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Well-being QOLの視点『人生100年時代、何を大切にして生きるか』

畑野 宏

目次

変わりつつあるキャリアに対する考え方

最近、男性から育休取得についての相談を受ける機会があった。厚生労働省「令和4年度雇用均等基本調査」によれば、男性全体の育休取得率は17.13%と、まだ2割にも満たないが、仕事と育児との両立を考える上で、ひとつの重要なポイントになりつつあるようだ。

労働政策研究・研修機構「職業と生活に関する調査」(2022年3月)によれば、「自身が望む生き方」として、「家事・育児も仕事も同じくらいする」は25~34歳で30.2%。「仕事もするが家事・育児を優先する」31.8%をあわせると、約6割が家庭と仕事の両立を前提とした働き方を希望している。

また、「転居を伴う転勤をしなくて済むなら、昇進できなくてもかまわない」という考えに対しては、25~34歳で36.4%が「そう思う」と回答。「ややそう思う」の25.1%をあわせると、これも約6割が昇進より定住して働くという働き方を希望している。これらは、ひとつ上の年代35~44歳でも同じ傾向が見られる。

ここから見えてくることは、組織(会社)に個人を合わせるこれまでの働き方から、個人のQOL(Quality of life)を大切にする働き方への変化である。辞令を受けたら全国どこへでも、子育てはパートナーに任せ、単身赴任も当たり前という「昭和のキャリア」は、いよいよ終焉を迎えたと言ってもよいのではないだろうか。

個人のQOLを大切にしたキャリアを描く

では、個人のQOLを大切にしたキャリアは、どのように描けばよいのだろうか。いくつかのポイントに分けて考えてみたい。まずは「住む場所」である。どこに住むかはとても大切なポイントであり、これはどのような働き方をするかということにも密接に関わってくる。近年の働き方を例に挙げれば、リモート中心の勤務、副業や起業を視野に入れた仕事の選択、転勤を前提としない働き方などであろうか。前述の昇進より定住を希望するという考え方も頷ける。

同様に家族のあり方についても「住む場所」は大いに影響を受ける。結婚・共働き・共育てという選択肢を選んだ場合、パートナーの今後のキャリアなども考慮する必要が出てくる。双方のキャリアを尊重し、新婚同時に別居を選択する、または転勤のない会社へ転職するという事例を、筆者も何度か目にしてきた。さらに子育てや介護の問題を考慮すれば、「住む場所」について、早くから自身のQOLを大切にした選択をしたい。

次のポイントは「お金」である。FIRE (経済的自立と早期リタイア)という言葉が流行るように、最近の若者は貯蓄や運用に敏感であるが、老後に対する不安を耳にする機会も多い。人生100年時代のQOLを考える上で、「お金」は外せないポイントであろう。

また、「趣味・学び」や「コミュニティ・社会貢献」についても、今後の人生を豊かにするために、若いうちから高い視座で考えておきたい。

さらに「健康」も大切なポイントである。現在の体の状態を維持管理、もしくは改善するために必要なことを、しっかりとキャリアデザインの中へ落とし込むことだ。

人生100年時代をしなやかに生きる

このように、個人のQOLを大切にした生き方は、今後ますます多様性を増すと予想される。

しかし、人生にはいかに準備・計画しても避けられない様々な「転機」も訪れる。そのような時は、アメリカのキャリア学者クランボルツ博士の言葉を参考にしたい。「偶然起こった出来事は、自身の努力や行動によって、新たなキャリアを見つける力に変えていくことができる」。長い人生、しなやかに生きていきたいと思う。

畑野 宏


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