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- BOEは利下げを再開
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- 英BOEは12月のMPCで5対4の賛成多数で政策金利を3.75%に引き下げた。前回MPC後に公表された政府の予算案が緊縮的な内容となり、高止まりが続いてきたサービス物価や賃金上昇率もピークアウトしている。今後も漸進的な利下げ路線が継続される可能性が高いが、追加緩和の判断はより際どいものになるとしている。今回、利下げ支持に転向したベイリー総裁は、追加緩和の余地はあるものの、政策金利が中立水準に近づくにつれ、利下げ余地が限定的になるとの認識を示した。今後も中立金利とみられる3%前後に向けて、四半期に1回程度のペースで利下げを続けると予想するが、声明文の文言や利下げに転向したベイリー総裁の発言に鑑みれば、追加緩和の判断はより際どいものになりそうだ。
英国のイングランド銀行(BOE)は12月の金融政策委員会(MPC)で、賛成5・反対4の賛成多数で政策金利を4.0%から3.75%に引き下げた。前回11月のMPCで利下げに投票したブリーデン副総裁、ラムスデン副総裁、ディングラ外部委員、テイラー外部委員の4名が引き続き利下げを支持したことに加えて、前回据え置きに投票したベイリー総裁が利下げ支持に回った。ロンバルデリ副総裁、ピル外部委員(チーフ・エコノミスト)、マン外部委員、グリーン外部委員の4名は前回同様に据え置きを支持した。
11月の金融政策レポート(旧物価レポート)では、国内の賃金や物価の基調的な圧力が緩和傾向にあり、物価の高止まりと需要の減退による中期的なインフレに対するリスクがより均衡化していることや、インフレ鈍化の進行が継続すれば、政策金利は漸進的な低下経路を辿る可能性があるとしていた。その後、11月26日に英国政府が発表した秋季予算案は、将来の様々な増税措置を組み合わせる形で財政再建を進める内容となった。BOEスタッフの分析によれば、これらの財政運営は短期的に景気を僅かに押し上げ、物価を押し下げるが、中長期的には景気を押し下げ、物価をやや押し上げる。
消費者物価の上昇率は引き続き3%を上回っているが、前回会合時から上昇率が鈍化している。引き締め的な金融政策、経済成長の鈍化、労働市場の余剰資源(スラック)の拡大を反映し、賃金やサービス物価の上昇率もピークアウト傾向にあり、インフレ率は2%の目標に向かって更に鈍化することが示唆される。このように、最近のデータは概ね好ましいが、物価目標の達成には依然として上下両方のリスクが存在する。インフレリスクに対する見方は政策委員の間で割れている。一部の委員は、目標を上回るインフレ率の長期化を踏まえると、物価が高止まりするリスクが残っており、先行指標も高水準の賃金上昇率が続く可能性を示唆すると指摘する。別の委員は、需要の下振れや労働市場が急速に緩和する可能性があり、インフレ率が高止まりするリスクはそれほど大きくなく、今後一段と縮小すると考える。また、金融政策の引き締め度合いは、政策金利が段階的に引き下げられてきたことで低下した。中立金利の水準をどの程度の精度で特定できるかを巡って、政策委員の間で見解が割れている。
利下げを支持した5名の政策委員のうち、ベイリー総裁、ブリーデン副総裁、ラムスデン副総裁の3名は、インフレが上振れするリスクが後退しているが、今後の政策判断に当たっては、労働市場の動向や賃金上昇率に関する新たな証拠を評価するとしている。利下げを支持した残りの2名(ディングラ、テイラー両外部委員)は、経済活動とインフレの下振れリスクをより重視し、消費低迷と失業率の上昇がインフレ率を抑制するのに十分であると考えている。
据え置きを支持した4名の政策委員(ロンバルデリ副総裁、ピル外部委員、マン外部委員、グリーン外部委員)は、賃金や価格設定の持続的な変化など、構造的な要因に基づくインフレの持続性が高まっている点を重視する。これらの委員は、最近の物価上昇率の鈍化を歓迎するが、サービス物価、賃金、インフレ期待の高止まりを警戒し、インフレリスクを緩和するには、より長期の金融引き締めが必要であると考える。
前回の政策委員会以降、インフレの持続性に対するリスクはやや弱まったものの、需要減退による中期的なインフレへのリスクは依然として存在する。金融政策の更なる緩和の度合いは、インフレ見通しの推移に依存する。2024年8月以降、政策金利は150bp引き下げられ、政策の引き締め度合いは低下している。現時点で入手可能なデータに基づけば、今後も政策金利の漸進的な引き下げ路線を継続する可能性が高い。しかし、追加緩和の判断はより際どいものになるとしている。
緊縮的な予算案の発表を待ち、インフレ率や賃金上昇率の鈍化を確認したことで、BOEは今回のMPCで利下げを再開し、先行きも追加緩和が必要であることを示唆しているが、利下げペースについては慎重さを滲ませる。今回、利下げ支持に転向したベイリー総裁は、追加的な金融緩和の余地はあるものの、政策金利の経路を事前に正確に予測することはできず、政策金利が中立水準に近づくにつれ、その余地が限定的になるとの認識を示した。筆者は今後も中立金利とみられる3%前後に向けて、四半期に1回程度のペースで利下げを続けると予想するが、声明文の文言や利下げに転向したベイリー総裁の発言に鑑みれば、追加緩和の判断はより際どいものになりそうだ。
田中 理
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