2年の自粛が地域にもたらしたもの

~感染拡大の長期化は、生活者意識にどのような影響を与えたのか~

稲垣 円

目次

9月末をもって、19都道府県の緊急事態宣言と8県のまん延防止等重点措置がすべて解除された。感染者数・死亡者数が連日更新され緊迫した状況が続いたが、9月中旬から急速に減少した。感染拡大の波は今後も繰り返される可能性はあるものの、マスクや手指消毒、距離を保つといった感染対策は、すっかり私たちの生活上のマナーとして定着した。そうした生活が当たり前になる一方で、地域活動は感染拡大以前ほどの実施は出来ておらず、現在もなお中止しているものもある。

感染拡大から間もなく2年が経とうとしているが、これまで当たり前のように行われてきた数々の地域活動が長期にわたり行われなくなる、ということは何を意味するのだろうか。

本稿では、当研究所が実施した「第4回新型コロナウイルスによる生活と意識の変化に関する調査」(注1)の結果を元に、現状と今後のあり方について考察する。

1.地域活動の実態

まずは、地域活動の現状を見ていく。

図表1は、過去1年間の地域活動の実施状況についてたずねた結果である。調査時点で「中止または延期」に着目すると、「お祭り、体育祭、文化祭などの地域イベント」(57.1%)、「地域住民と一緒に身体を動かしたり、スポーツをする講習会」(47.4%)、「地域住民と交流できる場所(サロン等)」(43.9%)といった、地域住民が交流、体験等を通じて親睦を深める「集合型」の活動に関して割合が高い。これは「模索する、地域活動の行方」(2021年1月)でも記載したように、「集合型」の活動は人と接触する機会も多く、他の活動と比べても趣味や娯楽といった「不要不急の活動」とみなされるため、感染拡大が長期化する中で再開の見通しが立て難い状況であったことがうかがえる。

しかし、この結果を2020年9月に実施した第3回目の同調査(注2)の結果と比較してみると(図表2)、すべての活動において「中止または延期」している割合は減っており、1年前よりは再開に向かっていることがわかる。緊急事態宣言が解除され、感染者も大幅に減少したこともあり、この流れはさらに進むことが期待される。

図表
図表

図表
図表

2.今後の実施意向

図表3は、地域活動に対する「今後の意向」をたずねた結果である。実施に意欲的な回答(「感染対策をした上で、感染拡大以前と同じ頻度で実施してほしい」、「感染対策をした上で、頻度は減らして実施してほしい」)をした割合は、「交通安全、防犯・防災等に関する活動」「公民館・コミュニティセンター、図書館、体育館などの公共施設の営業」の2つの活動で5割を超えているが、その他の活動では消極的(「感染のリスクがなくなるまで、実施するべきではない」)や否定的(「実施しなくてもよい」)な回答が5割を超えていた。先述の第3回調査結果(2020年9月)では、全ての活動について半数以上の人が今後の実施に意欲的な回答であったが、1年後の本調査では意欲的な回答をした割合に変化が見られた。

図表
図表

この消極的、否定的な回答を昨年実施の調査結果と比較したのが図表4である。

これを見ると、すべての項目において2020年9月よりも消極的・否定的な回答割合が高くなっており、否定的な割合はその差が10ポイント以上ある(図表4赤字)。つまり、この1年で各種の地域活動について今後は「実施しなくてもよい」(活動をする必要はないのではないか)と考える人が増加していることを示唆している。

図表
図表

3.地域活動の実施に「消極的」「否定的」になる理由

人びとの意識が消極的または否定的な方へ向いている理由として、まず新型コロナウイルス感染拡大の長期化が挙げられるだろう。感染の波が繰り返される過程で地域によっては最大で4度の緊急事態宣言、そして3度のまん延防止等重点措置が発令され、地域活動の再開時期を見定めることは困難であったと思われる。再開するとしても感染回避を徹底することを呼びかけなければならず、その結果、多くの地域で中止(または延期)を選択せざるを得なかったのではないか。問題は、こうした状態が人びとの意識にどのような影響を及ぼしたのかという点である。

地域活動の意義について改めて考えてみると、近隣の人々が集って交流したり親睦を深めたりすること、また訪問すること(頻度は問わず、そのような機会があること)は、地域住民が互いに地域の実態を知ることであり、防犯や防災や見守りなどの観点、そして関わる住民の身体的・心理的な側面にも良い影響をもたらすことは想像に難くない。たとえ居住する地域への帰属意識が低い(例えば都市部に居住する)住民であっても、例えば災害などが起きた時には、近隣住民と空間や時間を共有していることには変わりなく、一住民として運命共同体の一員となる。したがって、都市か地方かに関わらず、こうした意識を持っておくことは重要だ。他にも地域活動によって、住民間の交流が活発化すると、子育てや高齢者宅の草刈りや雪かきなど個人の困りごとの支援につながることもある。そして、お祭りなどに代表されるように、地域文化・習慣の継承や維持という面でもその役割は大きい。お祭りや運動会といった地域イベントは「ハレの日」に向けて長い時間と多くの準備を経て実施される。その過程は文化の継承の場であるだけでなく、住民同士の結束を強め、住民が地域への愛着を深める機会となる。新型コロナウイルス感染への対処(人と直接接触を避け、社会的距離を保つ、一緒にいても会話は控えめにする、大人数での飲食をしない等)は、人との交流や親睦による地域の基盤や機能を構築することとは逆の行為になる。本調査結果からは、感染拡大が長期化し感染を回避する生活様式が常態化したことによって、一部の生活者にとっては、地域活動よりも「感染しない」ために行動するメリットの方が上回ってしまったのではないか。その結果、地域活動が行われないことも常態化し、地域への帰属意識の低下や住民間関係の希薄化を招いているのかもしれない。

4.これからの地域活動

地域活動がなくても、暮らしていくことができると考える人もいるだろう。こうした活動は少なからず強制を伴い、時間的にも作業としても負担を強いるものでもある。住民相互の理解や協力、お互いさまの関係がなければ成り立たない。しかし、地域にごみ一つ落ちていない、子どもが安全に登校し遊べること、まちの景観が守られていること、地域住民が活動する拠点(図書館、公民館やコミュニティセンター、地域で設置されている交流の場など)が整えられているとするなら、地域の誰かがその役割を担っていることでもある。まだしばらくは、感染回避を前提とした暮らしが続くことになる。感染拡大以前とは同じ形式で開催できないにせよ、先に述べた地域活動の意義を考えると、地域住民が活動できる方法を模索しながら、ニューノーマルの暮らしに合った活動のノウハウ(ツールを活用したり、集う場の設えを変えたり、頻度を増やす・または減らす等)を積み重ねていく必要があるだろう。時間をかけてでも人と人の関わりを絶やさず実践を継続することが求められる。

【注釈】

1)2021年9月17日~19日に実施。全国の20~69歳の男女1,800名が回答。インターネット調査。

2)2020年9月16日~18日に実施。全国の20~69歳の男女3,000名が回答。インターネット調査。

【参考文献】

弊社ホームページの「新型コロナウイルス意識調査特集ページ」にて、「第1~4回新型コロナウイルスによる生活と意識の変化に関する調査」に関する リリースやレポートを公開しています。

稲垣 円

稲垣 円

いながき みつ

ライフデザイン研究部 主任研究員
専⾨分野: コミュニティ、住民自治、ソーシャルキャピタル、地域医療

執筆者の最新レポート

関連記事

関連テーマ

Recommend

おすすめレポート