1.ETF買入れは年2兆円にも満たない 2. 期待できる米雇用統計

藤代 宏一

  • 日経平均は先行き12ヶ月30,000程度で推移するだろう。
  • USD/JPYは先行き12ヶ月105程度で推移するだろう。
  • 日銀は、現在のYCCを長期にわたって維持するだろう。
  • FEDは、2022年に資産購入の減額を開始するだろう。

金融市場

  • 前日の米国株はまちまち。NYダウは(▲0.7%)、S&P500は(▲0.1%)、NASDAQは(+0.8%)で引け。延長が期待されていたSLR(補完的レバレッジ比率)の緩和措置は延長されず、ややサプライズ。金利と株価全体に大きな波乱はなかったが、金融株は軟調だった。他方、2月中旬以降売られてきたグロース株は買い戻しが優勢。VIXは21.0へと上昇。社債市場はIG債(投資適格)、HY債(投機的格付)が共に堅調。
  • 米金利カーブは5~10年ゾーンが金利上昇。SLRの緩和措置終了が中期ゾーンの金利上昇に繋がった。予想インフレ率(10年BEI)は2.308%(+1.2bp)へと上昇。債券市場の実質金利は▲0.587%(+0.5bp)へと上昇。
米国 イールドカーブ
米国 イールドカーブ
米国 イールドカーブ
米国 イールドカーブ
米国 イールドカーブ
米国 イールドカーブ
  • 為替(G10通貨)はUSDがやや強め。USD/JPYは109近傍で一進一退も、EUR/USDは1.19前半へと低下。コモディティはWTI原油が61.4㌦(+1.4㌦)へと上昇し、銅も9057.0㌦(+1.5㌦)へと上昇。金は1741.7㌦(+9.2㌦)へと上昇。安全資産「金」と景気の強さを反映する「銅」の相対価格は低下。ビットコインは週末を通じてやや軟調。
主要通貨の変動率 WTI原油・銅
主要通貨の変動率 WTI原油・銅
主要通貨の変動率
主要通貨の変動率
WTI原油・銅
WTI原油・銅

注目ポイント

  • 先週の日銀金融政策決定会合ではETF買い入れ目標の原則である「6兆円」が削除され、同時に日経平均連動型ETFが買入れ対象から外された。事前のリーク報道で前者の6兆円削除は織り込み済みであったとみられるが、後者についてはやや意外感があったようだ。象徴的なことに19日はTOPIXが小幅高、日経平均は大幅安で引けた。
  • 今回の比率変更以前から、TOPIX連動型ETFは85%程度を占めていた。したがって日経平均の“原則”買入れ額は9000億円程度(6兆円×0.15)に過ぎなかったのだが、ETF買い入れの効果が相対的に強くでる浮動株比率の低い銘柄は、需給悪化懸念から売りが集中した。浮動株比率の低い一部の銘柄が日経平均全体を押し上げる構図は若干変化しそうだ。
  • もっとも、ETFの新規買い入れが細ることで「フロー効果」が弱まるとはいえ、ETFの売却に踏み切らない以上、日銀が実質的な大株主として君臨し続けることに変わりはない。そうである以上、「ストック効果」は残存するため、需給悪化を懸念した売り圧力が長く続く可能性は低いだろう。もっとも、日経平均連動型ETFをTOPIX連動型ETFに振り替える動きが今後でてくれば話は変わってくるため、その点は注意しておきたい。
  • なお、直近1年のETF買い入れペースは既に6兆円を明確に下回っており、買い入れ基準を厳しく変更した(とみられる)2月以降でみれば年間の買い入れペースは2兆円すら大幅に下回っている。新たな買入れ基準とみられるTOPIX前場下落率1%超が発生する日は、2015-20年の平均で26営業日程度であるから、そこに最近の1回(1日)あたり買い入れ額である500億円を当てはめると1.3兆円にしかならない。設備・人材ETF3000億円を加えても、1.6兆円であるから日銀は既に6兆円を放棄していたことになる。
日銀ETF偕買い入れ額
日銀ETF偕買い入れ額
日銀ETF偕買い入れ額
日銀ETF偕買い入れ額
相場下落率1.0%
相場下落率1.0%
  • 金融市場のインパクトという点では、上記よりもここ最近の米指標が重要だろう。速報性に優れたデータは3月の米経済回復を強く示唆している。筆者が注目するレストラン予約状況は、これまでコロナの打撃が集中していた飲食店が3月に入ってから急速に息を吹き返しつつある様子が示されている。最新値である3月20日の予約件数は2019年対比で2割減のレベルまで戻しており、この数値は飲食店等接客業(レジャー・ホスピタリティ、20年1月時点で全雇用者に占めるウェイトは約11%)の雇用回復を意味していると考えられる。労働集約的な飲食店等接客業は、客足の回復が雇用増加に結びつき易いことを踏まえると、3・4月の雇用統計はかなり明るい結果になりそうだ(雇用統計調査週は12日を含む週)。
レストラン予約状況 米国業種雇用者数
レストラン予約状況 米国業種雇用者数
レストラン予約状況
レストラン予約状況
米国業種雇用者数
米国業種雇用者数

藤代 宏一


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。