模索する、地域活動の行方

稲垣 円

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わが国で新型コロナウイルス感染症の患者が確認されてから、1年が経過した。 私たちの暮らしは「新しい生活様式」に則った方式に大きく転換し、感染を回避する生活スタイルを構築しつつある。

一方、そうした中においても再始動が難航していることの一つに、地域活動*1が挙げられる。地域で住民が主導となり行われるさまざまな活動は、現在でもなお中止・縮小を余儀なくされており、感染状況を気にしながら手さぐりで進めている状況であろう。少人数で行われるサークル活動から、地域の清掃や防犯・防災活動、そしてお祭りや祭礼など活動規模もさまざまにある中で、どの程度感染回避に気を配ればよいのか、そのための準備はどうするか、地域だけで担えることなのか等・・・悩みは尽きない。

本稿では、第一生命経済研究所が実施した「第3回新型コロナウイルスによる生活と意識の変化に関する調査」*2の結果から、地域活動の実施状況および地域活動に対する人々の意識について考察する。

地域活動の実施状況

図表1は、感染拡大後の地域活動の実施状況についてたずねた結果(2020年9月時点)である。

交通安全、防犯・防災、福祉生活改善などの①「地域の問題解決に関する活動」、道路や公園などのゴミ拾いや清掃、公共施設の営業などの②「地域の環境や施設の維持・管理に関する活動」について、現在何らか活動している(「一時期は中止・縮小していたが、現在は通常通り実施している」「一時期は中止・縮小していたが、現在は頻度を減らして実施している」「中止や縮小や延期はせず、昨年と同程度に実施している」「一時期は中止・縮小していたが、現在は頻度を増やして実施している」合計)と回答した人は5割を超えており、中でも公民館・コミュニティセンター、図書館、体育館などの公共施設は、約7割が営業していると回答している。

それに対して、研修・講習会、サークル、会合や地域イベントなどの③「地域住民が集まって親睦を深める集合型の活動」は、半数以上の人が調査実施時点で、中止または延期の発表がされていると回答した。特に、お祭り、体育祭、文化祭などの地域イベントは、7割以上が中止または延期と回答している(74.3%)。

地域住民が集まるサークルなどの活動や、お祭りのような不特定多数が集まるイベントは人と接触する機会も多くなり、また他の活動と比べても趣味や娯楽といったいわゆる「不要不急の活動」の色が濃い。感染回避の観点からすると、実施へ二の足を踏む要素が多いことから、自粛が続いている様子がうかがえる。

図表1 感染拡大による地域活動の実態
図表1 感染拡大による地域活動の実態

「今後実施してほしい」層が、半数以上

では、地域活動に対する人びとの「今後の意向」はどうか。

図表2は、図表1で回答した地域活動について、今後の実施に対する意向をたずねた結果である。全ての活動について、半数以上の人は地域活動の今後の実施に意欲的であることがわかった(「感染対策をした上で、これまでと同じ頻度で実施してほしい」「感染対策をした上で、頻度を減らして実施してほしい」合計)。しかし、ここでも③「地域住民が集まって親睦を深める集合型の活動」については、「終息するまでは実施するべきではない」と回答した実施に消極的な層が約3割、そして「今後は実施しなくてもよい」と回答した実施に否定的な層が1割超で存在し、今後の意向についても、「地域問題解決に関する活動」や「地域の環境や施設の維持・管理に関する活動」の傾向とは異なる様相を示した。

図表2 今後の地域活動の実施に対する意向
図表2 今後の地域活動の実施に対する意向

「中止または延期」群は、実施に消極的、否定的な傾向

さらに今後の地域活動の実施に対する意向(図表2)の消極的または否定的な回答をした層に着目し、図表1において地域活動が「何らか実施」されていると回答した群と「中止または延期」していると回答した群に分け、それぞれの今後の実施に対する意向を示したのが図表3である。

結果からみえてきたのは、どの活動においても、図表1で地域活動が「何らか実施」されていると回答した群は、今後の実施に意欲的であるが、「中止または延期」していると回答した群は、今後の実施意向に消極的、否定的な回答の割合が高い傾向にあった、ということである。「中止または延期」群では、どの活動においても「感染が終息するまでは、実施すべきではない(緑色)」(消極的)と回答した人は約3割、「感染の終息に関わらず、今後は実施しなくてもよい(水色)」(否定的)と回答した人は1割超存在し、「何らか実施」群との差は、消極的な回答では10ポイント以上、否定的な回答では5ポイント以上であった。

一例をあげると、「公民館・コミュニティセンター、図書館、体育館などの公共施設の営業」は、全体でみると7割以上が今後の実施に意欲的であるが(図表2)、「何らか実施」群と「中止または延期」群でみると(図表3)、「中止または延期」群の方が、消極的または否定的と回答した人の割合が大きく、回答差はそれぞれ20.8、11.0ポイントである。地域活動が実施されている場合と中止または延期している場合とでは、人びとの今後の地域活動の実施に対する意識にも違いがみられた。

図表3 今後の地域活動の実施に対する意向
図表3 今後の地域活動の実施に対する意向

本調査結果だけでは、地域活動が中止または延期されていることと、今後の実施に対する意向とに因果関係があるとまで言うことはできない。しかし、地域活動の中止や延期が長期化することは、活動再開に向けた人びとの意欲を低下させ、再開する見通しをさらに曇らせてしまう可能性があることは考えられる。

模索する、地域活動の行方

地域活動を再開するにあたっては、従来の運営方法に加え「感染防止」のための準備が追加される。特に不特定多数の人が多く集まる地域イベントほどその準備に時間や人、費用を要することになるだろう。感染を回避しながら、地域住民が集い、環境を整備したり、共に何かを学んだり楽しんだりすることで親睦を深めるような活動をどのように実現することができるのか、さまざまな知恵を絞る必要がある。当然ながら、これらを地域住民の自助だけに任せるには限界がある。自治体によっては地域活動をする際の注意事項などを記したガイドラインを発信しているが、併せて行政と組織、組織間、そして個人間で活動事例やノウハウを共有したり、情報交換するなど、ネットワークを広げていく必要がある。

本調査結果は、地域活動の参加の有無は問わずにたずねたものであるが、実に半数以上の人が居住地域の地域活動の実態を把握していた。この結果からも、地域活動は今もなお、多くの地域で行われ、根付いているものであることがわかる。新型コロナウイルス感染拡大の勢いが衰えない中、感染しないための対策を講じることは最重要課題である。しかし地域活動が「いつ再開するかわからない」状態が長く続くことは、人びとの意欲の低減を招き、活動再開への道のりをさらに困難にするだけかもしれない。

感染拡大以前と同じ暮らしはできないことは(少なくとも当分の間は)周知の事実であるが、こうした中でも、新しい生活様式に合った地域活動を再構築し、徐々にでも機会を創出していく必要があるのではないか。

【注釈】

*1 本稿では「地域活動」を、居住する市区町村で行われる活動(町内会や自治会、地域の清掃美化にかかわる活動、防犯・防災活動、地域の学校での活動、公民館やコミュニティセンター等での活動、地域住民向けの研修やサークル、レクリエーションのイベント等)とする。

*2 調査の方法や結果の概要は、当研究所発行の以下のニュースリリースを参照されたい。

「第3回 新型コロナウイルスによる生活と意識の変化に関する調査(地域社会編)」

稲垣 円

稲垣 円

いながき みつ

ライフデザイン研究部 主任研究員
専⾨分野: コミュニティ、住民自治、ソーシャルキャピタル、地域医療

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