DXの視点『テレプレゼンスロボットの活用を考える』

柏村 祐

新型コロナウイルス感染拡大を契機にテレワークが普及し、ビデオや音声による会話、メールを活用した情報共有、チャットなどの同時性に優れるテキストツールを活用するコミュニケーションが拡大している。そのような中、改めて物理的なオフィスの意義や価値とはどのようなものと考えられるだろうか。物理的なオフィスでは、一緒に働く社員がお互いに近くにいるため、相手の表情やしぐさ、ちょっとした会話などから、その人がどのような状況にあるのか、どのような悩みを感じているのか、何か相談があるのではないかといったことを雰囲気から察知することできた。これらの「場」の雰囲気は、様々なデジタルツールが活用されているとしても、テレワークで感じることが難しい。つまり、オフィスで働くということの価値は、仲間と同じ「場」を共有し、一緒に仕事をすることによって得られるような、雰囲気も含めた情報の多さにあると言えるのではないだろうか。

コロナ禍で再認識されたオフィスの価値を取り戻すために注目されるテクノロジーとして、テレプレゼンスロボットが挙げられる。テレプレゼンスロボットは、テレ(遠隔)、プレゼンス(存在)、ロボットを組み合わせた造語である。テレプレゼンスロボットは、オンライン会議システムを搭載するタブレット端末に車輪が装備されたもので、遠隔地から自由自在にロボットを操作できるため、オフィスにいる感覚で職場にいるメンバーと一緒に働くことができる。通信技術やタブレット端末、ロボティクス(ロボットの設計、製造、制御に関するテクノロジー)の性能が向上した結果、ある程度低価格で利用できる機種が増加している。例えば、アメリカの企業が発売するテレプレゼンスロボットは、リモートワーカーの実際の表情を9.7インチサイズの画面に表示し、高性能ローラーを利用してオフィス内を自由に歩き回ることができる。

職場におけるテレプレゼンスロボット
職場におけるテレプレゼンスロボット

コロナとの共存が求められる今、以前は当たり前とされた「物理的な場所」に集まりコミュニケーションをする行動には、これかも一定の制限がかかるだろう。コロナと共存しながらどのようにしてコミュニケーションを活発化していくかという問題に対して、人と同様にオフィスや教室を動き回り、周囲の人の声や動きを把握するテレプレゼンスロボットは、人間の身体機能、認知機能、知覚機能を補完するテクノロジーとなる。離れた場所にいる複数の人を結びつけるオンライン会議は、決まった時間にネット上で集合することを実現できるが、偶発的な出会いは生まれない。モビリティ能力を実装したテレプレゼンスロボットをオフィスや教室といった物理的な「場」に置くことにより、コロナ以前に当たり前とされたちょっとしたコミュニケーションを再現できる。自分自身のアバターとなったテレプレゼンスロボットは、リアルな自分自身と共存しながら行動範囲を拡張できるイノベーションであり、それは新しいコミュニケーションの形を創り出す可能性を秘めている。

柏村 祐

柏村 祐

かしわむら たすく

ライフデザイン研究部 主席研究員
専⾨分野: テクノロジー、DX、イノベーション

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