デジタル国家ウクライナ
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イタリアで最大政党が分裂

~政局リスクも金利上昇の一因に~

田中 理

要旨
  • イタリアでは議会最大勢力の五つ星運動がウクライナ支援を巡って分裂。ディマイオ外相が旗揚げした新党はドラギ政権を支持する方針を示唆しているが、コンテ前首相が率いる五つ星運動内には来年の選挙を睨んで政権から距離を置くべきとの声も浮上している。総選挙後は右派ポピュリスト政権が誕生する可能性が高く、財政運営などを巡ってEUとの対立再燃が不安視される。ECBの利上げ開始が近づくなか、イタリアの長期金利に上昇圧力が及んでいる。緊急理事会で南欧金利の上昇抑制策の検討が支持されたが、政治不安からも金利に上昇圧力が及びやすい。

イタリアでは議会最大勢力で、前ECB総裁のドラギ首相が率いるテクノクラート政権を支える左派ポピュリスト政党「五つ星運動」が21日に分裂した。同党内ではウクライナへの武器供与などを巡って、政権の積極方針を支持する前党首のディマイオ外相を中心としたグループと、武器供与が紛争長期化につながるとして反対する現党首のコンテ前首相を中心としたグループとの間で意見相違が続いてきた。51名の下院議員と11名の上院議員が同党を離党し、ディマイオ外相を党首とする新党「未来に向けてともに(IpF)」を結党した(図表1)。

(図表1)イタリアの議会構成
(図表1)イタリアの議会構成

IpFはドラギ政権を今後も支えることを明言しているが、五つ星運動内には来年に予定される総選挙を前に政権への協力を取り止めるべきとの声も浮上している。党分裂後の世論調査はまだ出ていないが、2018年の総選挙で30%以上の支持を獲得した五つ星運動の支持率は、最近では10%台前半で低迷している(図表2)。ドラギ首相の挙国一致内閣は、政権奪取の機会を窺う右派ポピュリスト政党「イタリアの同胞」と一部の少数政党を除く大多数の政党が支持している。仮に五つ星運動が政権支持を取り止めた場合も、上下両院で議会の過半数を割り込むことはない。ただ、同じく支持が低迷する右派ポピュリスト政党「同盟」も総選挙を前に政権から距離を置く可能性が高く、今後の政権運営は困難さを増すとみられる。

(図表2)イタリア議会選挙の世論調査と現在の議会構成
(図表2)イタリア議会選挙の世論調査と現在の議会構成

五つ星運動と同盟がともに政権支持を取り止めると、上下両院とも政権支持が過半数を割り込むことになる。議会の解散権を持つマッタレッラ大統領は、過去の政権崩壊時も連立組み換えやテクノクラート政権発足を優先し、早期の解散・総選挙を回避してきた。五つ星運動・同盟ともに政権から距離を置くことで低迷する支持率の浮上につなげたいが、このまま選挙に臨めば議席を失うことが確実な情勢にある。イタリアでは有権者が不在となる夏場の選挙の前例はなく、秋には予算審議も予定されている。多少の任期前解散があったとしても、総選挙が行われるのは来年春先が有力視される。

現在の世論調査では、主要政党で唯一政権を支持していないイタリアの同胞が20%台前半でリードする。中道左派の民主党がこれを追うが、五つ星運動の支持低迷で左派勢力が議会の過半数を確保できるかは微妙なところだ(図表3)。次の総選挙後は、イタリアの同胞、同盟、ベルルスコーニ元首相が率いる中道右派政党「フォルツァ・イタリア」などの右派勢力が議会の過半数を確保し、右派ポピュリストが率いる連立政権が誕生する可能性が高い。ドラギ政権誕生後、イタリアは束の間の政治安定を謳歌してきたが、EUに懐疑的なポピュリスト政権が再び誕生し、財政運営などを巡って、EUとの対立が再燃する恐れがある。

(図表3)イタリア議会選挙の世論調査(会派別の合計)
(図表3)イタリア議会選挙の世論調査(会派別の合計)

ECBの利上げ開始が7月に近づくなか、イタリアの国債利回りに上昇圧力が及んでおり、10年債利回りは一時4%を突破し、ギリシャを逆転している(図表4)。ECBは15日に緊急理事会を開き、ファンダメンタルズを反映しないユーロ導入国間の金利格差(市場分断化)に対処するため、①満期を迎えたパンデミック緊急資産買い入れプログラム(PEPP)の再投資時に南欧国債を重点的に買い入れることや、②新たな市場分断化の抑止策の設計を加速させることを発表した。緊急理事会の開催後、イタリアの10年債利回りは3%台半ばまでやや低下したが、検討中の新たな市場分断化抑止策の内容次第では、再び金利に上昇圧力が高まる可能性もある。不安定さを増す政局動向も、イタリアの長期金利の上昇要因となる。

(図表4)ユーロ圏周辺国の10年物国債利回り
(図表4)ユーロ圏周辺国の10年物国債利回り

以上

田中 理

田中 理

たなか おさむ

経済調査部 主席エコノミスト
担当: 欧州・米国経済

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