株高不況 株高不況

変わりそうで変わらない日銀 焦点は来年の人事案

藤代 宏一

要旨
  • 日経平均株価は先行き12ヶ月57,000円程度で推移するだろう
  • USD/JPYは先行き12ヶ月155円程度で推移するだろう
  • 日銀は利上げを続け、政策金利は26年7月に1.0%、27年7月に1.5%超となろう
  • FEDはFF金利を26年6月に3.5%まで引き下げた後、様子見に転じるだろう
目次

金融市場

  • 前営業日の米国市場は、S&P500が+0.8%、NASDAQが+1.3%で引け。VIXは17.9へと低下。

  • 米金利はカーブ全般で金利低下。予想インフレ率(10年BEI)は2.290%(+2.2bp)へと上昇。

実質金利は1.761%(±0.0bp)へと上昇。長短金利差(2年10年)は+57.9bpへとプラス幅拡大。

  • 為替(G10通貨)はJPYが最弱。USD/JPYは156前半で推移。WTI原油は65.4㌦(▲0.2㌦)へ低下。銅は13322.5㌦(+156.0㌦)へ上昇。金は5206.4㌦(+50.6㌦)へ上昇。

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注目点・経済指標等

  • 2月25日に政府は日銀人事案を提示。日銀審議委員について、今年3月に任期満了を迎える野口氏の後任に浅田統一郎氏(中央大学名誉教授)、同じく6月に任期満了を迎える中川氏の後任に佐藤綾野氏(青山学院大学教授)を充てる案であった。

  • 金融市場参加者は、過去の論文や講演等における発言から両名ともいわゆる「リフレ派」と認識した。当該人事案を受けて、日銀の利上げ観測は小幅ながら後退。OIS金利から逆算した4月(27-28日)の利上げ確率は60%(24日時点:67%)、6月までの織り込みは90%(同98%)と小幅に低下。7月まででは114%(同110%)と大きな変化はなかったが、年末時点の利上げ織り込み回数は2.31回から2.05回へと低下した。他方、ターミナルレートの代理指標である2年先1年金利は1.68%と引き続き1.75%を見込む水準となっている。株価は上昇、為替は円安で反応した。

  • ハト派で知られる野口委員はともかく、中立的な認識を示す中川委員の後任に佐藤氏を充てる人事案は、政策委員会の中心的見解をハト派方向に傾けたいとの思惑が明白である。もっとも、今後、利上げの本格的な検討に際して、仮にこの両名が反対の意向を示したとしても、政策委員会の総論に与える影響は軽微だろう。正副総裁とタカ派で知られる高田委員、田村委員、そして物価の上振れリスクに言及してきた小枝委員は従来通りの姿勢を維持するとみられる。

  • とはいえ、長い目で考えると今回の人事案は微妙な影響をもたらす可能性がある。というのも、タカ派の高田委員と田村委員がともに2027年7月に任期満了を迎えるからである。先の衆院選における圧勝から判断して、次期審議員の任命時に高市政権が存続している蓋然性が高いことを踏まえると、今回のような政策的志向を内包した人事案が提示されることも考えられる。直近2回の利上げが大きな混乱に繋がらなかったのは、この高田委員と田村委員によるタカ派的な情報発信によって利上げの地均しが進んでいたことが一因であり、こうした点においてタカ派の審議委員が存在することの意義は大きい。高田委員と田村委員の後任にハト派が送り込まれるなら、市場参加者との対話は難しくなるのではないか。もちろん、2028年3・4月に控える日銀正副総裁人事を占う上でも、来年の人選は重要になってくる。

  • 今回の人事案発表のタイミングを狙ってなのか、植田総裁が読売新聞の単独インタビューに応じた。取材は2月24日に実施され、26日未明より報道された。次回の利上げの判断にあたり「前回12月やそれ以前に実施した利上げの影響」を点検するとの文脈で「金融機関が企業や個人に対してお金を貸し出す際の姿勢が厳しくなっていないか」が重要であるとした。

  • ここで日銀短観の調査項目である「金融機関の貸出態度判断」と「資金繰り判断」に目を向けると、それぞれに大きな変化は認められない。日銀がマイナス金利を解除して以降、借入金利水準判断DIは有意に上昇しているものの、実体経済の拡大が続くもと、景気見通しも悪化していないことから、銀行はさほど融資基準を厳格化しておらず、企業の資金繰りにも大きな変化はみられていない。日本企業は長らく貯蓄主体であり、借入依存度は高くないことから、利上げが企業金融に与える影響が弱まっていることを示すデータである(日銀の資金循環統計)。実質無借金企業が4割弱を占めると推定されていることもあり、教科書にあるような「利上げをすると、企業の借入コストが増加し、設備投資が抑制され・・」という波及経路による引き締め効果は弱まっていると推察される。4月に発表される短観(3月調査)では、従来以上に企業金融の項目を注視する必要があろう。悪化が確認されないとそれ自体は利上げを促す要因になる。

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藤代 宏一


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