Side Mirror(2023年5月号)

佐久間 啓

露によるウクライナ侵攻から既に1年以上が過ぎた。G7、EUは矢継ぎ早に経済制裁措置を発動。中でもSWFTからの締め出しは原油・天然ガス輸出大国の露を相当苦しめるとみられていたが中国やインドの存在がその効果を相当程度緩和させているようだ。露は2022年2月に続き2023年4月にも国連安保理議長国となった。議長国は15の理事国の輪番制だから順番が回ってきただけとも言えるが、事ここに至っては“ブラックジョーク”と言われても仕方ないだろう。

拒否権を持つ常任理事国が軍事侵攻で現状変更を図ったことの意味はとてつもなく大きい。WWⅡ後の世界の枠組みが大きく変わりつつあることを示している。冷戦はベルリンの壁崩壊が終わりの終わり。後年、ポスト冷戦、グローバル化の終わりの終わりはウクライナ戦争と言うことになるのかもしれない。

そんな中、3月にはサウジとイランが国交回復に合意というニュースがあったが、驚いたのはその仲介役を中国が担ったということ。中東関連では、2022年バイデン大統領はOPECプラスに対して増産を要請していたが、産油国側は減産を継続、要請は事実上ゼロ回答となっていたが、2023年4月OPECプラスは予想外に追加減産を決定。また米国主導で3月にオンラインで行われた2回目の民主主義サミットでは120の国、地域が招待され民主主義陣営の結束を図ったが、共同宣言への署名は6割程度に止まった。

4月にはトランプ前大統領が大統領経験者としては初めて起訴された。最近は共和党内でもトランプ離れが進みつつあると言われていたが、「選挙妨害」、「魔女狩り」と訴えるトランプ氏の支持率は上昇しているという。似たような動きは他の国のニュースで見たことあるような気もするが…Integrityはどこに行ったの?米国のソフトパワーの減衰は隠しようがない。

佐久間 啓


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