米国: 根強いインフレ圧力が継続(26年5月CPI)

~6月FOMCの据え置き観測は維持も、強まる年内利上げ観測~

桂畑 誠治

目次

1.総合指数は小幅鈍化するも、依然として高い伸びが継続

26年5月の消費者物価(総合CPI)は、前月比+0.5%(前月:同+0.6%)となり、市場予想中央値と一致した。上昇率は前月から鈍化したものの、依然として高い伸びが続いた。

内訳をみると、エネルギー価格は電気料金の上昇率が鈍化したものの、ガソリンの伸び率が高まったことで、前月比+3.9%(前月:同+3.8%)へと小幅加速した。一方で、エネルギー・食品を除く消費者物価(コアCPI)は、同+0.2%(前月:同+0.4%)となり、市場予想+0.3%を下回って鈍化した。食品価格については、外食、穀物・ベーカリー製品の伸び率が前月から高まったものの、牛肉、乳製品が下落に転じたほか、野菜・果物、ノンアルコール飲料も上昇率を下げ、全体で同+0.2%(前月:同+0.5%)へと低下した。

図表
図表

2.6月据え置きも、先行きへのインフレ警戒から年内利上げ観測が強まる

金融市場では、5月コアCPIが市場予想を下回って鈍化したことを受け、FF金利先物市場が示す6月FOMCでの政策金利据え置きの確率は約98%(前日約99%)と高水準でほぼ横ばいとなった。先々の見通しについては、根強いインフレへの警戒を背景に9月に25bp以上の利上げが行われる確率が約39%(同約37%)へ上昇し、据え置き予想は約60%(同約63%)へ低下した。12月についても25bp以上の利上げ確率が約72%(同約69%)へと上昇し、据え置き予想は約28%(同約31%)へ低下した。債券市場では、米2年国債利回り、10年国債利回りが一旦低下したが上昇に転じた(P6)。為替市場ではドルが主要通貨に対して一旦弱含んだが、強含みに転じた。主要株価指数は一旦上昇したが、水準を切り下げた。

図表
図表

3.コアCPIでは財が下落し、サービスが低下

コアCPIの内訳では、財コアが前月比▲0.1%(前月:同0.0%)と下落に転じたほか、サービスコアは同+0.3%(前月:同+0.5%)へと低下した。

財コアでは、中古車、大学の教材が上昇に転じた。一方、余暇商品、情報機器が下落に転じ、新車や自動車部品、医療用品が下落幅を拡大した。また、衣料品、アルコール飲料、その他財は伸び率が低下した。家庭用耐久品・消耗品も下落幅を縮小したがマイナス圏で推移した。

サービスコアでは、病院・関連サービス、自動車メンテナンス・修理、電話サービス、インターネットサービスが上昇に転じたほか、専門医療、余暇サービス、その他個人向けサービスが上昇した。航空運賃は小幅低下にとどまり高い伸びが続いた。一方、自動車保険が下落に転じ、レンタカーは下落幅を拡大した。帰属家賃、賃貸料、ホテル、上下水道・ゴミ収集サービスは伸び率が低下した。また、医療保険は下落幅を縮小しつつもマイナス圏で推移した。カーリースは前月から伸び率が低下し、横ばいとなった。

図表
図表

4.インフレの再燃を示す上昇モメンタム

コアCPIの上昇モメンタムを確認すると、3カ月前対比年率で+3.2%(4月:+3.2%)、6カ月前対比年率で+3.1%(4月:+2.9%)とともに高い伸びとなっており、インフレ圧力が再燃していることが示されている。

図表
図表

5.前年同月比ではエネルギーの急伸、食品、コアサービスが押し上げ

前年同月比では、総合CPIが+4.2%と市場予想と一致したが、前月+3.8%から加速した。食品は+3.1%(前月:+3.2%)、エネルギー全体ではガソリンが+40.9%、燃料油が+58.9%と急伸したことで+23.5%(前月:+17.9%)と大幅にプラス幅を拡大。コアCPIも+2.9%(前月:+2.8%)と市場予想中央値と一致したが、加速した。

コアCPIの内訳をみると、財コアは+1.1%(前月:+1.1%)と横ばいとなった。衣料品、アルコール飲料が上昇した。一方、医薬品など医療用品が下落幅を拡大したほか、家庭用耐久品・消耗品、自動車部品、余暇商品、その他財が低下した。情報機器は同率の下落を続け、中古車は下落幅を縮小しつつもマイナスを維持した。新車は同率の伸びを維持した。

サービスコアは+3.4%(前月:+3.3%)と上昇した。自動車保険が下落に転じたほか、医療保険、レンタカーが下落幅を拡大した。また、教育関連サービスが低下した。電話サービスが下落を続けた。一方、賃貸料(+2.9%、前月:+2.8%)、ホテル、専門医療サービス、病院・関連サービス、航空運賃、余暇サービス、インターネットサービス、その他個人向けサービスが上昇した。さらに、帰属家賃(+3.3%、前月:+3.3%)、上下水道・ゴミ収集サービスの前年比の伸び率は前月から横ばいとなった。

6.実質賃金の減少が個人消費の抑制要因に

物価高騰の影響で、5月の実質平均時給は前年比▲0.7%(前月:▲0.3%)となり、2023年2月(▲1.1%)以来のマイナス幅を記録した。実質平均週給も前年比▲0.4%(前月:▲0.2%)と2023年5月(▲0.4%)以来のマイナス幅となっており、購買力の低下が5月の個人消費の抑制要因になったと考えられる。

図表
図表

図表
図表

図表
図表

図表
図表

桂畑 誠治


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一ライフ資産運用経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

桂畑 誠治

かつらはた せいじ

経済調査部 主任エコノミスト
担当: 米国経済

執筆者の最近のレポート

関連テーマのレポート

関連テーマ