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内外経済ウォッチ『日本~2026年マーケット展望~』(2026年3月号)

永濱 利廣

目次

トランプ政策の真価と日米の金利差縮小が鍵

2026年の世界経済は、「トランプ政策の真価」と「日米の実質金利差縮小」が鍵を握る一年となりそうだ。

まず米国経済については、減税の追い風とインフレの再燃リスクに注意が必要だろう。第2次トランプ政権による大規模な法人減税や規制緩和が本格化し、企業活動や個人消費の下支えになることが期待される。一方で、2025年に導入された関税政策の影響や、不法移民排除に伴う人手不足が粘着的なインフレを招く懸念もある。景気は底堅さを保つものの、物価高が消費を抑制する強弱入り混じる展開が予想される。

となると、FRBは苦悩を強いられ、利下げは「慎重」になる可能性がある。FRBは、景気配慮から利下げを進める意向だが、インフレ再燃リスクからペースは年2回前後がコンセンサスとなる。また、2026年5月のパウエルFRB議長の任期満了に伴う次期議長にタカ派とされるウォーシュ元FRB理事が任命された人事も、市場の不透明感を強める要因となりそうだ。

日本への影響としては、円安修正と金利上昇の足音が高まることになろう。というのも、米国が緩やかな利下げに向かう一方、日本は高市政権下の積極財政と「物価・賃金の好循環」を背景に、日銀が金利を1%以上に引き上げる可能性が高い。そうなれば、日米の金利差が縮小に向かうことで、長らく続いた記録的な円安傾向が修正され、輸出企業の収益や輸入物価の落ち着きに影響を与える可能性がある。

「物価高に賃金が追いつかない」状況は解消へ

2026年の日本経済は、長らく続いた「物価高に賃金が追いつかない」状況が解消に向かい、内需主導の緩やかな回復へ転換する節目の年となる見通しである。

まずは、経済成長と実質賃金のプラス転換が期待される。具体的には、実質GDP成長率は1%弱の推移が予想される。最大の注目点は、2026年春闘でも5%程度の賃上げが維持される一方、消費者物価指数の伸びが2%を下回ることで、実質賃金が安定的にプラスとなる可能性である。これにより家計の購買力が回復し、個人消費が景気をけん引する「好循環」が現実味を帯びる。

また、2025年に発足した高市政権が、危機管理投資や減税を含む「責任ある積極財政」を本格化させる。この財政拡大は景気を下支えする一方、長期金利の押し上げ要因にもなる。市場は「財政規律と成長」のバランスを注視しており、国債市場の信認維持が株価や円相場の安定に不可欠となる。

一方、追加利上げと金融市場の正常化には注意が必要だ。というのも、日銀は賃金と物価の好循環を確認し、政策金利を1.0%程度まで引き上げる公算が大きい。

となれば、為替はFRBの利下げと相まって日米実質金利差が縮小し、1ドル=150円割れに向けた円安修正が進むと見られる。

メインシナリオは緩やかな円安修正

2026年のマーケットは、米国の「高金利・インフレ」の行方と、主要国間での「政策の乖離」が最大の焦点だろう。

メインシナリオとしては、緩やかな円安の是正を見込む。こちらは、世界経済が底堅さを保つ中、日米の実質金利差縮小が緩やかに進むシナリオである。金利については、FRBはインフレの粘着性を警戒しつつ、年2回程の利下げに留め、政策金利は3%台半ばで維持する一方、日銀は1.0%程度まで追加利上げを行い、日米の実質金利差は徐々に縮小を見込む。

となれば、為替は実質金利差縮小を背景に、ドル円は1ドル=150円割れへと円安修正が進む可能性がある。ただし、米国の景気が強ければドル買い圧力も根強く、急速な円高には至らないだろう。

永濱 利廣


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

永濱 利廣

ながはま としひろ

経済調査部 首席エコノミスト
担当: 内外経済市場長期予測、経済統計、マクロ経済分析

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