ライフデザイン白書2024 ライフデザイン白書2024

ひとりで暮らす時に覚えておきたいこと(1)

~単独世帯の身近な人との関係~

稲垣 円

目次

1.単独世帯の増加

核家族化、未婚率の上昇により、今や日本の家族形態で最も多いのが「単独世帯」(世帯人員が1人の世帯)である。2020年の国勢調査(2021年11月公表)で一般世帯数を世帯人員別にみると、1人の世帯が最も多く、世帯人員が多くなるほど世帯数は少ない(図表1)。さらに2015年(緑色)以降では、2人以下の世帯が増加し続けているのに対し、3人以上の世帯は減少している。

資料1
資料1

家族類型別でみると、「単独世帯」は一般世帯の38.1%,「夫婦と子供から成る世帯」は25.1%、「夫婦のみの世帯」は 20.1%、「ひとり親と子供から成る世帯」は9.0%(男親と子供、女親と子供の合計)となっている(図表2)。2015 年と比べると、直近の2020年は、一般世帯に占める単独世帯の割合は 34.6%から 38.1%に上昇し、親(夫婦、ひとり親)と子どものいる世帯の合計よりも大きい結果となっていることがわかる。さらに単独世帯を年齢別にみると、2005年以降、男女とも65歳以上が一貫して上昇しており、今後単独世帯は、中高年齢層が主流になると推測されている(図表省略)。

資料2
資料2

2.身近な人との関係からみる単独世帯(一人暮らし)の実態

では、単独世帯(以下「一人暮らし」と表記)には、どのような特徴があるのだろうか。図表3は、当研究所が実施した調査より(注1)、同居家族別に4つの属性(「家族や親戚」「職場や学校」「職場学校以外の友人」「地域の人」)との関係が「良好だと思う」かをたずねた結果である。これを見ると、一人暮らし(緑色)の人は、配偶者や子どもがいる人よりも、身近な人との関係を良好だと思っている割合が低い傾向にある。身近で安定的な関係を築くと想定される家族や親族に対しても、他の世帯と比較して5ポイント以上低く、相対的に周りと良好な関係をもてていない様子がうかがえる。

資料3
資料3

さらに、一人暮らしの人を性・年齢別にみると、男性(図表4上)では、家族関係以外は年齢が上がるとともに低下していることがわかる。対して女性(図表4下)は、全体的に男性よりも高い割合を示し、40代を底に50代、60代と年齢が上がるとV字回復している。男性に比べて女性の場合、年齢を重ねると共に、家族のみならず、友人や地域など多様な属性との関係を構築し、肯定的に捉える傾向にあるようだ。

資料4
資料4

3.一人暮らしの高齢化がはらむリスクを知る

本研究所の調査結果では、一人暮らしの男性は、年齢を重ねるほど、どの属性とも良好な関係を構築できていない可能性が示唆された。

一人暮らしをする場合、若年層は会社や学校、同僚や友人など所属する場所があり、そこに滞在する中で他者とかかわりをもつ時間があることが多い。年齢的に体力があり、行動範囲を広くもつことができるだろう。一方で、年を重ね退職などの大きなライフイベントを迎えるころには、生活が仕事中心であった場合、自分の居場所は一気に減少する。「つながりを確保する」という点については、いくつになってもインターネットを通じて趣味嗜好が合う人とつながり、かかわり続けることはできる。しかし、年齢を重ね、身体機能が衰えて物理的な移動が困難になれば、心身の健康にも影響を及ぼすことにもなる。認知症を発症しても気づかれずに進行し、それが近所とのトラブルに発展したり、最悪体調不良に気づかれないまま孤独死したりするなど、大きな問題へと発展するおそれもある。

当然ながら、一人や少数で行動することを自ら好んで選ぶ人もいる。それは人それぞれの価値観であり否定されるべきではないが、そうした自身にとって心地よい環境を維持していくためにも「一人」でいることがはらむリスクについて理解し、リスクマネジメントを考えることは有益だろう。

次稿では、一人暮らしの人へのソーシャルサポート(悩みを聞いてくれたり、アドバイスをしてくれたり、何らかの手助けをしてくれたりといった周囲の人からの有形無形の援助)の実態を確認しながら、他者とのかかわりにどのように向き合っていけば良いか考察する。

【注釈】

  1. 本稿では、当研究所が実施してきた生活定点調査の一部を活用している。調査概要は以下の通り。調査名:「第12回ライフデザインに関する調査」、実施日:2023年3月3日~5日、調査対象:全国の20~69歳の男女個人10,000人、調査方法:インターネット調査。

【参考文献】

  • 総務省統計局「令和2年国勢調査 人口等基本集計結果」2021年11月
  • 第一生命経済研究所『ウェルビーイングを実現するライフデザイン(ライフデザイン白書2024)』東洋経済新報社、2023年10月

稲垣 円


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。