Side Mirror(2023年4月号)

佐久間 啓

3月から4月は年末とはまた違うこの時期だけの空気が漂う。この時期は卒業、入学の時期でもあり、会社によっては大きな人事異動の時期でもあり、加えて桜が咲き、舞う時期である。我々にとって“卒業”、“旅立ち”に加え“桜”というワードはそれぞれの記憶と共に特別な感情を思い起こさせるものなのかもしれない。

この3年間はコロナ禍でそうした特別な時期のセレモニーは悉く中止だったり、小規模・参加者限定だったりで寂しい思いをした方々も多かったはずだ。しかし今年は完全とは言えないまでも中身をコロナ禍前に戻して実施する予定のものも多いようだ。海外に遅れること?年…ようやく、「コロナ禍を克服し日常を取り戻しつつある」と言える状況になったということだろう。

コロナ禍前、サービス消費にはペントアップ需要はあまり期待できないと言われていたものの、一足早くコロナ禍を卒業した欧米では“巣ごもり消費”から“リベンジ消費”に消費の軸足が変わり、コロナ禍での大規模な財政支出の支えもあって経済は堅調に推移。急激な戻りでインフレも進みFRB、ECBとも過去に例がないペース、幅で利上げを急いだものの未だターミナルレートには到達できていない。中央銀行のタカ派姿勢から市場は2023年のリセッション入りも覚悟していたものの今ではソフトランディングどころかノーランディングを言い出す始末。本当か?と思うが、背景には利上げでも落ちない堅調な雇用環境の存在があるのは事実。

米国ではこれだけ賃金が上昇する中でも労働力人口が増えてこない、特に男性の労働力人口の回復が遅いという現象がみられる。移民の減少、コロナによる超過死亡、所謂“FIRE”等々要因は様々言われているがこれというものはないようだ。どれも一理あるということか。しばらく人手不足は続き、失業率上昇、リセッションは避けられると考えることもできるわけだが、逆に言えば利上げは続きリセッションの谷も深くなるリスクも抱え続けることにもなるが…

佐久間 啓


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