株高不況 株高不況

9月FOMCに向けて利下げは無難な選択肢となる

藤代 宏一

要旨
  • 日経平均株価は先行き12ヶ月42,000円程度で推移するだろう。
  • USD/JPYは先行き12ヶ月150円程度で推移するだろう。
  • 日銀は利上げを続け、2026年前半に政策金利は1.0%に到達しよう。
  • FEDはFF金利を25年末までに4.0%まで引き下げ、その後は様子見に転じるだろう。
目次

金融市場

  • 前営業日の米国市場は、S&P500が▲0.1%、NASDAQが+0.1%で引け。VIXは15.5へと低下。

  • 米金利カーブはベア・フラット化。予想インフレ率(10年BEI)は2.415%(±0.0bp)へと低下。

実質金利は1.954%(+5.0bp)へと上昇。長短金利差(2年10年)は+42.5bpへとプラス幅縮小。

  • 為替(G10通貨)はUSDが全面高。USD/JPYは148後半へと上昇。コモディティはWTI原油が70.0㌦(+0.8㌦)へと上昇。銅は9698.5㌦(▲99.5㌦)へと低下。金は3295.8㌦(▲28.2㌦)へと低下。

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注目点

  • 昨日の当レポートで筆者は「利下げ再開は9月FOMCが最も有力と判断される」として、表題は「9月の利下げはほぼ固まった」とした。もっとも、FOMC後の記者会見においてパウエル議長は9月の利下げに関し、何ら言質を与えなかった。これを受けて、FF金利先物が織り込む9月FOMCまでの利下げ確率は7月29日の68%から47%に急低下し、年内の利下げ回数は1.4回となった。筆者の想定よりもパウエル議長は利下げに慎重な可能性がある。ただし、後述するように9月に向けて利下げが正当性を帯びてくると判断している。

  • 7月FOMCでは5会合連続で政策金利の据え置きが決定され、FF金利(誘導目標レンジ上限)は4.5%となった。この決定にボウマン副議長とウォラー理事が反対票を投じた。報道によれば、正副議長を含む7人の理事の内、2人が反対票を投じたのは1993年12月以来のことであり、Fed内部の意見集約が難しいことを浮き彫りにした。関税インフレが表面化していない現状、労働市場のデータが一部で軟化していることから、利下げの主張それ自体に違和感はないが、そうした声を上げたのがボウマン副議長とウォラー理事という共和党色の強い2名であったことは、より複雑な事情を物語っているように思える。ちなみにウォラー理事は「(議長職について)もし大統領から連絡があり、『就任してもらいたい』と言われれば、私は就任するだろう」とやぶさかではない姿勢を示している。

  • パウエル議長の記者会見は「現行の政策スタンスで、適時に対応できる態勢が整っていると確信している」、「解消すべき多くの不確実性が残っている」として政策判断を待つ時間的余裕があることを強調。その上で「今後数カ月でさらに詳しい情報が得られるとみている」として9月FOMCまでに得られる2ヶ月分の雇用統計と消費者物価を精査する構えを示し、「9月FOMCについては何も決定していない」とした。

  • 関税については「影響は一部の消費者物価に表れ始めている」としてCPIのコア財が上昇していることに触れ、「関税コストは消費者や小売業者も一部負担することになる」とし、その影響を見極めるには「まだ長い道のり」があるとした。

  • 他方、利下げを主張するウォラー理事が言及しているよう、労働市場についてパウエル議長は「下振れリスクは明らかに存在する」、「最新の労働市場を巡る指標では民間部門の雇用創出がやや鈍化している」とし、その上で「現在見るべき最も重要な指標は失業率」であるとした。失業率は2023年4月に3.4%に到達した後、2024年7月にかけて4.2%まで上昇し、その後は概ね横ばいとなっている(2025年6月は4.1%)。この間、広義失業率(U6、フルタイムの職が見つからず止む無くパートタイム勤務に従事している人等も失業者と見なす基準)も同様の動きとなっている。先行きの失業率について関連指標を整理すると、解雇率が低位で安定し、それと整合的に新規失業保険申請件数が抑制されている反面、求人件数が減少している。これらから判断すると、今後、失業率が上昇する可能性は否定できず、その点において予防的利下げの正当性は既に存在する。ただし、関税インフレの帰趨が判明していない現時点において、パウエル議長はその必要性は乏しいと判断した模様だ。

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  • とはいえ、いくらインフレ懸念が残存するとしても、昨夏のように労働市場の悪化を見てから利下げに動くのでは、遅きに失する懸念もある。7・8月のCPIが著しい上昇を記録したり、雇用統計が極端な強さをみせたりするなどしない限りにおいて、利下げは「無難」な選択肢になるのではないか。利下げを促すデータが8月中旬までに相次ぐならば、8月21~23日に開催されるジャクソンホール講演で利下げが示唆される可能性もある。

藤代 宏一


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