ロシアのデフォルトと欧州内の不協和音

~デフォルトへのカウントダウン~

田中 理

要旨
  • 米国政府が米国の中継銀行に対してロシアのドル建て国債の支払い禁止を命じたことを受け、ロシア政府はドルでの支払いを断念し、支払い相当額のルーブルを特別口座に保管する方針。猶予期間が終わる30日以内にドルでの支払いが行われない場合や、ルーブルでの支払いが執行された段階で、デフォルトと認定される可能性が高い。

  • 欧米がロシア向けの追加制裁を打ち出すなか、ハンガリー政府がEUの方針に反し、ロシア産のガス輸出代金をルーブルで支払うことを示唆。欧州委員会が法の支配の原則に違反するとし、同国向けのEU予算の停止手続きを開始したことに対抗した可能性がある。今後のロシアへの追加制裁の決定を巡っては、ハンガリーとEUの間の対立が影を落とす恐れがある。

6日付けレポート「ロシアのデフォルトリスク再浮上」では、米国政府がロシア向けの金融制裁の運営を強化し、ロシアのドル建て国債の返済を中継する米国の銀行に対して、当該銀行のドル口座にロシアが保有する資金を用いて支払いを執行することを禁止したと記した。こうした米国政府の方針を受け、ロシア政府は4日に返済期限を迎えた5億5240万ドルの元本返済と8400万ドルの利払いをドルで行うことを断念した模様。ロイター通信は、非友好国の国債保有者への支払い相当額は、ロシアの決済保管期間にある特別口座にルーブルで保管され、ロシア政府が外貨建て口座へのアクセスを回復した時点で、ドルへの交換が認められるとする声明を発表したと伝えている。

ロシアの外貨建て国債の一部はルーブルでの支払いが認められるが、当該国債はルーブルでの支払いが認められていないため、返済条件の変更に該当し、デフォルトと認定される可能性が高い。ロシア政府は先月、経済制裁でドル資金へのアクセスが出来ない場合、非友好国の外貨建て国債保有者に対して、ルーブルで支払う可能性を示唆していた。当該国債には30日間の返済猶予期間が設定されている。30日以内にドルで支払いが行われない場合や、ルーブルでの支払いが執行された段階で、デフォルトと認定される可能性がある。

ロシア軍によるウクライナの民間人殺害への批判が集まるなか、欧米はロシア向けの追加制裁を相次いで打ち出している。ロシアへのエネルギー依存脱却に舵を切ったEUは、石炭の禁輸に踏み込む方針を固め、米国はこれまで制裁対象から除外されていたロシア最大手行の資産を凍結し、米国企業との取引を禁止する。ウクライナのゼレンスキー大統領は、追加制裁を歓迎しながらも、ロシア産原油の禁輸など更に踏み込んだ対応を呼び掛けている。短期間での代替調達が難しい天然ガスの禁輸については、欧州諸国の間で慎重意見が多い。

こうしたなか、対ロシア関係を巡ってEU内の足並みの乱れも露呈している。3日の国民議会選挙でオルバン首相が続投を決めたハンガリー政府の関係者は6日、ロシア産ガス代金の支払いをルーブルで行う用意があることを表明した。ロシアは先月末、非友好国へのガス輸出代金をルーブルで支払うこと求める大統領令を発し、1日から新たな支払い手続きの運営が開始されている。EUはこうした要求に応じない意向を示唆していた。近年、法の支配や差別禁止などEUの基本価値を巡ってEUとの対立を続けるハンガリーのオルバン政権は、ロシアのプーチン政権とも親密な関係を築いてきた。ハンガリーはロシア産のガスや原油への依存度が高い。昨年、ロシアとの間で新たなガス契約を結び、他の欧州諸国と比べて低い価格でガスを調達している。オルバン首相は対ロシア制裁強化に反対の意向を表明している。欧州委員会のフォン・デア・ライエン委員長は5日、法の支配の原則に違反する加盟国へのEU予算の配分を停止する新たな手続きをハンガリーに対して発動する方針を表明したばかり。EU予算の配分停止を阻止するためのハンガリー側の揺さぶりとも受け取れる。今後のロシアへの追加制裁決定を巡っては、ハンガリーとEUの間の対立が影を落とす恐れもある。

以上

田中 理

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