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DXの視点『デジタル国家を支えるコアテクノロジー』

柏村 祐

世界には役所に行かなくてもインターネットを通じて各種手続きを行える国がある。ヨーロッパのエストニアでは、婚姻・離婚届、不動産売買を除く、住所変更をはじめとした一般的な行政サービスから、法人設立や銀行口座の開設まで、様々な手続きをオンラインで行える。

デジタル先進国家エストニアを支えるテクノロジーの仕組みは「X-Road」(エックスロード)と呼ばれ、省庁や行政機関のデータベースを連携させるために開発されたデータ交換基盤である。X-Roadを通じて省庁や医療機関などのシステム同士で連携するため、国民の個人データに関しては広範囲にシステム間で紐づけられている。国民からすれば、一度自分の情報を提出すれば、他の機関に同じ情報を提出する必要がない「ワンスオンリー」が浸透しており、オンラインサービスの利便性は極限まで高まっている。

2001年に開始されたX-Roadには1,000以上の機関が参加しており、多種多様な電子公共サービスを提供している。エストニアが保有するキーテクノロジーX-Roadが示唆することは、テクノロジーを活用すれば、行政サービスや官民連携における無駄なプロセスを効率化し、国民の満足度が高いサービスを提供できるということではないだろうか。ただし日本に導入するにあたっては、マイナンバーの普及率の低さから明らかなように、まず国民の個人情報の取り扱いに対する不安を払拭することが先決となるため、政府は国民に対して情報管理に関する説明を十分に行う必要がある。個人情報を一元的に国家に提供することに対する「安心感」を国民が持つことができれば、必要な時に簡単かつ便利に利用できるX-Roadのようなワンストップサービスの普及が進み、様々な利便性を享受できる真のデジタル社会を実現することに繋がるだろう。

図表
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柏村 祐


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柏村 祐

かしわむら たすく

ライフデザイン研究部 主席研究員 テクノロジーリサーチャー
専⾨分野: AI、テクノロジー、DX、イノベーション

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