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AIプログラマーの衝撃

~書き言葉でプログラミングを自動生成してくれる現代の魔術~

柏村 祐

目次

1.AIプログラマーとは

近年の急速なデジタル化に伴い、プログラミング能力に注目が集まっている。

プログラミング能力を持つ人材は、データの集計や分析、ホームページ作成やアプリケーション構築などで有用とされている。プログラミングとは、コンピューターを動かすために創られたプログラミング言語によりプログラムを書くことを意味する。プログラミングに必要なプログラミング言語は多種多様で、それぞれに文法がある。プログラミング言語を習得するには、一定の学習が必要であることに加え、実践経験も求められる。昨今、このプログラムを書く仕事をAIに代替させる仕組みとして、AIプログラマーというアプリケーションの開発が進んでいる。

AIプログラマーは、データの集計や分析、ホームページ作成やアプリケーション構築などコンピューターに実現してもらいたいアイデアを文章として入力すれば、その内容に基づいて、AIが自動でプログラムを生成、実行してくれる仕組みを意味する。AIプログラマーを支える技術には、「書き言葉」からプログラミング言語により書かれたテキストファイルへの変換を行うための、高度なAIが利用されている。様々なAIプログラマーが台頭している中、Codex(コーデックス)と呼ばれるAIプログラマーは、この世界で最も知名度が高いものの1つである。Codex(コーデックス)が提供する自然言語AIのアプリケーションは、「コードダヴィンチ」、「コードクッシュマン」に分類され、それぞれが得意分野を持っている(図表1)。

本稿では、これらの高度なAIを活用するAIプログラマーの実力を概観し、その可能性を考察する。

図表1
図表1

2.AIプログラマーの実態

AIプログラマーは、自分にプログラミング言語の知識がなくても、コンピューターに行わせたい動作を、文章としてAIプログラマーの入力フォームに記載すれば、瞬時に人間のプログラマーが書いたようなプログラミングコード(図表2右側赤枠のようなプログラミング言語によって書かれた指示文)をウェブ上に自動生成し、プログラムを実行してくれる。

AIプログラマーがプログラムを生成し実行するための工程は、「文章による指示」、「プログラムの自動生成・実行」に分類される。最初の「文章による指示」工程では、自分がコンピューターに実行させたい内容を文章で入力すれば良い。その後、AIプログラマーが、その指示内容からプログラムを自動生成、実行することにより、その結果が表示される。

AIプログラマーのサービスを提供するウェブサイトでは、このような「文章による指示」に基づいたAIプログラマーの事例として、宇宙ゲーム作成、ウェブサイト作成、数学テストの回答などが挙げられている。例えば、AIプログラマーを使用して創られる宇宙ゲームの内容は、画面上に映し出された宇宙船を操作し、ランダムに動く小惑星から宇宙船を避けることがゲームの目的として扱われている。このゲームを実現するためのプログラム作成の一連の工程を確認すると、人がAIプログラマーの入力フォームに書き言葉を記入する「文章による指示」工程と、AIプログラマーが行う「プログラムの自動生成・実行」工程を経て、宇宙ゲームが作成されていることが確認できる(図表2)。

図表2
図表2

また、別の事例においては、AIプログラマーに小学一年生の算数テストを解いてもらうデモが再現されている。そこに掲載されているテスト問題の1つとして、「Jane has 9 baloons.6 are green and the rest are blue.How many baloons are blue?(ジェーンは9個の風船を持っています。6個は緑色で残りは青色です。青い風船は何個でしょう?)」いう算数の問題が挙げられている。もちろん答えは、「3」となる。人間がこの問題を解く場合、この文章から答えを導くことは一瞬で暗算できる。プログラミングを通じてこの問題をコンピューターに計算させる際、プログラミングスキルを保有している人は、プログラミング言語に基づいたテキストファイルを書き、コンピューターに指示を与えることができる。一方、プログラミングスキルのない人はプログラミングを書くことは難しい。この問題に対してAIプログラマーを利用すれば、プログラミングスキルがない人でも「文章による指示」を与えることにより、問題の解答を得られる(図表3)。

図表3
図表3

3.AIプログラマーの可能性

以上みてきたように、AIプログラマーは、コンピューターに実行してほしいことを文章で書けば、AIプログラマーがプログラムを生成し、コンピューターに指示を与え、その結果の表示までを自動で行う。このことは、プログラミングが誕生して以来、プログラミングは技術者が行うものという従来の常識では考えられない新たなプログラムの製造工程を創り出している。近い将来、AIプログラマーの能力がさらに向上すれば、普段使っている「書き言葉」をAIが理解し、それにもとづいてプログラミングを行うAIプログラマーと人が協力しながら効率的にプログラミングを行える環境が創り出されるであろう。このように、多種多様なプログラミング言語を利用しなくても、「書き言葉」でプログラミングを行えるAIプログラマーの技術開発が進められている事実は、注目に値する。当然、人がプログラミングを学ぶことは重要であるが、AIの技術進歩は秒進日歩であり、AIが「書き言葉」に基づいてソフトウェアやアプリケーションを開発できる環境は、そう遠くない未来、さらに普及するだろう。人プログラマーの能力のAIプログラマーによる代替が進む未来が到来するとするならば、それは、誰もが自然言語によりコンピューターに指令を与えることができるようになり、人プログラマーがもつプログラミングスキルや経験の汎用化が進むことを意味する。

人が発案したことをコンピューターに実現させるためにAIプログラマーを利用することは、プログラミング作業が今後、人とAIが協力して行うものになるということである。AIプログラマーは、プログラム製造工程の生産性を飛躍的に向上させる可能性があり、プログラミング業界の人手不足の解消につながるイノベーションとなるであろう。更に AIプログラマーが進化を遂げる未来においては、人手を介さない「自律型AIプログラマー」が誕生することにより、人がコンピューターを制御する時代は終わり、コンピューターがコンピューターを創り制御する時代が到来するのではないか。

柏村 祐


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

柏村 祐

かしわむら たすく

ライフデザイン研究部 主席研究員 テクノロジーリサーチャー
専⾨分野: AI、テクノロジー、DX、イノベーション

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