米国 市場予想を下振れも強いインフレ圧力(9月CPI)  

~年内の利下げ見通しはほぼ変わらず~

桂畑 誠治

要旨
  • 25年9月の消費者物価(総合CPI)は、前月比+0.3%(前月同+0.4%)と低下し、市場予想中央値同+0.4%(筆者予想同+0.4%)を下回った。エネルギーは、ガソリン等の上昇を背景に同+1.5%(同+0.7%)と上昇率が高まった一方、食品は、穀物・ベーカリー製品、ジュース等が上昇したが、魚介類、ミルク、珈琲等の下落や、野菜・果物等の低下によって、同+0.2%(同+0.5%)と低下した。また、エネルギー・食品を除く消費者物価(コアCPI)は、帰属家賃の大幅な鈍化を背景に、同+0.2%(同+0.3%)と市場予想中央値同+0.3%(筆者予想同+0.3%)を下回った。
  • トランプ関税のもと、企業の価格転嫁の抑制、駆け込み輸入による在庫増加、駆け込み需要の剥落による値下げ、貿易相手国の輸出価格の引き下げ等の影響でインフレの押し上げが抑制されているが、徐々に影響が顕在化しており、財コアの上昇率が高まっている。今後、在庫の減少、企業の価格転嫁の進展によって、財コア価格の押し上げ圧力が強まっていくと予想される。
  • 金融政策に関して、9月のCPI統計が市場予想を下回ったが、引き続き物価の上昇圧力が強いことが示された。ただし、長期の期待インフレ率が安定していることから、FRBは関税による物価上昇は一時的で限定的との見方を強めているとみられる。FRBは、労働市場の更なる軟化、悪化を防ぐために、10月のFOMCで25bpの利下げを実施すると見込まれる。
  • 金融市場では、9月のCPI統計が市場予想を下回ったこと等を受け、2年国債金利、10年国債金利などが一旦低下し、ドルは主要通貨に対して弱含んだが、年内に追加で25bpの利下げ2回との見方を変えるような内容ではなかったこともあり、金利は上昇に転じ、ドルは買い戻された(P6)。一方、主要株価指数は上昇し、S&P500種株価指数は最高値を更新した。
  • FF金利先物の示す10月FOMCで25bpの利下げの可能性が約96%(前日約98%)、12月FOMCで3回連続の25bpの利下げの可能性が約92%(前日約91%)と限定的な変化にとどまった。年末のFF金利の水準は、3.69%と前日の3.705%から小幅低下した。
  • コアCPIでは、財コアが前月比+0.2%(前月同+0.3%)、サービスコアが同+0.2%(同+0.3%)とともに低下した。財コアでは、情報機器、教材が下落幅を拡大したほか、新車、中古車、自動車部品、アルコール飲料が低下した。医療用品は下落幅を縮小した。サービスコアでは、専門医療、自動車保険、インターネットサービスが下落に転じたほか、カーリースは下落幅を拡大した。また、帰属家賃(前月比+0.1%、前月同+0.4%)、賃貸料、ホテル、航空運賃、自動車メンテナンス・修理、上下水道・ゴミ収集サービスが低下した。
  • コアCPIの上昇モメンタムをみると、6ヵ月前対比年率で+3.0%(前月+2.7%)と上昇し、3ヵ月前対比年率で+3.6%(前月+3.6%)と高い伸びを続けており、短期的なインフレ圧力は強いままであることを示した。
  • 前年同月比では、総合が+3.0%(前月+2.9%)と市場予想中央値同+3.1%(筆者予想同+3.1%)を下回ったが、上昇した。コアCPIは+3.0%(同+3.1%)と低下し、市場予想中央値+3.1%(筆者予想同+3.1%)を下回った。また、食品が+3.1%(同+3.2%)と低下した。一方、エネルギーは、+2.8%(同+0.2%)と上昇に転じた。
  • コアCPIでは、財コアが+1.5%(同+1.5%)と同率の伸びとなったほか、サービスコアが+3.47%(同+3.59%)と小幅低下し、全体で+3.0%(同+3.1%)と低下した。財コアでは、家庭用耐久品・消耗品、新車、医薬品など医療用品、娯楽用品、アルコール飲料、その他財が上昇した。情報機器が下落幅を縮小した。サービスコアでは、レンタカー、電話サービスが下落幅を拡大した。また、賃貸料、帰属家賃、専門医療サービス、医療保険、航空運賃、自動車保険、上下水道・ゴミ収集サービス、教育関連サービスが低下した。サービスコアは、低下傾向を辿ってきたものの、賃金上昇の影響を受け易い部門や、住宅関連の高い伸びを背景に、前年比+3.5%と高い上昇率にとどまっている。
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桂畑 誠治

かつらはた せいじ

経済調査部 主任エコノミスト
担当: 米国経済

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