四半期見通し『日本~持ち直し継続も、回復ペースは緩やかなものに~』(2023年10月号)

新家 義貴

目次

高成長だが、輸入減による押し上げ大

2023年4-6月期の実質GDP成長率は前期比年率+4.8%と、1-3月期の前期比年率+3.2%に続いて2四半期連続で非常に高い成長率となった。もっとも、内容を精査すると懸念材料もあり、手放しでは喜べない。この高成長をもたらしたのはもっぱら外需であり、外需寄与度だけで前期比年率+7.1%Ptも成長率を押し上げている。だが、そのうち+4.5%Ptは、輸入の大幅減少による押し上げによるものだ。輸入の減少は内需の弱さの裏返しであり、前向きな評価はできない。また、輸出は供給制約の緩和に伴う自動車輸出の持ち直しにより増加したが、1-3月期の落ち込みからの反動の域を出ない。先行き、海外経済の減速が見込まれることもあり、輸出増加の持続性には疑問符が付く。

内需の弱さも懸念材料だ。内需の柱である個人消費は前期比▲0.6%、設備投資も前期比▲1.0%とそれぞれ減少に転じたことで、内需寄与度は前期比年率▲2.4%Ptと落ち込んだ。特に個人消費は、新型コロナウイルスの感染症法上の分類がこれまでの2類相当から季節性インフルエンザと同じ5類に引き下げられたことで、サービス消費の加速が期待されていただけに、失望感は否めない。

このように、2四半期連続の高成長ではあるものの、個人消費を中心として内需が悪化していることや、輸入減により押し上げられた面が大きいことなど内容は今一つで、割り引いて考える必要がある。実態としては、景気の緩やかな回復傾向が続いているとの評価が妥当だろう。

弱い外需が下押しに

23年前半は予想を上回る高成長となったが、こうした伸びは続かない。23年後半は、前半の高成長から一転し、低成長にとどまると予想する。特に23年7-9月期については、4-6月期に輸入が大幅に下振れた反動が生じることからマイナス成長に転じるとみている。

個人消費は先行き、緩やかな増加を見込む。経済活動正常化の流れは変わっておらず、出遅れていたサービス消費を中心に回復を続ける可能性が高い。もっとも、4-6月期の足踏みに象徴されるように、これまで回復が続いていた個人消費の増勢に陰りが見える点は懸念される。個人消費はこれまで、コロナ禍で水準を大きく落としたところからの正常化の力が働いていたことで回復してきたが、消費水準がある程度戻ってきたことで、こうした押し上げ効果が弱まりつつある可能性がある。個人消費の水準は、実質でもコロナ前に近付き、名目では上回っている。物価上昇が続くなか、今後は貯蓄を取り崩す段階に入るが、貯蓄の取り崩しが順調に進むことは考えにくい。先行きは消費の伸びがペースダウンする可能性が高く、緩やかな増加にとどまるだろう。

資料1
資料1

外需は低調な推移が予想され、今後の成長率を抑制する要因となる。世界的な財需要の低迷は続いており、製造業部門は未だに悪化傾向にある。景気の先行き懸念に伴い発注が手控えられているほか、需要の財からサービスへのシフトも影響している。グローバルな製造業の動向に影響されやすい日本からの輸出は今後も下押し圧力を受ける。加えて、利上げの効果が顕在化することも今後の世界景気を下押しする。米国景気は足元で依然堅調に推移しており、先行きもリセッションに陥る可能性は低いが、過去の利上げの累積的な悪影響がタイムラグをもって顕在化することを考えると、景気が減速することは避けられない。既に銀行の融資基準が厳格化されていることを踏まえれば、今後の企業向け融資の縮小を通じて設備投資が抑制される可能性も高い。日本への悪影響も避けられず、財輸出は低調に推移すると予想している。

大きな流れとしては、コロナ禍からの経済活動正常化の動きが続くことから、今後も景気は回復基調で推移するとみられるが、外需の下押しにより成長ペースは抑制される。先行きの景気回復ペースは緩やかなものにとどまるだろう。

資料2
資料2

一方、24年度には、世界的な製造業の調整局面は一巡すると予想される。在庫調整の終了により製造業の生産悪化にも歯止めがかかり、景況感も上向く。日本からの財輸出も持ち直しに転じる見込みだ。こうした状況を受け、企業の設備投資意欲も持ち直すだろう。個人消費は緩やかな伸びにとどまる一方、輸出が持ち直しに転じることで、24年度の景気は上向く見込みだ。

以上を踏まえ、実質GDP成長率を23年度が+1.7%、24年度が+1.0%と予想する。なお、年度の成長率見通しは23年度が24年度を上回るが、これは23年前半の成長率が極めて高かったことにより発射台が上昇したことによるものである。年度内成長率でみれば24年度が23年度を上回る見込みだ。

24年度には物価は鈍化

消費者物価指数(生鮮食品除く総合)の見通しは、2023年度が前年度比+2.7%、24年度が+1.5%である。輸入物価が下落しコスト上昇圧力が弱まりつつあることや、22年後半のCPIの上昇ペースが非常に速かった裏が出ることから、CPIコアは23年6月でピークをつけ、先行きは鈍化方向で推移する。もっとも、企業の価格引き上げ姿勢が強いことや賃金上昇分の価格転嫁の可能性などを考えると、鈍化ペースは緩やかなものにとどまるとみられ、23年末でも前年比+2%台で推移する可能性が高い。

一方、24年度については、サービス価格は上昇する一方、エネルギー価格の下落に加え、コスト上昇圧力の一服から食料品等でも鈍化が鮮明となることで、CPIコアも上昇率が縮小すると予想する。24年半ばには+2%を割り込み、その後も鈍化傾向で推移するだろう。

資料3
資料3

新家 義貴


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。