QOL向上の視点『人生100年時代に味わう先達の言葉』

杉崎 勝男

当社が展開しているライフデザインセミナーの構成は、受講者の方々に3つの視点で将来のことを考えていただいている。

1つ目の視点は、お金。定年後や公的年金受給開始後の収支の見通しを立てていただく。2つ目の視点は、健康。そして3つ目の視点は、生きがい。セカンドライフやサードライフの生き方・あり方について考えていただいている。お金と健康・生きがい、どれか一つでも欠けると好ましくない人生になる。お金と健康についてイメージすることは比較的容易のようだが、人生折り返し後をどう生きるかとなるとあまりピンとこない方が多いようだ。しかし、定年後の時間は膨大だ。

平成29年の厚生労働省簡易生命表の概況によれば、一番多く死亡する年齢、死亡最頻値年齢は男性ではおよそ87歳、女性は93歳である。平均寿命が男性81歳、女性87歳であるから、実は一般的に考えられている寿命より更に6年ほど長生きすることになる。まさに人生100年がすぐそこまで来ており、定年後の時間は30年ほどもある。

ところで、年齢を重ねたもののまだ一人前ではないことを意味する表現として、洟垂れ・・・、あるいはひよっこ・・・・などが使われる。ほかにも今や死語になった感のあるお茶くみ・・・・なども使われるが、洟垂れ・・・で思い出されるのが新しい1万円札の顔となる渋沢栄一の言葉だ。

四十,五十は洟垂れ小僧
六十,七十は働き盛り
九十になって迎えが来たら
百まで待てと追い返せ

渋沢栄一は昭和6年(1931年)に91歳で亡くなっているので残念ながら完全にお迎えを追い返すことには失敗したのかもしれない。しかし、明治・大正時代の男性の平均寿命が43歳だったことを考えれば有言実行の人生だったといえるだろう。

我々のセミナーの主な対象年齢層は50代である。人生の折り返しにあたってこれから先どう生きるのかを考えることは、洟垂れ小僧・・・・・働き盛り・・・・以降の計画をたてるということになろうか。我々は長く定年というものをゴールと考えてきた。定年後は余生であり、ゆったり過ごすものという考えにとらわれ過ぎていたようだ。高年齢者雇用安定法が改正され、努力義務ながら70歳まで就業機会が確保された。この動きはさらに加速するだろう。少なくとも働き盛りの10年は手に入れられることになりそうだ。

一方で60歳を過ぎて何をもって働き盛りと思う人もいるだろう。渋沢栄一と同時代を生き、渋沢が東京市長に推した政治家、後藤新平の名言がある。

財を遺すは下、仕事を遺すは中、人を遺すを上とする

数々の名言を残して令和2年鬼籍に入った、名監督野村克也氏の座右の銘「金を残すは三流、名を残すは二流、人を残すは一流」のオリジナルとしても知られる。60歳以降に迎える働き盛り・・・・は自分の頑張りは勿論のこととして、これまでの知識経験を後輩たちに伝承し人を育てることに一肌脱ぐと考えたらどうだろうか。

しかし、それもこれも、土台に健康があってこそだ。70歳働き盛りといえども健康寿命は男性72歳、女性75歳だ。ピンピンコロリを目指して生活習慣の見直しや体力作りも必要だ。

渋沢栄一は100歳まで迎えに来るなと生きた。成し遂げたいことが怒涛の如く、それだけ時間が欲しかったのだろう。人生100年をほぼ手に入れた我々だが、どんな理由を話せばお迎えを追い返すことができるだろうか?

杉崎 勝男

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