Side Mirror(2024年2月号)

佐久間 啓

昨年12月に内閣府から2022年度国民経済計算年次推計が公表されている。日頃目に触れるのは四半期毎の変化で、前の四半期に対してプラス〇%、マイナス●%という姿であるが、年次推計では文字通り年次ベースでの日本経済の姿を見せてくれる。このなかで経済活動別GDPが公表されている。これは経済活動を農業、製造業、卸・小売、金融等16分野に分類しそれぞれの活動別にGDPを推計したものだ。

日本はモノづくりの国とよく言われるが、2022年製造業のウェイト(名目)は19.2%と2014年以来8年ぶりの20%割れ、前年の2021年の20.9%からから1.7%低下した。ご想像の通り、製造業のウェイトは一貫して低下傾向にあり、1994年には23.5%あったものが、2009年にはリーマンショック後の不況で過去最低となる19.0%を記録。2015年以降は20%台で推移していたが2022年に再び20%割れとなった。一方この間(1994年→2022年)に大きくウェイトを上げたのは“専門・科学技術、業務支援サービス”(+4.6%)“保健衛生・社会事業(+4.3%)”。

製造業ウェイト(%)について世界に目を向けると数字が取れる2021年でみて米11.1、独20.6、英9.7、韓28.0(以上OECD)。製造業に鉱業と電力ガス水道を加えたウェイトで見ると日本の23.8に対して米14.4、独24.6(以上OECD)。中32.6、印20.4、印尼30.7、泰32.3(以上WB)。製造業比率は総じて先進国が低く新興国が高いと考えがちだが必ずしもそうではない。印は製造業だけでみればまだ16%程度、印尼も20%程度のウェイトに止まる。そして日、独は先進国の中でも特異な存在、似た者同士であることが分かる。

2023年の名目GDPで日本がドイツに抜かれ世界4位に転落か、というニュースが聞こえてきた。受け止めは様々だ。GDPがどうした…と受け流すこともできるが国の形を考える良いタイミングとも言えるような気もする。国の形を考えたってなるようにしかならないと言われればそれまでであるが、そろそろ本気で取り組まないと手遅れになるような気がする。何事も恐れを感じてから焦ってやっても上手くいかないものだ。                              

(佐久間 啓)

佐久間 啓


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