よく分かる!経済のツボ『「オルタナティブデータ」ってなに?』

阿原 健一郎

目次

「オルタナティブデータ」ってなに?

オルタナティブデータとは、主に金融領域で使われてきた伝統的なデータ(決算情報や経済統計)に対し、デジタル化の進展により、新たに活用できるようになったデータ全般のことを指します。従来は、分析できるほど十分に収集できなかったデータ、またはそもそも存在しなかったデータが、技術の進歩により大規模、高速で収集可能になり、近年では、金融の投資判断のみならず幅広い分野で活用が進んでいます(資料1)。

具体的にどのデータがオルタナティブデータなのか、明確な基準があるわけではありませんが、オルタナティブデータは伝統的なデータと比較して、「速報性が高い」、「高頻度」、「高粒度」といった特徴があります。これらは伝統的なデータにはない利点である一方、もともと調査・分析のために収集されたデータではないため、サンプルに偏りがあることや、利用にコストがかかる等の欠点があります(資料2)。経済分析の分野でも、これらの特徴をうまく活かして分析することで、伝統的なデータからは得られなかった様々な知見が得られるようになってきています。

経済分析でも活用が進むオルタナティブデータ

経済分析での活用方法の一つとして、オルタナティブデータの速報性の高さ、更新頻度の高さを活かした、ナウキャスティング(ごく足もとまでの予測)があります。伝統的な経済統計は、サンプルの偏りが小さく、客観的で信頼性の高いデータですが、データの集計・加工に時間がかかるため、1~2か月程度公表が遅くなります。そのため、経済統計の代わりに、日次や週次で公表されるオルタナティブデータを活用し、早期に経済状況を把握しようという試みが行われています。代表的なものに、クレジットカードデータを利用した、消費動向の把握があります。日本でも、クレジットカードの支出情報は、経済全体の個人消費の動向をいち早く把握できるとして、政策効果の分析だけでなく、公的機関の景気判断にも活用され始めています(資料3)。そのほか、POSデータを利用したインフレ率の予測や、船舶の位置情報を利用した貿易統計の予測等、オルタナティブデータの経済分析への活用が広がっています。

資料1 経済分析で使用されるオルタナティブデータの例
資料1 経済分析で使用されるオルタナティブデータの例

資料2 オルタナティブデータの特徴
資料2 オルタナティブデータの特徴

資料3 オルタナティブデータを活用したマクロ消費動向の把握
資料3 オルタナティブデータを活用したマクロ消費動向の把握

阿原 健一郎


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

阿原 健一郎

あはら けんいちろう

経済調査部 主任エコノミスト
担当: アジアパシフィック経済、世界経済

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