株高不況 株高不況

9月時点の利下げ観測はいずこへ?

労働市場は底堅く、利下げ観測は剝がれている

藤代 宏一

要旨
  • 日経平均株価は先行き12ヶ月42,000円程度で推移するだろう。
  • USD/JPYは先行き12ヶ月155円程度で推移するだろう。
  • 日銀は12月に政策金利を0.50%に引き上げ、25年末までに1.0%への到達を見込む。
  • FEDはFF金利を25年末までに3.50%まで引き下げ、その後は様子見に転じるだろう。
目次

金融市場

  • 前営業日の米国株は、S&P500が+0.0%、NASDAQが+0.4%で引け。VIXは13.3へと低下。
  • 米金利はベア・フラット化。予想インフレ率(10年BEI)は2.309%(+4.4bp)へと上昇。 実質金利は1.919%(▲1.0bp)へと低下。長短金利差(2年10年)は+4.3bpへとプラス幅拡大。
  • 為替はUSDが中位程度。USD/JPYは149後半で一進一退。コモディティはWTI原油が69.9㌦(+1.8㌦)へと上昇。銅は9111.5㌦(+119.0㌦)へと上昇。金は2644.7㌦(+9.8㌦)へと上昇。

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注目点

  • 10月のJOLTS求人統計は、目先の利下げを阻害するほど強くはなかったものの、労働市場の底堅さを示し、2025年末までの利下げ回数が3~4回程度に留まるとの見方を正当化する数値であった。FF金利先物が織り込む12月の利下げ確率は74%と高水準にある一方で、2025年5~12月の政策金利予想値は3.75~4.00%となっている。9月FOMC前後は、2025年12月までに政策金利が2.8%まで引き下げられるとの予想になっていたので、約1%ptの利下げ織り込みが剥がれた格好になる。

  • 10月の求人件数は774万件と市場予想(752万件)を上回り、9月の737万件から増加。3ヶ月平均値は766万件となり、前月比では+0.1%と微増に転じた。3ヶ月平均値が増加に転じるのは9ヶ月ぶりであり下げ止まりの兆しが窺える。業種別にみると、事業サービス(+21万件)、レジャー・ホスピタリティ(+13万件)、情報(+9万件)などで強さが目立った。

  • Fedが重視する、失業者数一人当たりに対する求人件数の割合は1.11へと0.03pt上昇。2019年平均の1.19と概ね同水準にあり、この近辺で下げ止まるならソフトランディングそのものであるように思える。春から夏にかけては、失業者数が求人件数を逆転するのは時間の問題に思えたが、ここへ来て流れが変わりつつある。

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  • 10月の結果で特に注目すべきは自発的離職率の上昇であろう。この指標は転職活動の活発度合いを示す代理指標として有用であり、賃金上昇率の先行指標になる。自発的離職率は10月に2.09へと0.16%pt上昇し、3ヶ月平均値でも2.01へと小幅ながら反発した。解雇率が1.03%と抑制され、新規失業保険申請件数も低位で安定している中、待遇改善を求めて転職活動を始める労働者が増加しつつあることを示唆している。10月雇用統計が発表された時点で、平均時給は再加速の動きが明確化しているうえ、NFIB中小企業調査では人件費に関する項目が反転上昇の気配をみせている。

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  • ここで改めて過去2年程度の労働市場を整理すると、ここに至るまでの増勢鈍化(雇用者数、平均時給)は主として新規採用の抑制によってもたらされてきたことがわかる。すなわち解雇率や新規失業保険申請件数が低位で安定する中、求人件数が減少したり、労働者が転職活動を躊躇ったりしたことが背景にあった。求人件数や自発的離職率が10月に反転上昇の気配をみせたことに鑑みると、労働市場の温度が冷え過ぎてしまう事態は避けられる可能性が高くなったと言えよう。このように景気後退懸念が和らぐ中、労働市場の底堅さを示す材料が増えつつあることを踏まえると、9月に想定されていたようなFedの積極的な利下げは想像しにくい。3ヶ月も経たない内にFedを取り巻く環境が大きく変化した。

  • なおJOLTS統計は調査回答率が低いことに加え、9月から10月にかけては天候要因やストライキなど特殊要因を含んでいる。また季節調整の難しさもあって単月の数値(特に速報値)を深読みするのは危険だが、CB消費者信頼感指数のサブ項目である雇用判断DIも同様に動きとなっていることに鑑みると、今月の反転を統計の振れとして切り捨てるのもまた危険に思える。

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藤代 宏一


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。