~

田中 理

要旨
  • 英国ではジョンソン首相の後任を選ぶ保守党の党首選が始まり、初回投票で党内中道派が支持する3候補、党内右派が支持する3候補の計6候補に絞り込まれた。初回投票の上位2名は、中道派のスナク・モーダントの両候補。党員による決選投票の世論調査では、スナク候補は右派のトラス・バデノッホ・ブレーバーマンの何れの候補にも敗れ、モーダント候補は何れも勝利する。初回投票でリードしたスナク候補が首相就任に近づいたとは必ずしも言えない。

辞任を表明した英国のジョンソン首相の後継党首選の初回投票が13日に行われ、スナク元財務相(88票)が首位、それをモーダント国際関係相(67票)、トラス外相(50票)、バデノッホ元レベリングアップ担当相(40票)、トゥゲンハート外務委員会委員長(37票)、ブレーバーマン法務長官(32票)が追う。初回投票前に立候補を取りやめたジャビド元保険相、シャップス交通相、キシュティ下院議員、立候補を見送ったパテル内相に加えて、初回投票で30票に届かなかったザハウィ財務相(25票)、ハント元保険相(18票)が脱落し、6人に絞り込まれた。次の投票は14日、その後は18日に行われ、各投票で最下位の候補が脱落していく。議会会期が終了する21日までに保守党所属の下院議員による投票で候補者を2人に絞り込み、約16万人の党員による郵送とオンラインの投票を議会の夏季休会中に行い、9月5日までに最終的な後継党首を選出する。

(図表1)英保守党党首選の結果
(図表1)英保守党党首選の結果

残る6人のうち、スナク候補、モーダント候補、トゥゲンハート候補の3人がジョンソン首相から距離を置く党内中道派が主に支持し、トラス候補、バデノッホ候補、ブレーバーマン候補がジョンソン首相に近い党内右派の強硬離脱派が主に支持する。減税を巡っては、スナク候補が財政再建後の減税を主張、モーダント候補が的を絞った減税を主張するのに対し、残りの4候補は何れも減税実施を強調する。今後の投票を占ううえでは、初回投票で脱落したザハウィ・ハント両候補を支持した議員が、2回目の投票でどの候補の支持に回るか、党内右派の候補がどのように一本化されていくかにも注目が集まる。右派のザハウィ氏は後継党首選からの脱落後にどの候補を支持するかを明言していないが、中道派のハント氏はスナク候補を支持することを表明している。脱落したザハウィ候補の支持票も合わせると、初回投票時点での党内右派票は合計で140票ある。党内中道票がスナク候補とモーダント候補で割れる場合、一本化した党内右派候補が決選投票(党員投票)に臨む2候補に残る可能性が出てくる。

初回投票前の12日に発表された保守党員を対象にした決選投票の世論調査では、党内右派のトラス・バデノッホ・ブレーバーマン候補と対峙した場合、中道派の決選投票進出者がスナク候補やトゥゲンハート候補の場合には何れも右派候補に敗北し、モーダント候補の場合には何れも勝利する(図表2)。こうした世論調査の結果は、今後の党首選や議員投票後の投票キャンペーンで変わりうるが、初回投票でリードしたスナク候補が首相就任に近づいたとは必ずしも言えない。

(図表2)英保守党党首選・党員による決選投票の世論調査
(図表2)英保守党党首選・党員による決選投票の世論調査

以上

田中 理


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田中 理

たなか おさむ

経済調査部 首席エコノミスト(グローバルヘッド)
担当: 海外総括・欧州経済

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