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AIが解き明かす、効果的コミュニケーションの秘訣とは?

~AIとボッチ動画反省会をやってみた!~

柏村 祐

目次

1.ビジネスにおけるコミュニケーション能力の重要性

現代のビジネスにおいて、コミュニケーション能力は成功を左右する重要な要素となっている。人間関係構築、業務効率向上、組織の生産性と革新性向上に不可欠であり、あらゆる局面でその重要性が増している。

しかし、効果的なコミュニケーション能力の獲得は容易ではなく、自己認識や感情的知性(EQ)を含む複合的なスキルセットの開発が必要である。コミュニケーションが苦手な人も多く、その原因は性格や経験など多岐にわたる。苦手意識は自己表現や人間関係構築の困難、会議での緊張など様々な問題を引き起こす。ただし、コミュニケーション能力は訓練で向上させることが可能である。自身の強みと弱みを理解し、継続的な自己改善に取り組むことで、より洗練されたコミュニケーターに成長できる。

近年、AI技術の飛躍的進歩により、人間のコミュニケーションを多角的かつ客観的に分析することが可能となった。最先端のAIシステムは、音声のトーンや抑揚、微細な表情の変化、言葉の選択や文脈理解まで、人間のコミュニケーションの複雑な側面を精緻に分析できる。これにより、個人のコミュニケーションパターンにおける潜在的な改善点を特定し、パーソナライズされた成長戦略を提案することが可能になっている。

本レポートでは、AIによる先進的な分析手法を活用し、コミュニケーション能力の革新的な向上方法を探求する。具体的には、筆者が情報番組のコメンテーターとして出演した際の映像をケーススタディとして取り上げ、最新のAI技術による多面的な解析を実施する。この分析では、言語的要素だけでなく、非言語的コミュニケーション、感情表現、視聴者との相互作用など、総合的な評価を行う。

2.AIによる動画解析の実態

本節では、筆者が情報番組のコメンテーターとして出演した際の映像をAIに分析させ、そのコミュニケーションパターンを解析していく。

この番組では、甲子園で話題となった「甲子園カレーラーメン」を試食し、その感想を述べるシーンが含まれている。AIによる客観的な視点から、筆者のパフォーマンスの強みと改善点を明らかにすることで、効果的なコミュニケーション戦略の構築を目指す。まず、AIに約8分間の番組映像を読み込ませ、複数の質問を投げかけることで、多角的な分析を行った。具体的には、以下の3点について質問を行っている。1点目は視聴者の関心が最も高まった瞬間とその要因、2点目は男性コメンテーター(筆者)の声のトーンや話すスピードの変化が議論の流れに与えた影響、3点目はキャスターとのやり取りにおける改善点と次回のセッションへの活用方法である。

まず、「視聴者の関心が最も高まった瞬間とその要因」についてAIに分析を依頼した。その結果、視聴者の関心が最も高まったのは、筆者が甲子園カレーラーメンを一口食べて「超うまいっす」とコメントした03:54の時点であることが判明した。AIは、この瞬間に筆者が用いた効果的なコミュニケーション手法として、以下の点を指摘した。簡潔な言葉遣いとして「超うまいっす」という短く率直な表現を用いたこと、「っす」というカジュアルな表現を使用して親しみやすさを演出したこと、「超」という強調表現でラーメンの美味しさを最大限に表現したこと、そして目を閉じて味わう表情を見せることで視覚的に美味しさを伝えたことである。これらの要素が複合的に作用し、視聴者の関心を最大限に高めたと分析された(図表1)。

図表1 AIが分析する視聴者の関心を引きつけた効果的な表現技法
図表1 AIが分析する視聴者の関心を引きつけた効果的な表現技法

次に、「男性コメンテーターの声のトーンや話すスピードの変化が議論の流れに与えた影響」について、AIの分析結果を確認した。AIによれば、筆者の声のトーンや話すスピードは、全体を通して比較的穏やかでゆっくりとしたペースであり、落ち着いた雰囲気を作り出していた。しかし、カレーラーメンを試食する場面では、明確な変化が観察された。「超うまいっす」という発言は、それまでの穏やかなトーンとは対照的に、高揚感と興奮が感じられる、やや高めのトーンで発せられ、話すスピードも速くなっていた。

また、麺を口に運んだ後、「うーん」と低いトーンで唸り声をあげる場面では、言葉にならないほどの美味しさを表現しており、視聴者の期待感を高める効果があったとAIは分析している。さらに、「量が多いっす」「ちょうどいいです」といった発言は、それまでのゆっくりとしたペースとは異なり、早口で話されており、ラーメンのボリュームに対する驚きと満足感をより強く印象づけていたと指摘された。これらの声のトーンと話すスピードの変化が、視聴者の興味を引きつけ、番組をより魅力的なものにすることに貢献していたとAIは結論づけている(図表2)。

図表2 AIが捉えた声のトーンと話速の変化による感情伝達の仕組み
図表2 AIが捉えた声のトーンと話速の変化による感情伝達の仕組み

最後に、「キャスターとのやり取りにおける改善点と次回のセッションへの活用方法」についてAIの分析を求めた。AIは、筆者が落ち着いたトーンと丁寧な言葉遣いで好印象を与えていたことを評価しつつ、いくつかの改善点を指摘した。まず、受動的な反応として、キャスターの質問に対し、「はい」「そうですか」「そうですね」といった短い相槌が多い印象があり、自身の意見や感想をより積極的に伝えることで、会話がより活発になる可能性があると分析された。

次に、話題への掘り下げ不足が指摘された。たとえば、甲子園球場に行ったことがないという話題に対し、「そうですか」で終わってしまっている点が挙げられ、なぜ行ったことがないのか、球場に対してどのようなイメージをもっているのかなど、もう少し掘り下げて話すことで、視聴者の興味関心をさらに引き付けられる可能性があるとAIは提案している。

さらに、ユーモア不足も指摘され、時折ユーモアを交えることで、親しみやすさが増し、視聴者を飽きさせない効果も期待できるとの分析結果が得られた。これらの改善点を踏まえ、AIは次回のセッションへの活用方法として、積極的な意見表明、具体的なエピソードの活用、適度なユーモアの導入を提案している(図表3)。

図表3 AIが分析したキャスターとのやり取りにおける改善点と活用方法
図表3 AIが分析したキャスターとのやり取りにおける改善点と活用方法

これらのAIによる動画解析の実態を踏まえた筆者の見解としては、AIがコミュニケーションの微細な側面まで精緻に分析できることに驚きを覚えると同時に、その客観的な視点が、自己改善のための貴重な機会を提供してくれることを実感した。特に、自身では気づきにくい非言語的コミュニケーションの特徴や、視聴者の関心を引き付ける要因などが明確化されたことは、今後のコミュニケーション戦略を練る上で非常に有益であると考える。

一方で、AIの分析結果を鵜呑みにするのではなく、人間ならではの感性や経験と組み合わせることで、より効果的なコミュニケーション能力の向上が図れるのではないだろうか。今後は、このAIによる分析結果を踏まえつつ、実践を通じてさらなる改善を重ねていくことが重要であろう。また、このような詳細な分析が可能になったことで、コミュニケーションスキルの向上に対するアプローチが大きく変わる可能性があることも指摘しておきたい。

AIによる客観的で多角的な分析を活用することで、より効果的かつ効率的なスキル向上が実現できるかもしれない。しかし同時に、AIの分析に頼りすぎることなく、人間本来の自然さや個性を失わないよう注意を払う必要があるだろう。今回の経験を通じて、AI技術と人間の感性のバランスを取りながら、より高度なコミュニケーション能力を追求していくことの重要性を強く認識した。

3.AIと人間の力を合わせて、話し上手になろう

最後に、AIの分析結果を活用することで、ビジネスでの話し方を効果的に改善する方法を紹介する。この手法は、コミュニケーションが苦手な人にも、得意な人にも有益である。まずは、AIと人間の力を合わせた話し方上達プロセスを図で確認する(図表4)。

図表4 AIと人間の力を合わせた話し方上達プロセス
図表4 AIと人間の力を合わせた話し方上達プロセス

上記の図は、「1.AIによる分析」、「2.自己理解と改善」、「3.実践」の3つのステップからなる循環的なプロセスを示している。このプロセスを繰り返すことで、継続的な話し方の改善が可能となる。

コミュニケーションに苦手意識がある人にとって、AIの分析は自分の話し方の特徴を客観的に知る良い機会となる。これにより、コミュニケーションの場面での緊張が和らぎ、苦手意識が改善される可能性がある。たとえば、本レポートの事例では「超うまいっす」という短い一言が視聴者の心をつかんだことが明らかとなった。こういった分析結果を参考に、自分の言葉選びや話し方のクセを意識的に活用することで、より相手の心に響く話し方ができるようになる。

AIが指摘した改善点を、日々の仕事の中で少しずつ実践していくことも重要である。本事例では、「もっと自分の意見を言う」「話題を深掘りする」「時々ユーモアを交える」といった点が挙げられた。たとえば、会議で「はい」「そうですね」で終わらせず、「なぜそう思うのか」や「こんな例もありますね」と一歩踏み込んだ発言を心がけることが効果的である。また、緊張しがちなプレゼンの場で、時折軽いジョークを入れてみるのも良い方法である。こうした小さな工夫を重ねることで、徐々に話し方が上達していく。

定期的にAIに自分の話し方を分析してもらい、上達具合を確認することも推奨される。たとえば、重要な商談での自分の話し方を録音し、AIに分析してもらうことで、緊張状態での話し方の特徴や改善点が明確になる。

このように、図に示したサイクルを繰り返すことで、着実にコミュニケーション力を磨くことができる。ただし、AIの分析結果を鵜呑みにし過ぎず、自分らしさを失わないことも大切である。たとえば、無理にユーモアを入れようとして不自然になるよりも、誠実さが伝わる話し方のほうが効果的な場面もある。

もちろんコミュニケーションが得意な人にとっても、AIの分析は有益である。自分の強みを可視化して把握し、より戦略的にコミュニケーションスキルを向上させることが可能となる。

最終的な目標は、AIの客観的な分析と、自分の経験や直感を上手く組み合わせて、その場に合った最適な話し方を選べるようになることである。このように、AIと自分の力を合わせてコミュニケーション力を磨けば、商談の成功率アップなど、仕事の様々な場面で大きな成果を上げることができるだろう。

柏村 祐


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。

柏村 祐

かしわむら たすく

ライフデザイン研究部 主席研究員 テクノロジーリサーチャー
専⾨分野: AI、テクノロジー、DX、イノベーション

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