1分でわかるトレンド解説 1分でわかるトレンド解説

注目のキーワード『新しいNISA制度』

水澤 太一

2024年1月から新しいNISA制度(少額投資非課税制度)が始まります。

NISA制度は2014年1月に英国の制度を参考に、個人の投資活動を促進するために導入されました。通常、株式・投資信託等に投資をすることで利益・配当を受けた際には20%の税金がかかりますが、NISAでは一定の範囲内で金融商品から得られる利益が非課税となります。

新しいNISA制度では、これまでの制度と比較して主に次の3点で拡充が図られています。

①つみたてNISAは40万円から120万円へ、一般NISAは120万円から240万円へと投資枠が拡大されるとともに、両枠の併用が可能となることで年間最大360万円の投資が可能に。②つみたてNISAは20年、一般NISAは5年となっている運用益が非課税となる期間が無制限に。③つみたてNISAでは800万円、一般NISAでは600万円となっている非課税での保有限度額が拡大され1,800万円に。

NISA制度の拡充・恒久化は、岸田政権が掲げる「資産所得倍増プラン」の7つの柱の1つで、制度を分かりやすく、使い勝手のよいものとすることで、投資経験者を倍増させ、中間所得層の資産形成を後押しすることを目指しています。

政府では新たな制度を導入することで、5年間でNISA総口座数(1,700万口座から3,400万口座へ)・買付額(28兆円から56兆円へ)の倍増を目標にするとともに、長期的には家計による投資額の増加等を通じ、資産運用収入そのものの倍増も見据えるとしています。

一方で、日本の家計金融資産の過半は現預金が占めており、金融庁の調査によれば、投資未経験者が投資をしない理由としては、「余裕資金が無い」の他に、「運用に関する知識が無い」「購入・保有することに不安を感じる」といった回答も多く占めている状況にあります。

人生100年時代が到来する中、豊かで自分らしい生活を送っていくためにも、資産形成の重要性は増しています。こうした取組みを後押しするには、税制面からの対応に加え、国民に対する投資教育の充実や中立的で信頼できる助言を得られる仕組みなど、投資初心者等を中心に資産形成を支援する体制の充実も重要になります。

(総合調査部 フェロー 水澤 太一)

水澤 太一


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。