ライフデザイン白書2024 ライフデザイン白書2024

注目のキーワード『WEリーグ』/編集後記(2021年11月号)

鄭 美沙

今年9月12日、日本初の女子プロサッカーリーグであるWEリーグが開幕しました。WEとは“Women Empowerment”の頭文字です。設立意義の一つには「日本の女性活躍社会を牽引する」ことが掲げられ、理念は「女子サッカー・スポーツを通じて、夢や生き方の多様性にあふれ、一人ひとりが輝く社会の実現・発展に貢献する」ことであるなど、その名の通り女性のエンパワメントが強く意識されています。

理念の実現に向けた取組みは、クラブの参入基準にも反映されています。例えば、スタジアムには授乳室および託児施設の設置を求めています。子供連れの観客を呼び込むだけでなく、選手や指導者、審判員などの産後復帰も意図したものです。さらに、意思決定に関わる者のうち、少なくとも1人は女性とすることや、監督またはコーチの中に女性指導者1名以上を含むことも示しています。この背景には、スポーツ界における女性指導者層の少なさがあります。オリンピック日本選手団に占める女性の割合は、夏季大会では近年概ね半数を維持していますが、女性指導者は未だ少ない状況にあります。

こうした課題は企業と共通しています。政府は、2003年に「社会のあらゆる分野において、2020年までに、指導的地位に女性が占める割合が、少なくとも30%程度になるよう期待する」という目標を掲げました。しかし、労働力調査によると、2020年の管理的職業従事者に占める女性の割合はわずか13.3%であり、政府の目標は「2020年代の可能な限り早期」に先送りされました。

今年6月には、上場企業の行動規範となるコーポレートガバナンス・コードが改訂・施行されました。改訂のポイントの一つには、「企業の中核人材における多様性の確保」があります。2022年4月から実施される新市場区分においては、プライム市場とスタンダード市場上場会社に「女性・外国人・中途採用者の管理職への登用等の多様性の確保の考え方、目標、状況の公表」が求められます。

このように、企業とスポーツ界は女性指導者の不足という同じ課題の解決に取り組んでいます。WEリーグ発足を機に女性活躍のムーブメントがさらに高まることが期待されます。また、新政権発足から約1カ月が経過しました。社会のあらゆる分野における女性活躍に向け、どのような施策が実行されるか注目です。

(総合調査部・課長補佐 鄭 美沙)

編集後記

この一月というか8月中旬以降、株式市場は上へ下への大騒ぎだった。日経平均株価は8/20に年初来安値を更新した後、コロナ感染症の新規陽性者が急激に減少傾向を見せたことから経済再開への期待強く切り返しの動き。注目されていた自民党総裁選への菅首相出馬断念、河野太郎氏出馬、世論調査結果等が伝わると、9/14に一気に年初来高値更新、当然平成バブル崩壊以降の戻り高値も更新した。

河野氏の前例にとらわれない改革姿勢に期待が高まったということか。この間、大きく買い越していたのは“改革”に敏感な外国人投資家。国内勢は個人中心に戻り売り。ただその後は中国の不動産会社の問題、景気自体の変調、FRBのテーパリング、インフレの高止まりの懸念等を材料に下落、「成長と分配の好循環実現」「新しい資本主義」を掲げる岸田新総理誕生でも流れは変わらず、10/5には27,500円割れの水準まで戻されている。

しかし、株式マーケットがこれだけ短期間で綺麗に上に行って来いになることもなかなかない。日経平均株価は所詮一つの株式インデックス。これを見てれば世の中のことはだいたい分かる、とまでは言わないが、過去の値動きを振り返ってもその動きは多くのシグナルを発し、先行きを考えるうえで多くの視点を提供してくれていた。今回の動きは何かを示唆しているのだろうか。

今回の市場動向を見ていて感じるのは、多くの人がやはり真っ当な“変革”を期待しているということ。日本は今の時代の中でそのポテンシャルを活かしきれていない、もっとできるはずと期待している人が多いということでもある。新政権は「新しい資本主義」実現のために何をどう変えていくのか。世界が注目している。(H.S)

鄭 美沙


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。