- 要旨
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- 日経平均株価は先行き12ヶ月42,000円程度で推移するだろう。
- USD/JPYは先行き12ヶ月150円程度で推移するだろう。
- 日銀は利上げを続け、2026年前半に政策金利は1.0%に到達しよう。
- FEDはFF金利を25年末までに4.0%まで引き下げ、その後は様子見に転じるだろう。
金融市場
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前営業日の米国市場は、S&P500が▲1.6%、NASDAQが▲2.2%で引け。VIXは20.4へと上昇。
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米金利カーブはブル・フラット化。予想インフレ率(10年BEI)は2.333%(▲6.1bp)へと低下。実質金利は1.882%(▲9.7bp)へと低下。長短金利差(2年10年)は+53.0bpへとプラス幅拡大。
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為替(G10通貨)はJPYが最強。USD/JPYは147前半へと下落。コモディティはWTI原油が67.3㌦(▲1.9㌦)へと低下。銅は9630.5㌦(+19.5㌦)へと上昇。金は3347.7㌦(+54.5㌦)へと上昇。
注目点
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8月1日に発表された7月米雇用統計は、トランプ関税が発動されて以降、労働市場が冷え込んでいたことを「事後的」に示す、非常に複雑な結果であった。7月単月の弱さは想定の範囲内であった一方、5・6月の大幅な下方修正は目を疑うほどであった。この下方修正がトランプ大統領の逆鱗に触れ、労働省労働統計局長が解任される事態にまで発展した。もちろん、こうした弱い雇用統計はFedの利下げを正当化する。
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7月の雇用者数は前月比+7.3万人となり、市場予想(+10.4万人)を小幅に下回る程度の結果であった。衝撃だったのは過去2ヶ月分の下方修正で、その幅は25.8万人にのぼった。これによって雇用者数増減の3ヶ月平均値は、6月雇用統計発表時点で+15万人程度だったものが、今回+3.6万人へと急減した。業種別にみると、景気変動の影響をさほど受けない政府部門(前月比▲1.0万人)の弱さが目立ったほか、専門職(▲1.4万人)、製造業(▲1.1万人)、建設(+0.2万人)、レジャー・ホスピタリティ(+0.5万人)などで弱さが認められた。トランプ関税が労働市場に与えた影響は限定的であるとの従来の見方は修正を迫られることになった。

- 他方、失業率は4.2%へと0.1%ptの上昇に留まった。小数点2桁までみると、5月の4.24%の後、6月は4.12%、7月は4.25%と小幅な変化で、2024年6月に4%を突破して以降は概ね横ばいで推移している。こちらを重視すると、労働市場の軟化は緊急性に乏しい。なお、非農業部門雇用者数は事業所調査、失業率は家計調査により集計される。「雇用統計」とはこれらの総称であり、事業所調査と家計調査の結果に乖離が生じること自体は全く珍しいものではない。

- ただし、失業率が抑制されている背景には労働参加率の低下(62.28%→62.22%)があり、必ずしも労働市場の改善を意味していないことには留意が必要。その点、失業者を広義の尺度で捉えて算出するU6失業率、すなわちフルタイムの職が見つからず止む無くパートタイム勤務に従事している人等を失業者と見なす基準の失業率も7.9%へと上昇したことは不気味である。これらを踏まえると、労働市場は「総崩れ」ではないものの、お世辞にも堅調とは言えない。

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またこの日発表された7月の米ISM製造業が失望的な結果であったことも重要。ヘッドラインは48.0へと1.0pt落ち込み、7月に改善を示していた地区連銀サーベイとは逆の結果となった。また類似指標の製造業PMIも49.7へと3.0ptもの落ち込みとなり、生産活動の足取りがなお覚束ないことを印象付けた。7月下旬に相次いだ主要国・地域との交渉成立によって通商政策の不透明感は後退していることから、8月以降は改善が期待できるとはいえ、もしも企業景況感の冷え込みが長引くと、いよいよ雇用に悪影響を与える蓋然性が高い。その意味において速報性の高い企業景況感指標の重要性は高まっている。
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そうした中、ISM製造業ではインフレの先行指標として注目されている「仕入価格」が低下し、インフレ圧力の後退を示唆したことは朗報であった。今後、関税は消費者段階に転嫁されていくと予想されるが、そのペースは緩やかなものとなり、Fedの利下げを妨げるには至らない可能性がある。
- 夏場に米経済指標が落ち込み、米国経済への信頼性が揺らぐことで、金融市場が荒れる展開は2024年の同時期を彷彿とさせ、9月FOMCにおける50bpの利下げも頭によぎる。ただし、2024年のようにFedの利下げ再開が強く見込まれるなら、そもそも株式などリスク性資産が持ち堪え、昨年と同じ展開にはならない可能性もある。実際、FF金利先物から逆算した9月FOMCの利下げ確率は90%程度にまで上昇し、2026年末にかけてFF金利は3.0%以下の水準にまで引き下げられるとの見通しとなっている。こうした利下げ見通しを正当化するインフレデータの落ち着きが確認できれば、9月FOMCまでの金融市場は思いのほか、穏やかなものになる可能性もあるだろう。
藤代 宏一
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