11月の米景気拡大と雇用軟化示唆(11月ISM非製造業)

~事業活動は活発化もインフレ圧力が小幅和らぐ~

桂畑 誠治

要旨
  • 25年11月のISM非製造業景気指数(総合、季節調整値)は、52.6(前月52.4)と市場予想中央値の52.0(筆者予想53.2)への低下に反して、前月比0.2%ポイント上昇した。関税と政府閉鎖が需要とコストの両方に影響を与えているなかで、25年2月以来の高い水準に上昇し、非製造業部門の拡大ペースが小幅加速したことを示した。
  • 11月のISM非製造業景気調査では、新規受注が52.9(前月56.2、前月比▲3.3%ポイント)と大幅に低下した一方、入荷遅延が54.1(前月50.8、前月比+3.3%ポイント)と大幅に上昇したほか、雇用が48.9(前月48.2、前月比+0.7%ポイント)、活動指数が54.5(前月54.3、前月比+0.2%ポイント)と上昇した。
  • 入荷遅延が大幅に上昇したが、政府の一部閉鎖に伴う航空便の混乱、航空機の墜落事故、関税率の変更に伴う税関手続きの遅れ等が影響したとみられ、供給側の問題による一時的な押上げである。また、雇用が上昇したが、縮小を示す水準にとどまっており、労働市場の緩やかな軟化を示唆した。 一方、新規受注は大幅に低下したものの、拡大した業種数が12業種と前月から変わっていない等、前月の大幅上昇の反動とみられ、基調として拡大ペースが徐々に速まっている。また、活動が高い水準で推移しており、非製造業部門の活動は良好さを維持している。このような中で、仕入価格指数は低下し、インフレ圧力の若干の緩和が示された。
  • 以下で、構成項目を詳細にみる。新規受注は、大幅に低下したが、拡大を示す水準を維持した。拡大した業種が18業種中12業種と前月の12業種から変わらず、縮小した業種が4業種(同5業種)に減少した。 一方、入荷遅延は上昇し、物流の遅れを示唆した。コメントでは、「関税により国境で商品が止められている」、「政府閉鎖の影響で国境での通関手続きが遅れている」とトランプ政権の政策による悪影響が指摘された。 また、活動指数は上昇し、高い水準を維持した。縮小した業種が5業種(同3業種)に増加したものの、拡大した業種は18業種中11業種(前月10業種)と増加した。拡大した11業種では、関税の影響を受け易い卸売業が価格上昇の影響を回避するため拡大を続けたほか、需要の強い小売業、情報産業、医療・社会支援、教育サービス、宿泊・飲食サービス、専門・科学・技術サービス、運輸・倉庫も拡大を続け、芸術・娯楽・レクリエーション、金融・保険、企業向けサービスが拡大に転じた。さらに、雇用指数は小幅上昇したものの縮小を示す水準にとどまった。雇用の拡大した業種数が18業種中6業種(同4業種)に増加し、縮小した業種数は8業種(同10業種)と減少した。11月に雇用の拡大を報告した6業種は、季節雇用の増加した小売業のほか、公益、感染症患者の増加を受け医療・社会支援が拡大を続け、卸売業、宿泊・飲食サービス、農林水産業が拡大に転じた。
  • インフレ関係では、仕入価格指数が65.4(前月70.0)と高い水準だが、前月比▲4.6%ポイント低下し、インフレ圧力の若干の緩和が示された。18業種中14業種(前月16業種)で上昇、支払価格の下落を報告した業種は建設業のみにとどまっており、強いインフレ圧力が残存している。商品別では、銅製品、人件費、電子部品、ソフトウェアライセンス、鉄鋼が上昇した。供給不足として、変圧器、労働者、電気部品、鉄鋼、電線・ケーブルが挙げられた。
  • 11月に拡大した業種数は、18業種中12業種と前月の11業種から増加した。拡大した業種は、強い順に、小売業、芸術・娯楽・レクリエーション、宿泊・飲食サービス、卸売業、医療・社会支援、教育サービス、公的部門、農林水産業、金融・保険、情報産業、専門・科学・技術サービス、公益と続いた。一方、縮小した業種は、建設業、不動産・賃貸・リース業、鉱業、企業向けサービス、運輸・倉庫の5業種と前月の6業種から減少した。その他サービスは変わらずとなった。
  • 米国経済全体の景気動向を示す「ISM総合景気指数(非製造業景気指数と製造業景気指数の合成)」は、11月に52.2(前月52.0)と上昇し、拡大ペースの小幅加速が示された。四半期では、10、11月平均で、製造業が48.5と7-9月期の48.6から低下した一方、非製造業が52.5と7-9月期の50.7から上昇した。この結果、同期のISM総合景気指数は、52.1と7-9月期の50.5から上昇し、10-12月期の米景気の緩やかな加速を示唆している。
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桂畑 誠治

かつらはた せいじ

経済調査部 主任エコノミスト
担当: 米国経済

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