よく分かる!経済のツボ『「ソフトデータ」ってなに?』

阿原 健一郎

目次

「ソフトデータ」ってなに?

経済の調査・分析に使用される経済統計には、様々なデータがありますが、その性質によって「ハードデータ」と「ソフトデータ」に分けることができます。ハードデータとは、小売売上高や鉱工業生産指数、消費者物価指数など、実際の経済活動の結果を集計して公表されるデータです。客観的な過去の実績値であり、経済の現状を把握するためには非常に重要ですが、データの集計・加工に時間がかかるため、速報性が低い(1~2か月程度遅れて公表される指標が多い)というデメリットがあります。それに対し、ソフトデータは、調査機関が実施したアンケート調査の結果に基づき、景況感などの経済の方向感を示したデータです。アンケート調査の回答なので、主観的な要素が含まれるというデメリットはありますが、速報性が高く、足もとの経済動向や先行きの把握に活用されています(資料1)。

図表1
図表1

ソフトデータのなかでも注目される製造業PMI

ソフトデータの代表的なものに、PMI(Purchasing Manager’s Index:購買担当者景気指数)があります。PMIは、各国の製造業やサービス業の購買担当者にアンケート調査を行い、業況が前月と比較して改善・横ばい・悪化のいずれであったかを回答してもらい、指数としてまとめたものです。指数は0~100の範囲で変動し、50であれば横ばい、50を上回れば改善、下回れば悪化を意味します。景気動向の先行指標として注目されるのは製造業PMIの方で、生産高、新規受注、雇用状況、サプライヤー納期、原材料在庫のそれぞれの業況を指数化したものを加重平均して算出されます。ただし、サプライヤー納期のみ、50を上回ると、「需要が弱まったため納期が短縮された」という考えに基づき、他の指数とは逆に製造業PMIを低下させる点には注意が必要です(資料2)。

6月のグローバル製造業PMIは48.8と、昨年の9月以降、10か月連続で節目の50を下回っています(資料3)。米欧を中心とした既往の金融引き締めの効果や、中国の不動産セクターの持ち直しが遅れていること等から、製造業の縮小が続いているとみられます。米国の利上げ停止や中国の景気刺激策の実施によって、製造業が持ち直していくのか、今後の製造業PMIに注目です。

図表2
図表2

図表3
図表3

阿原 健一郎


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

阿原 健一郎

あはら けんいちろう

経済調査部 主任エコノミスト
担当: アジアパシフィック経済、世界経済

執筆者の最新レポート

関連レポート

関連テーマ