子どもの金融リテラシーを高めるメディア活用

~社会経済や国際情勢に関する多様な情報に接する機会・話題を~

北村 安樹子

目次

1.社会経済や国際情勢のニュース、見聞きする機会がない高校生も

2022年4月からの成年年齢の引き下げにともない、中高生はそれまでの世代よりも早く「大人」になる年齢を迎えることになった。この年代の子どもは、成長とともに行動範囲や社会関係を広げ、自身の判断でお金を使う機会も増える。近年では学校教育を通じて金融教育を行う動きも広がるが、お金に関する適切な知識や判断力(金融リテラシー)を身につけるには、家庭での教育も重要だろう。

金融広報中央委員会が高校1年生を対象に行ったアンケート調査によると、新聞・テレビ・ニュースサイトなどで社会・政治・経済・金融・国際に関するニュースをみたり聞いたりすることが「ほぼ毎日」あると答えた人が3割弱であった一方、「みたり聞いたりしない」と答えた人は約半数を占めてこれを大きく上回った(図表1)。社会の動きや国際情勢に関心をもって多様な情報媒体に自らアクセスしたり、間接的な形でそれらの情報を見聞きする機会が毎日のようにある子どもがいる一方で、家庭以外の場を含めこれらの情報に接する機会がない子どももそれ以上に多くなっている。

図表 1
図表 1

2.保護者との会話、社会経済や国際情勢に関しては少なめ

一方、この調査では、「自分のつきたい仕事や保護者の仕事のこと」「将来の夢や進路のこと」「家計や生活設計のこと」「社会・政治・経済・金融・国際情勢等のこと」などに関する保護者との会話頻度についてもたずねている。その結果をみると、これらのテーマについて保護者と週に1回以上の頻度で話す高校生が1割強~3割弱を占めた一方、「ほとんど話をしない」もしくは「一度もしたことがない」人も4割弱から6割超を占めた(図表2)。

「社会・政治・経済・金融・国際情勢のこと」に関しては、「一度もしたことがない」高校生が約1割を占め、「家計や生活設計のこと」とともに「ほとんど話をしない」人の割合が他の項目を大きく上回っている。年頃の子どもは、保護者と話すこと自体に積極的でなく、成長とともに自身の予定で忙しくなる。また、親が忙しく子どもと直接話す機会が限られる家庭も多いだろう。そのためこれらのテーマについても話す機会が少ない家庭が圧倒的に多くなっていると考えられる(注1)。

図表 2
図表 2

3.社会経済や国際情勢をめぐる多様な情報に接する機会の重要性

調査結果によると、これらのテーマに関わるニュースをみたり聞いたりする機会が多い高校生は、金融リテラシー(お金に関する知識や判断力)が高い傾向にある(図表3)。新聞・テレビ・ニュースサイト等を通じて社会経済や国際情勢にかかわる多様な情報に接する機会があることは、お金に関する知識や情報を増やし、各種制度等への理解を深めることにつながるのだろう。

しかしながら、既述のように、社会経済や国際情勢のニュースを「みたり聞いたりしない」と答えた高校生が回答者の約半数を占め、それらのテーマについて話す機会がない家庭も多い。近年では、スマートフォンをはじめ、家族の各々が専用の情報通信機器を個々人で利用する場面も多く、この年代の若者が、新聞・テレビ・ニュースサイトなどを通じて提供されるニュースや、社会経済や国際情勢にかかわる情報に直接・間接的な形で接する機会が少なくなっているのではないだろうか。

どのようなメディアを通じてどのような情報に接するのが適切か、という問題は残るものの、子どもがお金に関する知識や判断力を身につけるには、家庭でのメディアへの接し方を工夫し、多様な情報にふれる機会を増やすことも重要だろう。ライフスタイルの制約等で家族間のコミュニケーションの量を増やすのが難しい場合にも、これらのテーマを意識することは、子どもが自身のお金の使い方や、社会におけるお金の使われ方を含め、社会への関心を広げることにつながると考えられる。

図表 3
図表 3

【注釈】

  1. 高校生の家族とのコミュニケーションの実態に関しては、(公財)消費者教育支援センターと(公財)生命保険文化センターが全国の高校生を対象に行った「【第3回】2021年度 高校生の消費生活と生活設計に関するアンケート調査」にも同様の調査項目がある(「高校生の消費生活と生活設計に関するアンケート調査報告書」2022年3月)。この調査では、①学校での出来事、②高校卒業後の進路、③将来の夢、④悩みごと(進路以外)、⑤お小遣いの使い方、⑥今の家計状況、⑦親の仕事内容、⑧万が一のこと(病気・ケガ・事故等)に備えるための手段(社会保険や民間保険)について家族と話す頻度をたずねている(選択肢は「よく話す」「ときどき話す」「あまり話さない」「まったく話さない」)。調査結果によれば、②高校卒業後の進路や③将来の夢、⑦親の仕事内容に比べ、⑥今の家計状況に関しては「よく話す」「ときどき話す」と答えた割合が低い。家計の状況は、他の話題に比べ家庭で話題にしにくいテーマといえる。

【参考文献】

  1. 金融広報中央委員会「金融広報中央委員会実施のアンケート調査結果について」、2024年1月
  2. 金融広報中央委員会『「15歳のお金とくらしに関する知識・行動調査 2023年」の概要』、2024年1月
  3. 第一生命経済研究所『人生100年時代の「幸せ戦略」-全国2万人調査からみえる多様なライフデザイン-ライフデザイン白書2020』東洋経済新報社、2019年11月
  4. 第一生命経済研究所『「幸せ」視点のライフデザイン-2万人アンケートが描く生き方・暮らし方の羅針盤-ライフデザイン白書2022』東洋経済新報社、2021年10月
  5. 第一生命経済研究所『ウェルビーイングを実現するライフデザイン-データ+事例が導く最強の幸せ戦略-ライフデザイン白書2024』東洋経済新報社、2023年11月

【関連レポート】

  1. 北村安樹子「キャッシュレス併用時代のお金教育の重要性~子どもにも収支管理、計画的消費や資産形成のスキルが必要~」第一生命経済研究所2024年4月

北村 安樹子


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北村 安樹子

きたむら あきこ

ライフデザイン研究部 副主任研究員
専⾨分野: 家族、ライフコース

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