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雇用統計「腐っても鯛」 12月は利下げ見送りか

藤代 宏一

要旨
  • 日経平均株価は先行き12ヶ月49,000円程度で推移するだろう
  • USD/JPYは先行き12ヶ月150円程度で推移するだろう
  • 日銀は利上げを続け、2026年後半に政策金利は1.0%に到達しよう
  • FEDはFF金利を26年前半までに3.5%へと引き下げ、その後は様子見に転じるだろう
目次

金融市場

  • 前営業日の米国市場は、S&P500が▲1.6%、NASDAQが▲2.2%で引け。VIXは26.4へと上昇。

  • 米金利はカーブ全般で金利低下。予想インフレ率(10年BEI)は2.253%(▲2.9bp)へと低下。

実質金利は1.813%(▲2.7bp)へと低下。長短金利差(2年10年)は+55.0bpへとプラス幅拡大。

  • 為替(G10通貨)はUSDが堅調。USD/JPYは157半ばへと上昇。コモディティはWTI原油が59.1㌦(▲0.3㌦)へと低下。銅は10738.5㌦(▲14.0㌦)へと低下。金は4060.0㌦(▲22.8㌦)へと低下。

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注目点

  • 政府機関閉鎖により1ヶ月半も遅れて9月の米雇用統計が公表された。鮮度は高くないものの、最新値であることに変わりはなく、Fedも重視するとみられるため、「腐っても鯛」といったところか。

  • 雇用統計は、見た目ほど強くない/悪くない点を多く内包していたものの、雇用者数の増加幅は過去数ヶ月の基調から上振れており、安心感のある結果であった。後述するとおり雇用者数の増加は特定の業種に支えられていた点を割り引く必要があるが、いずれにせよ全体として「崩落」は回避できている。

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  • それでも12月FOMC(9~10日)の利下げ確率は35%程度へと上昇した。前日にタカ派なFOMC議事要旨の公表を受けて利下げ織り込み度合いが低下(18日46%→19日29%)していた反動もあったとみられるが、失業率が4.4%へと上昇したことで、市場参加者は「Fedが重く受け止める」と判断した模様。FOMC議事要旨(10月)では「多く(many)」の参加者が「金利据え置きが適切になる可能性が高い」としていたことが明らかになっていた。

  • 筆者は12月FOMCにおける利下げは「データ不足」から見送りとなる可能性が高いと判断している。10・11月雇用統計の公表は12月16日とされており、FOMCに間に合わない。しかも10月分は事業所調査のみ実施されることから、失業率や労働参加率などは判明しない。求人件数などは12月9日発表予定のJOLTS統計(9・10月分)から得られるが、ただでさえ判断が難しい状況でデータ不足となれば、政策変更は先送りされるのではないか。

  • もっとも、1月FOMCまで待てば、CPI(10月分以降の公表は未定)を含めて多くのデータが入手可能になることから、政策判断は容易になる。もちろん結果は蓋を開けてみないと分からないが、今後発表されるデータがこれまでの延長線上に位置するなら、予防的な利下げが正当化される可能性が高い。微増に留まる雇用者数、じりじりと上昇する失業率、警戒していたほど高まらない関税インフレ、鈍化する家賃上昇率などといった事象を踏まえれば、3%程度とされる中立金利に向けて利下げを進めることが想定される。

  • その上で9月雇用統計を概観すると、雇用者数は前月差+11.9万人と市場予想(同+5.3万人)を上回った。過去分は3.3万人分が下方修正されたものの、3ヶ月平均値は同+6.2万人に持ち直した。もっとも、雇用者数の増加は景気変動の影響を受けにくい教育・ヘルスケアに集中しており、ここだけ同+5.9万人分が増加していた。反対に運輸は同▲2.5万人、製造業は同▲0.6万人と弱く、その他の業種は何れも力強さに欠ける数値であった。この点はFedの利下げを正当化する。

  • 次に失業率は4.4%へと0.1%pt上昇した。働く意思のある人が増加し、労働参加率が上昇していたため、必ずしも悪い失業率上昇ではないが、年初来では0.4%ptの上昇であり、労働需給は弛みつつある。失業者を広義の尺度で捉えて算出するU6失業率、すなわちフルタイムの職が見つからず止む無くパートタイム勤務に従事している人等を失業者と見なす基準でみても8.0%と上昇傾向にある。

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  • 平均時給は前月比+0.3%、前年比+3.8%とこれまでの基調に大きな変化はなかった。米労働市場は「雇わない・解雇しない(No hire No fire)」の構図にあることがよく指摘されているが、賃上げ率についても「上げない・下げない」構図にあることが窺える。ただし、この間、移民政策の厳格化によって外国生まれの雇用者数は減少傾向にあり、それが漸次ネイティブに置き代わっている。飲食・宿泊や建設など労働集約的業種では質的改善を伴わない賃金上昇が発生している可能性があり、この点はFedの政策判断を難しくさせるだろう。

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藤代 宏一


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