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2024.06.21
米国経済
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米国金融政策
米国経済マンスリー:2024年6月
~景気減速とインフレ鈍化が続く一方、FRBは慎重姿勢を維持~
前田 和馬
- 要旨
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- 消費を中心とした景気減速の動きが継続している。5月の小売売上高は市場予想を下回ったほか、ISM製造業やミシガン消費者信頼感などのマインド指標は軟調に推移した。一方、非農業部門雇用者数は移民流入の影響もあり堅調さを維持している。
- この間5月のコアCPIは2か月連続で減速するなど、インフレ収束の兆しを示しつつある。とはいえ、トレンドを示す3か月前比年率はコア指数で+3.3%と、家賃インフレの高止まり等を背景に2%インフレ目標達成には依然距離がある。
- 6月FOMC後に公表されたドットチャートでは年内利下げ回数が1回へと切り下がるなど、FRB高官は4~5月の良好なインフレ指標を踏まえても利下げへの慎重姿勢を崩していない。一方、金融市場はインフレ収束の確信を深めながら年内2回の利下げを織り込み続けている。

経済指標
- 5月全米供給管理協会(ISM)景況感指数
5月ISM製造業PMIは48.7(4月:49.2)と2か月連続で低下した。3月に17か月振りに好不況の節目となる50を上回ったものの、4~5月は再びこれを下回る推移となるなど、製造業活動は高金利政策による需要抑制を背景に本格的な回復の兆しがみられない。5月の内訳をみると、生産活動に先行する新規受注が45.4(49.1)と大幅に減少し全体を押し下げた。また、生産は50.2(51.3)、受注残は42.4(45.4)と共に前月水準を下回った一方、雇用は51.1(48.6)と上昇し8か月振りに50を上回った。他方、5月ISM非製造業PMIは53.8(49.4)と4か月振りに上昇するなど、サービス業活動は底堅さを示している。内訳をみると、事業活動が61.2(50.9)と大幅に加速したほか、雇用が47.1(45.9)、新規受注が54.1(52.2)と幅広い項目で上昇を示した。(詳細は「米国 製造業の調整幅が再拡大(24年5月ISM製造業)」及び「米国 5月ISM非製造業指数は急上昇し50台回復」)。
- 5月雇用統計
5月雇用統計における非農業部門雇用者数は前月差+27.2万人(4月:+16.5万人)と、前月から大幅に加速し、市場予想(+18.2万人)を上回った。同時に公表された3月実績は-0.5万人、3月実績は-1.0万人と共に小幅に下方修正された結果、3か月移動平均では+24.9万人(4月:+23.7万人)と6か月連続で節目となる+20万人を上回るなど、雇用が堅調に増加している点に変化はない。なお、足下の雇用者数の増加は不法入国を含む移民の大幅な流入が影響している可能性があり(4/15付け「バイデン政権下で流入する730万人の不法移民」)、潜在的な雇用者数の伸びは2024年で+16~20万人/月と、想定以上の移民流入が雇用の伸びを+10万人/月押し上げていると試算される(注1)。
5月の雇用者数を業種別にみると、医療・社会福祉が+8.35万人(+10.05万人)と人手不足を背景に28か月連続で増加し全体を押し上げたほか、小売業が+1.26万人(+2.26万人)、輸送・倉庫が+1.06万人(+1.95万人)と引き続き堅調な伸びを示した。また、政府部門は+4.3万人(+0.7万人)と地方自治体の教育機関等による雇用拡大が続いている。
一方、5月の労働参加率は62.5%(62.7%)と5か月振りに低下した一方、失業率は4.0%(3.9%)と2022年1月以降となる4%台に達した。5月の失業率上昇は労働参加率の低下によって緩和されていることに加えて、足下では失業者に占める自発的離職者の割合が減少傾向となるなど、労働市場の過熱感は消失しつつある。
賃金動向を巡っては、週平均労働時間が前年比-0.3%(+0.0%)と下落した一方、平均時給は+4.1%(+4.0%)と僅かながら4か月振りに加速した。この結果、労働所得(=民間雇用者数×平均労働時間×平均時給)は+5.4%(+5.6%)と、緩やかに減速しつつも雇用拡大を背景に増加基調で推移している。他方、CPI上昇率を控除した実質賃金は時間当たりで+0.8%(+0.5%)と13か月連続、週当たりでは+0.5%(+0.6%)と12か月連続でそれぞれ増加するなど、インフレ鈍化を背景に堅調な雇用所得環境が持続している(詳細は「米国 5月雇用統計は強弱入り混じるも利下げ予想後ずれ」)。
- 5月消費者物価指数(CPI)
5月消費者物価指数(CPI)は前月比+0.0%(4月:+0.3%)と前月から横ばい圏で推移した。足下のトレンドを示す3か月前比年率は総合指数が+2.8%(+4.6%)、コア指数は+3.3%(+4.1%)と大幅に減速するなど、+2%インフレ目標の達成には依然距離があるものの、インフレ減速の進展を示している。5月の内訳を見ると、食品が前月比+0.1%(+0.0%)と外食を中心に上昇した一方、エネルギーは-2.0%(+1.1%)とガソリン価格を中心に4か月振りに低下した。他方、食品・エネルギーを除くコアベース指数は+0.2%(+0.3%)と2カ月連続で前月から減速した。コアCPIの内訳を見ると、住居費は+0.4%(+0.4%)と北東部を中心に高い伸びが持続する一方、住居費を除くコアCPIは-0.0%(+0.2%)と航空運賃や自動車保険料を中心に低下した。この間前年比でみても、CPI総合は前年比+3.3%(+3.4%)、食品・エネルギーを除くコアCPIは+3.4%(+3.6%)と共に前月から伸びを鈍化した。先行きのCPIは家賃減速を主因に騰勢の鈍化が続く可能性が高いものの、賃金上昇等を背景にサービス価格や家賃が再加速するリスクに警戒が必要だろう(詳細は「米国 5月CPIの低い伸びにより利下げに向けて漸進」)。
- 5月小売売上高
5月小売売上高は前月比+0.1%(4月:-0.2%)と前月から小幅に増加したものの、市場予想(+0.3%)を下回った。内訳をみると、オンラインを中心とした無店舗小売が+0.8%(-1.8%)と前月からの反動もあり増加したほか、家電が+0.4%(+2.2%)、衣料品は+0.9%(+1.7%)と共に2か月連続で前月水準を上回った。一方、飲食は-0.4%(+0.4%)とレジャー消費の回復一服もあり軟調に推移したほか、ガソリンが-2.2%(+1.9%)と価格下落を背景に4か月振りに減少した。この結果、変動の激しい項目を除いたコア小売売上高(自動車・ガソリン・建設材・飲食サービスを除くベース)は+0.4%(-0.5%)と2か月振りに増加したものの、前月からの反発は限定的に留まるなど、消費の緩やかな減速の動きが続いている(詳細は「米国 消費の緩やかな減速を示唆(5月小売売上高) 」)。
- 5月鉱工業生産
5月鉱工業生産は前月比+0.9%(4月:+0.1%)と前月から上昇した。内訳を見ると、鉱業が+0.3%(-0.7%)と3か月振りに上昇した一方、公益は+1.6%(+4.1%)と南部における気温上昇などを背景に2か月連続で前月水準を上回った。他方、製造業は+0.9%(-0.4%)と3か月振りに上昇するなど、持ち直しの動きを示している。内訳を見ると、一般機械が+2.3%(-0.9%)と大幅に上昇し全体を押し上げた一方、コンピュータ・電子製品が+0.8%(+0.5%)と3か月連続で前月水準を上回った。また、石油・石炭製品が+2.8%(-4.2%)、化学が+1.8%(-0.5%)と素材業種も上昇するなど、幅広い業種で堅調に推移した(詳細は「米国 生産はヘッドラインほど強くない(5月鉱工業生産)」。
- 5月住宅着工件数
5月住宅着工件数は年率127.7万戸(4月:135.2万戸)と大幅に減少した(前月比-5.5%;4月:同+4.1%)。中古住宅の在庫が低水準に留まる状況においても、住宅着工は住宅ローン金利上昇による需要抑制を主因に総じて低調に推移している。内訳を見ると、戸建住宅が前月比-5.2%(4月:-0.5%)と南部を中心に3か月連続で前月水準を下回った一方、集合住宅は-6.6%(+22.5%)と前月の反動もあり減少した。この間、住宅着工に先行する住宅建設許可件数は年率138.6万戸(144.0万戸)と3か月連続で減少するなど、依然停滞の域を脱していない(詳細は「米国 住宅着工件数は悪天候等で下振れ(24年5月)」)。
経済見通し
4-6月期実質GDP成長率(7/25公表)を巡っては、6/20時点のアトランタ連銀によるGDPナウキャストが前期比年率+3.0%(1-3月期:+1.3%)と3四半期振りの加速を見込んでいる。同四半期の個人消費を巡っては、6月のコア小売売上高が前月から横ばいの場合には4-6月期で前期比+0.3%(同、+0.3%)の着地となるなど、3月の大幅増によるゲタの影響を背景に前期水準を上回ることが見込まれる。なお、2024年以降の実質消費支出は概ねコロナ以前の増加トレンドに回帰しており、コロナ収束後に見られたレジャー消費へのリベンジ需要にも一服感が示されている。他方、同四半期の設備投資に関しては、機械設備や無形資産投資を中心に堅調さを維持する可能性が高い。
とはいえ、足下のマインド指標は総じて弱い動きを示しており、これが景気急減速の兆しである可能性に警戒が必要だろう。5月ISM製造業は好不況の節目である50を2か月連続で下回った一方、6月のミシガン消費者信頼感指数は65.6(5月:69.1)と3か月連続で低下するなど軟調に推移した。他方、5月のCB消費者信頼感指数は102.0(4月:97.5)と上昇したものの、内訳をみると雇用・所得環境に対する家計の慎重な見方が続いている。実際、求人倍率(失業者数に対する求人数の割合)はコロナ以前の水準に回帰しており、雇用市場の過熱感は解消しつつある。
先行きの景気を巡る懸念要因としては、過剰貯蓄の取り崩しの進行、長引くインフレによる家計購買力の侵食、及び高金利政策による需要抑制効果の発現などが挙げられる。特に高金利の影響を巡っては、2024年1-3月期におけるクレジットカードローンの90日以上延滞率が10.7%(2023年10-12月期:9.7%)と3四半期連続で上昇し2012年4-6月期以来の水準へと達するなど、低所得家計を中心とした債務膨張が個人消費を押下げるリスクがある。また、企業の利払い負担上昇による設備投資の下押し(米国経済マンスリー:2023 年11月)、及び商業用不動産の市況悪化を巡る地銀等の経営環境悪化、これに伴う金融環境の急速な悪化に対する懸念も依然払拭されるに至っていない。
ちなみにコロナ以前の過去3回の景気後退において、利上げ打ち止めから景気後退に陥るまでの期間は11-19か月であり、景気悪化時には失業率が急速に悪化する傾向にある(詳細は「米国経済マンスリー:2023 年12月」)。今次利上げ局面の終了が2023年7月と仮定すると、2024年後半以降に累積的な利上げによる設備投資や新規雇用への影響が急速に発現し、景気後退へと陥る可能性は否定できない。
金融政策
- 6月FOMC(6/11-12開催)
6月FOMC(6/11-12開催)でFRBは7会合連続で政策金利(5.25~5.50%)を据え置いた。声明文では会合2日目の朝に公表された5月CPIの結果等を踏まえて「ここ数か月、2%インフレ目標に向けて緩やかな追加の進展が見られる」と指摘された。一方、「経済活動は堅調なペースで拡大を続けている」との景気評価、及び「インフレ率が持続的に2%へと向かうとの確信が得られるまで」利下げに踏み切らないとの政策ガイダンスは共に据え置かれた。また、同時に公表された四半期経済見通し(SEP)では年内の利下げ回数の中央値が1回(3月時点:3回)へと縮小した一方、2025年は4回(同、3回)、2026年は4回(3回)とそれぞれ利下げ回数の見通しが増加した。パウエル議長は記者会見において、データ重視の政策決定を行う姿勢を引続き強調したうえで、具体的な利下げ開始時期への言及は避けたほか、「(ドットチャートは)特定の金利パスに強くコミットしていない」との留意点を述べた。また、2026年末時点の政策金利見通し(3.00~3.25%)は前回から変更されていないと指摘したうえで、インフレ目標達成に確信を得るまでに時間がかかっているため、利下げ開始が後ずれしていることを強調した。なお、SEPではPCEインフレ率、及び失業率の見通しが上方修正される一方、経済成長率の見通しは維持されるなど、大半のFOMCメンバーは景気が大幅に減速する(或いは景気後退に陥る)可能性を低く見ていることが示唆された(詳細は「FOMCの24年金利予想はタカ派的も実態はハト派的 (24年6月11、12日FOMC)」)。
一方、6月20時点におけるFF金利先物(Fed Watch)をみると、9月の政策金利(現状:5.25-5.50%)が5.00-5.25%と利下げを予想するのは57.9%、12月は4.75-5.00%に達するとの予想が43.8%と最も多い。市場はインフレ指標の鈍化や景気減速を踏まえながら、引き続き年内2回の利下げを織り込み続けており、年内1回を見込むドットチャートと乖離する状況にある。

大統領選
11月大統領選の組み合わせはバイデンvs.トランプと2020年の再戦となる見通しだ。バイデン政権の支持率が低水準で推移するなか、現状では多くの激戦州においてトランプ氏がバイデン大統領をリードする状況にある。例えば、ブルームバーグ・ニュースとモーニング・コンサルトが5月に実施した激戦州7州に対する世論調査では、ミシガン州はバイデン氏がリード、ネバダ州は同等の支持率であるものの、残りの5州ではトランプ氏が1~7ポイントリードする状況にある。なお、両者は6月27日、及び9月10日に開催されるテレビ討論会に参加し論戦を交わす予定だ。
バイデン政権はインフレ鎮静化や堅調な経済環境が続く状況においても、経済政策に対する評価が芳しくないなど苦戦を強いられている。加えて、バイデン大統領自身の高齢不安は引き続き懸念材料であり、3月9日の一般教書演説と同様、6月末のテレビ討論会などで大統領としての適性を継続的に国民に示す必要があるだろう。一方、不法移民流入に対する国民の不満が根強いなか(「バイデン政権下で流入する730万人の不法移民」)、バイデン大統領は事実上の国境閉鎖を可能とする大統領令を6月4日に発表した(一定の不法越境者が確認された場合、亡命申請を受け入れずにメキシコ等へと即時送還)。同政策による不法移民の抑制効果に一部で疑問が生じるなか、実際に政策効果が今後顕在化するのかに加えて、移民政策に失敗したイメージを11月の投票日までに払しょくできるかが注目される。
一方、トランプ氏は4つの刑事事件を抱えることに加えて、一部の共和党関係者がトランプ支持への消極姿勢を示している。前者に関して、5月30日には不倫口止め料を巡る刑事裁判でトランプ氏への有罪評決が下されたものの、現時点では世論調査で目立った影響が見られていない(「トランプ前大統領に有罪評決」)。また、残り3つの刑事事件を巡ってはトランプ氏弁護側による様々な引き延ばし策が功を制しており、初公判の日程が依然未定となるなど、11月大統領選の投票日までに評決が出る可能性は低下しつつある。とはいえ、裁判費用や出廷による時間的な負担は、今後も同氏の選挙キャンペーンに対する重大な制約となるだろう。後者に関して、指名候補を争ったヘイリー氏は5月下旬に自身がトランプ氏に投票することを明言したものの、彼女の支持者に対して積極的に投票を呼び掛けるには至っていない。一方、第一次トランプ政権のペンス前副大統領は人工中絶や財政赤字の論点を巡って「(トランプ氏を)良心にかけて支持できない」と言及している。ヘイリー氏は中道寄り共和党員、ペンス氏はキリスト教保守・福音派に支持されているとみられており、こうした両氏のスタンスはトランプ氏がこれらの支持層を獲得するうえでの障害となる可能性がある。
出所:米商務省、米労働省、ISM、CB、FRB、ミシガン大学、Refinitivより第一生命経済研究所作成
【注釈】
- Edelberg, Wendy, and Tara Watson (2024), “New immigration estimates help make sense of the pace of employment,” Brookings Institution: The Hamilton Project.
前田 和馬
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 前田 和馬
まえだ かずま
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経済調査部 主任エコノミスト
担当: 米国経済、世界経済、経済構造分析
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