ECBの隠れテーパリング

~PEPPの買い入れペースが半減~

田中 理

要旨

ECBは10日の理事会で向こう3ヶ月のPEPPの買い入れペースを維持する方針を決定。決定後で初の週次買い入れ額は前週から半減し、3月に買い入れ強化を決定して以降の平均を大きく下回った。今回は償還が多かったことも影響した模様だが、夏場に向けて債券発行額が少なくなることもあり、今後も資産買い入れペースが伸び悩む可能性がある。

ECBは10日の理事会で、向こう3ヶ月のパンデミック緊急資産買い入れプログラム(PEPP)のネット買い入れ額を年初の数ヵ月と比べて大幅に高いペースを維持する方針を決定した(詳しくは11日付けレポート「ECBはPEPPの買い入れ方針を維持」を参照されたい)。決定後で初となる週次のPEPPの購入実績が14日に発表された。11日までの1週間のネット買い入れ額は108億ユーロにとどまり、200億ユーロを超えていた過去数週間と比べて半減し、3月の理事会で買い入れ強化を決定してからの平均(180億ユーロ)を大きく下回った(図表1)。週次の買い入れ額は振れが大きいうえ、今週は償還が多かったこともネット買い入れの減少につながった可能性がある。

図表1
図表1

ただ、夏場は例年債券発行額が少なく、それに合わせてECBの資産購入ペースも落ちる傾向がある(図表2)。大幅な買い入れを維持する方針とは裏腹に、PEPP購入額は今後も伸び悩む可能性がある。次にPEPPの買い入れ方針を点検する9月の理事会に向けて、PEPPの買い入れペースの縮小(テーパリング)を事前に織り込む展開が予想される。

図表2
図表2

来年3月末にはPEPPが延長後の終了期限を迎えるが、PEPP終了の時期や方法を巡ってECB関係者の間で意見相違も目立ち始めている。ラガルド総裁が14日に発表されたインタビュー記事で、「PEPPの終了時期について協議するのは時期尚早である」との見解を表明したのに対し、理事会メンバーであるホルツマン・オーストリア中銀総裁は同日の別のインタビューで、「新型コロナウイルスの流行が再燃しない限り、PEPPは予定通り来年3月末に終了する」と発言した。

なお、今後の政策正常化の議論の土台となる戦略レビューの終了時期についてラガルド総裁は、「夏の終わりまでに結果を公表できるか」との質問に対して、「そのように希望する。だが、結果公表が夏の終わりになるか秋になるかよりも、検証の質や意見を一致させることの方が重要だ」と回答した。

以上

田中 理

田中 理

たなか おさむ

経済調査部 主席エコノミスト
担当: 欧州・米国経済

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