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2025.12.25
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米国経済マンスリー:2025年12月
~ノイズが多い経済指標~
前田 和馬
- 要旨
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7-9月期実質GDPは個人消費を中心に底堅く推移したほか、2025年10~12月期も消費や住宅投資を中心に堅調な推移が見込まれる。なお、政府閉鎖による公的支出の停止は10~12月期における表面上の成長率を抑制する一方、26年1~3月期は反動増によりプラスに影響するだろう。
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11月CPIは市場予想を下回ったものの、データ収集期間が短かったこと等を踏まえると、結果は割り引いてみる必要がある。また、1月公表の12月雇用統計やCPIは当初予定通りに公表される一方、10~12月期GDPの公表日程は依然未定となるなど、政府閉鎖がもたらす混乱は残る。
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FRBは12月FOMCで3会合連続の利下げに踏み切った一方、声明文では利下げペースを緩める可能性が示唆された。ドットチャートでは26・27年の利下げ見通しが1回ずつと、9月時点から変化がなかったものの、5月以降に就任する新議長はより積極的な利下げを志向するだろう。
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経済指標
7~9月期実質GDP
7~9月期実質GDPは前期比年率+4.3%(4~6月期:+3.8%)と2四半期連続で増加した。内訳をみると、個人消費が+3.5%(+2.5%)と21四半期連続で前期水準を上回るなど、娯楽財やヘルスケアを中心としたサービスが全体を押し上げた。また、設備投資は+2.8%(+7.3%)と情報処理機器や研究開発を中心に増加した一方、住宅投資は-5.1%(-5.1%)と3四半期連続で減少するなど高金利を背景に低調に推移した。他方、輸出は+8.8%(-1.8%)と前期からの反動もあり財・サービス共に増加したほか、控除項目である輸入は-4.7%(-29.3%)と高関税を背景に2四半期連続で減少した。また、民間在庫変動は-0.2%pt(-3.4%pt)と在庫取り崩しを背景に成長率を抑制した。この間、コアPCEデフレーターは前年比+2.9%(+2.7%)と、関税引き上げを反映した財価格に加えて、サービス価格も加速するなど、高止まりしている(詳細は「米国経済は25年3Qに消費主導で加速(GDP、予測)」。

11月全米供給管理協会(ISM)景況感指数
11月ISM製造業PMIは48.2(10月:48.7)と2か月連続で低下し、9か月連続で好不況の節目となる50を下回った。内訳をみると、雇用は44.0(46.0)、生産活動に先行する新規受注が47.4(49.4)と共に低下するなど、低調に推移した。一方、生産は51.4(48.2)、在庫は48.9(45.8)と共に上昇した。企業コメントでは「輸入品の輸送時間が長くなっているようにみえる(一般機械)」や「関税によるコスト上昇、政府閉鎖、世界的な不確実性の高まりを背景に、事業環境は依然として軟調(その他製造業)」などと引き続き関税を中心した懸念の声が目立つ。
他方、11月ISM非製造業PMIは52.6(52.4)と2か月連続で上昇した。足下のサービス業活動は一部に弱さがみられるものの、好不況の節目となる50を上回る推移となっている。内訳をみると、入荷遅延が54.1(50.8)と大幅に上昇し全体を押し上げたほか、事業活動が54.5(54.3)、雇用が48.9(48.2)と共に前月水準を上回った。一方、新規受注は52.9(56.2)と大幅に低下した。企業コメントでは「関税の不確実性が購買行動を複雑にし続けている(不動産・賃貸・リース)」と引き続きトランプ関税への懸念がみられる一方、「政府閉鎖の解除で通常業務に戻ったものの、1月末に再度政府閉鎖に陥ることを警戒している(企業管理・支援サービス)」などの政治不確実性を懸念する声がみられる(詳細は「米国 関税で製造業の回復に遅れ(11月ISM製造業)」及び「11月の米景気拡大と雇用軟化示唆(11月ISM非製造業)」)。
11月雇用統計
11月雇用統計における非農業部門雇用者数は前月差+6.4万人(10月:-10.5万人)と前月の反動もあり増加したものの、3か月移動平均では+2.2万人(-0.8万人)と緩やかな減速が続いている。11月の雇用者数を業種別にみると、医療・社会福祉は前月差+6.4万人(+6.46万人)と人手不足を背景に45か月連続で増加し全体を押し上げた。また、小売業が+0.62万人(-0.24万人)と2か月振り、専門・企業サービスは+1.2万人(-0.7万人)と7か月振りに前月水準を上回った。他方、製造業は-0.5万人(-0.9万人)と7か月連続、情報業は-0.4万人(-0.5万人)と6か月連続で減少するなど、停滞が持続している。他方、政府部門は-0.5万人(-15.7万人)と2か月連続で減少した。なお、同部門における10月の大幅な減少はトランプ政権による早期退職プログラムの影響とみられる(募集は1月であった一方、応募者は9月まで給料が支給されたため、10月以降に雇用者から除外)。
この間、11月の労働参加率は62.5%(9月:62.4%)と小幅に上昇した一方、失業率は4.6%(4.4%)と前月水準を上回るなど、低水準ながらも緩やかな悪化が続いている。なお、これらの指標の10月分は、算出に用いる家計調査が政府閉鎖の影響で実施されなかったため、公表されていない。一方、週平均労働時間は前年比0.0%(10月:-0.3%)と横ばい圏で推移した一方、平均時給は+3.5%(+3.7%)と緩やかな減速が続いている。この結果、労働所得(=民間雇用者数×平均労働時間×平均時給)は+4.3%(+4.4%)と、賃金上昇を背景に増加基調で推移している。他方、CPI上昇率を控除した実質賃金は時間当たりで+0.8%(9月:0.7%)、週当たりでは+0.8%(+0.7%)と増加するなど、底堅く推移している(詳細は「雇用が増加に転じたが失業率は更に上昇(11月米雇用統計)」)。
11月消費者物価指数(CPI)
11月消費者物価指数(CPI)は前年同月比+2.7%(9月:+3.0%)と減速した。足下のトレンドを示す3か月前比年率でみると、総合指数が+2.1%(+3.6%)、コア指数は+1.6%(+3.6%)と大幅に減速した。なお、政府閉鎖の影響のため、大半の品目で10月実績が公表されていないほか、11月分も調査日数が通常より短くなったために年末商戦の値引きの影響が従来よりも強く出た懸念が残るなど、結果は幅を持って評価する必要がある。
11月の内訳を見ると、食品は前年比+2.6%(9月:+3.1%)と減速した。卵の大幅な下落や果物・野菜価格の落ち着きが全体を抑制した。一方、エネルギーは+4.2%(+2.8%)とガソリン価格を中心に前月から加速した。この間、食品・エネルギーを除くコアベース指数は+2.6%(+3.0%)と前月から減速した。コアCPIの内訳を見ると、住居費が+3.0%(+3.6%)と家賃を中心に鈍化した。なお、10月の家賃は前月から据え置かれた可能性があり、この場合には11月の前年比変化率が過小である懸念が残る(家賃は6つのサンプルグループをローテーションしながら毎月の変化率を算出しており、前年比変化率はこうした過去12か月間の変化を累積したもの)。また、住居費を除くコアCPIも+2.3%(+2.6%)と前月から減速した。コア財は+1.4%(+1.5%)と、新車や中古車の価格鈍化のほか、年末商戦の影響もあり家電や娯楽財において減速が目立った。他方、サービスでは航空運賃が下落したほか、娯楽サービスが騰勢を鈍化した。
先行きのCPIを巡っては、サービス価格は労働需給緩和による賃金上昇率の安定や家賃の鈍化を背景に減速が続く可能性が高い。一方、財価格は追加関税による輸入物価上昇の影響が時間をかけて波及するとみられ、特にCPI上のウェイトが大きい新車やアパレルへの価格転嫁動向が注目される(詳細は「米国 大幅な低下も統計に歪みの恐れ(11月CPI) 」)
10月小売売上高
10月小売売上高は前月比0.0%(9月:+0.1%)と横ばい圏で推移した。内訳をみると、自動車は-1.6%(-0.1%)とEV補助金が9月末に終了したことなどを背景に2か月連続で減少した。また、ガソリンは-0.8%(+1.9%)と原油安、飲食が-0.4%(+0.2%)と政府閉鎖による一時帰休等を背景に共に5か月振りに減少した。一方、無店舗小売は+1.8%(-0.4%)、家具は+2.3%(-2.4%)と前月の反動などもあり増加した。この結果、GDP算出に用いられるコア小売売上高(自動車・ガソリン・建設材・飲食サービスを除くコントロール・グループ)は+0.8%(-0.1%)と堅調さを維持している(詳細は「米国10月小売売上は自動車の不振、政府閉鎖で鈍化」)。
シカゴ連銀はクレジットカード利用実績や人流データを用いて、商務省公表の小売売上高の動向を早期に補足する「シカゴ連銀小売速報(CARTS)」を公表している。同指標に基づくと、11月の小売売上高(外食を含み自動車を除く)は名目ベースで前月比+0.3%(10月:+0.4%)と増加した一方、インフレ調整後の実質ベースでは0.0%(+0.7%)と横ばい圏で推移した見込みだ。雇用の減速感は強まっているものの、株高を背景とした高所得者消費の牽引もあり、米国の消費は底堅く推移している。ただ、先行きに関して、関税分の小売価格への転嫁が進行するに伴い、これまでの駆け込み需要による反動減などが小売売上を下押しする可能性には警戒が必要だろう。
11月鉱工業生産
11月鉱工業生産は前月比+0.2%(10月:-0.1%)と2か月振りに上昇した。11月の内訳を見ると、鉱業は+1.7%(-0.8%)とこれまでの反動もあり3か月振りに上昇した一方、公益は-0.4%(+2.6%)と同月が例年よりも暖かかったため3か月振りに低下した。一方、製造業は0.0%(-0.4%)と横ばい圏で推移するなど、回復に一服感がみられる。製造業の内訳を見ると、自動車・同部品が-1.0%(-5.1%)と軟調な新車販売や半導体の供給制約を背景に3か月連続で低下した。一方、コンピュータ・電子機器は+0.8%(+1.5%)と2か月連続、航空機・その他輸送機器は+1.1%(+2.0%)と3か月連続でそれぞれ上昇するなど、堅調さを保っている。先行きに関して、追加関税によるサプライチェーンの混乱や価格上昇を背景とした需要減少、及び半導体の供給不足による生産下押しに警戒が必要だろう(詳細は「米国 製造業は拡大の勢いを失う(11月鉱工業生産)」)。
経済指標の公表予定
米労働省は経済指標の公表を徐々に正常化させつつあり、1月に公表される12月分の雇用統計や消費者物価指数は当初の予定通り公表する。一方、米商務省の公表する小売売上高や住宅着工は依然公表に遅れがみられており、2026年の公表時期が定まっていない指標が散見される。また、10月分の消費者物価指数や生産者物価指数は公表が中止されたため、本稿執筆(12月24日)時点において、これらを基礎統計として用いて算出する10月個人消費支出(PCE)デフレーターや10~12月期実質GDPの公表予定、及び算出方法に関する具体的な公表はない。

経済見通し
2025年10~12月期実質GDP成長率は民需を中心に底堅く推移すると見込まれる。アトランタ連銀によるGDPナウキャスト(12月23日時点)に基づくと、同四半期の実質GDP成長率は前期比年率+3.0%(7~9月期実績:+4.3%)と、個人消費の増加や住宅投資の回復を背景に堅調さを維持する可能性が高い。とはいえ、同試算値には政府閉鎖の影響が部分的にしか反映されていない可能性がある。米議会予算局は6週間に及ぶ政府閉鎖が10~12月期の成長率を-1.5%pt下押しすると試算している。また、2026年1~3月期には逆に政府支出の反動増が全体の成長率を+2.2%pt押し上げると見込まれるなど、表面上の成長率は短期的に大きく変動する可能性がある。
先行きの米国経済を巡っては、利下げによる住宅投資の下支え、或いは7月に成立した減税法案の効果発現などを背景に、減速しながらも緩やかな成長を続ける可能性が高い。足下では雇用者数の拡大ペースの減速感が鮮明となっているものの、移民抑制による労働供給の影響を割り引いてみる必要がある。ただし、新規の求人や採用が鈍化するなか、今後企業による人員削減の動きが積極化する際には失業率が急騰するリスクがある。10月の有効求人倍率(=求人数÷失業者数)は0.99(9月:1.01)と試算され、1倍割れに陥っている(10月の失業者数を9・11月平均として算出)。
この間、12月のコンファレンスボード消費者信頼感指数は89.1(10月:92.9)と5か月連続で低下した。また、ミシガン大学消費者信頼感指数は52.9(51.0)と5か月振りに改善したものの、消費者マインドの軟化が続いていることに変化はない。こうした消費の減速懸念が2026年にかけて景気後退へと転じるか否かは、関税の価格転嫁の度合いとそのスピードに大きく依存するだろう。貿易相手国の輸出業者や米国の輸入業者が関税負担を吸収し続ける場合、個人消費への影響は限定的に留まり、景気後退は回避されると見込まれる。
金融政策
12月FOMC(12/9~10開催)議事要旨
12月FOMCにおいて、FRBは事前の予想通り3会合連続での利下げを決定し、FF金利誘導目標を従来から0.25%pt低い3.50~3.75%とした。シカゴ連銀のグールズビー総裁とカンザスシティ連銀のシュミッド総裁が金利据え置き、ミラン理事が0.5%ptの利下げをそれぞれ主張し、政策決定に反対票を投じた(賛成9票、反対3票)。声明文においては雇用判断における「失業率は低水準」との表現が削除されたほか、先行きの政策判断では「政策金利の更なる調整の程度と時期を検討するにあたり、委員会は今後のデータ、変化する見通し、リスクバランスを慎重に評価する」と、「更なる調整の程度と時期」との2024年12月と同様の表現を追加することで利下げペースを緩めることが示唆された。
また、同時に公表された経済・物価見通し(SEP)では2025~27年の成長率見通しが上方修正された一方、失業率の見通しは27年のみが下方修正されるに留まった。成長率が上方修正されながら失業率は概ね横ばい圏に留まったことを巡って、パウエル議長は政府閉鎖による経済指標の変動(25年Q4の成長率が一時的に抑制される場合、26Q4における前年比の成長率は上振れる)やAI投資等による生産性上昇の可能性を指摘した。また、インフレ率の見通しは25~26年が下方修正されたほか、パウエル議長は「関税の影響を除けば、インフレ率は2%台前半」、「26年Q1に高関税による財インフレがピークを迎える」、「景気過熱による(フィリップス曲線的な)インフレは見られない」及び「関税インフレは一時的に留まると想定するのが基本シナリオ」などと主張し、インフレ高止まりの可能性に否定的な見解を示した。一方、ドットチャートにおけるFOMCメンバーの中央値見通しでは、26年と27年が共に1回の利下げとなるなど、9月時点の見通しから変化はなかった。また、パウエル議長は現行の金利水準が「中立金利の妥当な推定範囲内」に入ったと指摘し、利下げペースを緩める妥当性を主張した(詳細は「FRBは3会合連続の利下げと短期国債の購入を決定 (25年12月9、10日FOMC)」)。





前田 和馬
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