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注目のキーワード『年度』

松村 圭一

4月というと新入生や新学年、新入社員といったように、新たな生活が始まる月としてのイメージが強いと思います。これを「『新年度』がスタートする」とよく言うので、一般的に日本で「年度」というと「4月から3月まで」を指すことが多いように思われます。これに対して「(暦)年」というと、暦(こよみ)通りの「1月から12月まで」を指すことが一般的でしょう。

「年度」の代表的なものとして、行政の「会計年度」、もしくは企業の「事業年度」が挙げられます。前者は国や地方公共団体の収入と支出の状況を、後者は事業を行う法人等の経理状況を明らかにするための期間です。国の場合は財政法で、地方公共団体の場合は地方自治法に、「会計年度」を4月から3月にすることが規定されています。これに対して民間企業の「事業年度」は各社の定款等で定められることが多く法定されていませんが、銀行(銀行法)や保険会社(保険業法)のように、4月から3月までと規定されている業界もあります。これと同様の会計年度をとる民間企業が多く、これらは「3月決算企業」とも呼ばれますが、国際化が進むなか、暦と同じ1月から12月を事業年度とする企業(12月決算企業)も増えています。

一方、いわゆる「学校年度」について、法令上「年度」という用語は使われておりませんが、学校教育法施行規則に、「学年」は4月から3月までと定められています。なお世界的に、学校年度の4月開始は日本やインドなど一部で、欧米や中国、ベトナムなどのような9月開始が多くなっています。

この他にも、農作物や業界等で使われている「年度」が多数あります。例えば「砂糖年度」は10月から9月までと、「砂糖及びでん粉の価格調整に関する法律」に規定されています。この法律は価格調整や交付金を通じて、砂糖やでん粉の安定供給等を目的にしています。また日本の酒造(醸造)業界用の年度として「醸造(酒造)年度」があり、1965年の国税庁通達で7月から6月までとされています。もとは酒税の基本となる酒類の製造量を把握するため、1896年制定の酒造税法(現在の酒税法)で10月から9月までと定められましたが、戦後、清酒製造の実態に合わせて先述の通達により変更されました。

(常務取締役 経済調査部長 松村 圭一)

松村 圭一


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