株高不況 株高不況

高市政権だけで説明できない円安・株高 韓国も株高・通貨安

藤代 宏一

要旨
  • 日経平均株価は先行き12ヶ月57,000円程度で推移するだろう
  • USD/JPYは先行き12ヶ月155円程度で推移するだろう
  • 日銀は利上げを続け、政策金利は26年7月に1.0%、27年7月に1.5%超となろう
  • FEDはFF金利を26年6月に3.5%まで引き下げた後、様子見に転じるだろう
目次

金融市場

  • 前営業日の米国市場はS&P500が+0.6%、NASDAQが+0.8%で引け。VIXは19.6へと低下。

  • 米金利はカーブ全般で金利上昇。予想インフレ率(10年BEI)は2.293%(+1.7bp)へと上昇。

実質金利は1.788%(+0.6bp)へと上昇。長短金利差(2年10年)は+61.7bpへとプラス幅縮小。

  • 為替(G10通貨)はUSDが全面高。USD/JPYは154後半で推移。WTI原油は65.2㌦(+2.9㌦)へ上昇。銅は12911.5㌦(+292.0㌦)へ上昇。金は4986.5㌦(+103.6㌦)へ上昇。

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注目点・経済指標

  • 高市首相が自民党総裁選に勝利して以降の株高は高市トレード、高市相場などと言われている。そうした流れは、先の衆院選における与党系の圧勝によって補強された。AI・半導体、防衛・造船、国土強靭化などを含む17の戦略分野に関する政策支援が実現するとの見通しが強まったほか、消費税減税も意識されている。「責任ある積極財政」が株高を促したことに疑いの余地はない。2025年10月の日経平均株価は月間で16.6%という驚異的な上昇を記録し、2026年入り後も14%程度の上昇となっている(2月18日時点)。これほどの株価上昇に気味の悪さを覚える投資家は少なくないだろう。

  • この間、円安圧力も高まった。10月4日の自民党総裁選前は147円前後で推移していたドル円は、高市政権が日銀に利上げを熟慮するよう根回しするとの思惑もあり、一時は160円を視界に捉える場面があった。1月23日に日米当局がレートチェックを行ったとされることから、一方的な円安には至っていないものの、円安が加速する場面では「高市政権の積極財政が円の通貨価値を下落させた」との指摘は多かった。

  • インフレ下で財政支出を拡大させる政府と、利上げをしにくい環境に置かれた日銀。この組み合わせは、インフレ率の拡大と名目金利の低下・上昇抑制という構図のもとで、実質金利がマイナス圏で推移することを想起させる。緩和的な金融環境が維持されるもとで、株高と円安が進むのは、一定の理論的な裏付けがある。

  • もっとも、この間の金融市場の変動を高市トレードで全て説明するのは無理がある。為替を巡っては、Fedが2027年にも利上げに向かうとの思惑が生じつつあり、これが為替市場でドル高・円安圧力に変換された面があろう。事実、2月18日に発表された1月FOMC議事要旨には、数人の参加者の意見として「インフレが目標水準を上回る場合、FF金利の目標範囲の引き上げが適切となる可能性を踏まえ、委員会の将来の金利決定に関して両面的な記述をすることに賛同することもできた」との記述があった。

  • ではここで日本と似た産業構造を持ち、地政学的な重要性でも共通点を有する韓国の株価、為替に目を向けると、株価は日本以上に上昇し、通貨ウォンも同じく大幅な下落となっている。2025年10月におけるKOSPIの月間上昇率は19.9%であり、これは日経平均株価の上昇率を凌駕する。また為替についても、ウォンは2022年以降の最安値水準に接近する場面があり、この点でも日本と共通する。こうして考えると日本の株高や円安は、必ずしも日本固有の要因であるとは言えない。

  • もちろん日本と韓国の株価について、それぞれ固有の要因が偶然同じ時期に発生した可能性はある。たとえば、韓国ではDRAM価格の急騰を受けてメモリ大手の収益が改善するとの期待が膨らむなど、半導体に関連した好材料があった。また、いわゆるKorea Discountの是正に向けてコーポレートガバナンスの機能改善が進捗するとの期待も膨らんだ。このように韓国に固有の材料があったことは確かであるが、ここで筆者が強調したいのは現在の株高・通貨安は日本に限定した事象ではないという事実である。金融市場の変動を何もかも「高市政権」で説明すると、経済政策の効果・リスクをそれぞれ誇張してしまう可能性がある。

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藤代 宏一


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