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QOL向上の視点『人生100年時代を幸福に生き抜く方法』

山口 良司

筆者が新卒で入社した昭和56年当時の社内誌にはすでに、「高齢化のスピードが世界に類を見ない速さで進んでおり、今は65歳以上の老人は10人に一人だが、2000年には、6人に一人になる」と記されていた。高齢化は予測されていたが、今、その課題に翻弄されている。

高年齢者雇用安定法が改正され、70歳雇用を企業に努力義務化したが、果たして働く人達の幸福度を向上させられるのだろうか。企業と働く人達の思いのミスマッチ、如何に人生100年を幸福に暮らすのか、について考察してみたい。

働き方の変化で気づく生き方自体の変化

新型コロナウィルス禍で、私たちの働き方は大きく変わった。毎朝、満員電車に揺られての通勤から解放され、部屋着のまま自室のPCの前で一日を過ごすようになった。恒例だった長時間の会議、大量の資料作成などがなくても仕事は回り、今までの仕事の意味や自分の行いすら疑問に思えてくる。私は人生(≒時間)を無駄に過ごしてきたのかもしれない。もっと充実感、幸福感を得る方法があるのではないか。

一方で、企業もある気づきを得てしまう。莫大な旅費、会場の手配を必要とした集合研修も、オンラインでも、それなりの効果を、より低廉に実施できた。やらなくてもいい業務も明確化しつつあり、業務削減のその先には・・。こうした気づきから企業も、生産性という言葉の真意を考えるようになり、職務の明確化と称したさらなる分業化や早期退職制度の導入などにつながっていく。

企業によるキャリアデザイン支援

企業は、増殖した管理職に、“60歳以降はできれば社外で活躍を”というメッセージを密かに込めてキャリア研修を行ってきた。近年、中堅層の絶対数不足に直面し、一転して、自ら手と足を動かして活躍して欲しいと伝えている。

キャリア施策は企業や社会の状況により絶えず変化し続けている。こういった変化を単に批判するだけでなく当然のことと認め、自らのキャリアは自ら選択、行動する必要性があることに気づく必要がある。

キャリア研修で「みなさんの夢はなんですか、それを実現できそうですか?」と質問しても明快な返答はまずない。ごくたまに、「宝くじで10億円を手にすること」といった答えが返ってくることもあるが「そのお金で何をしたいですか?」とさらに訊くと「まず貯金して、ゆっくり考えます」というのがお決まりの答えだ。“宝くじが当たる”は手段であり、それで何をするかが夢≒目的ということに気づく人は少ない。

キャリア自律で幸福になる

ある海外進出企業の研修の参加者から、欧米では自分の将来像(夢)を明確に持っている人が多いと教えてもらった。授業でキャリアをテーマに話し合いをするらしい。その方の小学生の息子は「6か月後にどうなっていたい?」という宿題に取り組んでいると教えてくれた。昨今、日本でも小中学生の頃からキャリア教育が実施されているが、大学では未だに就活対策としての色彩が濃く、欧米のような自律的(自己選択的)キャリア教育はなされていないようだ。

過去の人口増と好景気の時代は、規模の経済の追求により勝ち抜いていけるシンプルな時代だった。所謂、良い大学に入り、良い会社に就職し、定年まで勤めることで共通の幸福を実現できる良き時代だった。また単一の幸福感であるが故、そこに迷いはなかった。

世界有数の企業が終身雇用は保証できないと宣言する時代。私たちは今、同じ船に乗り続けられる保証がない時代を生きている。予測不可能なVUCAの時代、私たちは激流に漂う船の櫂(かい)を他人(企業)まかせにすることなく、キャリア自律という櫂を手にし、自ら操舵することが、幸福への最短の航路であることを自覚する必要があるだろう。

山口 良司


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。