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4月ユーロ圏・英国PMI

~インフレ沈静化が景況改善を後押し~

田中 理

要旨
  • 23日に発表された4月のユーロ圏の総合PMIの速報値は51.4と、10ヶ月振りに好不況の分岐点である50を上回った前月(速報値49.9→確報値50.3に上方修正)から改善が加速した。総合PMIを構成する2項目の内訳は、製造業の産出指数(製造業PMIを構成する5項目の1つ)が前月:47.1→今月:47.3と悪化モメンタムに歯止めが掛かってきている段階だが、サービス業活動指数(サービス業PMI)が51.5→52.9と改善を主導した。
  • 製造業PMIの内訳は、前述の産出指数(47.1→47.3)、雇用(47.1→48.0)、中間財在庫(44.3→44.5)の悪化モメンタムが鈍化した一方、新規受注(46.0→43.8)と入荷遅延(55.4→56.2)の逆数が下押しに働いた。サービス業では、前述の活動指数(51.5→52.9)に加えて、新規受注(51.4→52.1)や雇用(52.3→53.2)も改善が加速。前月に急進したサービス業の活動見通し(63.4→61.2)は高水準にあるが、改善モメンタムが鈍化した。世界景気の底入れの兆しが今のところ製造業の目立った業況改善に結びついていない一方、物価沈静化と賃上げによる実質所得の改善を受け、内需の底堅さが増しており、サービス業の業況改善につながっている。
  • 国別には、ドイツで製造業PMI(41.9→42.2)の低迷が続いた一方、サービス業PMI(50.1→53.3)が大幅に加速し、総合PMI(47.7→50.5)が10ヶ月振りに50超を回復。フランスでは、製造業PMI(46.2→44.9)の悪化モメンタムが加速した一方、サービス業PMI(48.3→50.5)が11ヶ月振りに50超を回復し、総合PMI(48.3→49.9)も50回復が目前に迫る。ここから逆算すると、その他ユーロ圏(イタリアやスペインなど)は製造業PMIが前月から悪化モメンタムが加速、サービス業PMIが前月から改善モメンタムが鈍化した可能性が示唆される。
  • 物価関連では、ユーロ圏の製造業の投入物価(46.2→48.7)、産出物価(47.5→47.9)、サービス業の投入物価(61.5→61.8)、産出物価(55.1→55.7)が揃って前月から上昇。中東情勢緊迫化に伴う資源価格の再上昇を反映したものとみられるが、同時にサービス業の高止まりが目立ち、賃上げ率の粘着性の高さを裏付ける内容。

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田中 理


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田中 理

たなか おさむ

経済調査部 首席エコノミスト(グローバルヘッド)
担当: 海外総括・欧州経済

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