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2023.12.14
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12月短観から見た23年度業績見通し
~「エネルギー関連」「加工業種」「宿泊・飲食サービス」等に大幅上方修正期待~
永濱 利廣
- 要旨
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- 12月短観における23年度の大企業収益計画によれば、売上高・経常利益とも上方修正。
- 売上高計画の上方修正が目立ったのが、部品不足の解消で大幅な増産が可能になっていることに加えて、円安や値上げも追い風となっている「自動車」や夏場の原油高や円安により価格転嫁が進んだ「石油・石炭製品」「金属製品」「鉱・採石・砂利採取」。コロナからの正常化の恩恵を受けやすい「宿泊・飲食サービス」の上方修正も予想される。
- 経常利益計画を基に大幅上方修正が期待される業種を見ると、比較的価格転嫁のしやすい「電気・ガス」「石油・石炭製品」「非鉄金属」「鉱・採石・砂利採取」に加え、円安や部品不足の緩和の恩恵を受けやすい「自動車」が目立つ。
- 大企業の想定為替レートは、2023年度にドル円で138.5円/$、ユーロ円で147.9円/€だが、足元のドル円レートは140円台。中でも、今期の為替レートを137円/$台に想定している「自動車」をはじめとした加工業種はむしろ円安が恩恵になるため注目。
- 今後は欧米のインフレ鈍化に伴う過度な利下げ観測の強まり、更には日本企業の賃上げ圧力の高まりなどに伴う日銀の過度な利上げ期待等を通じて、為替レートの水準が急速に円高方向に進まなければ、こうした今期の為替レートを円高水準に想定している業種に属する企業を中心に今期業績が修正される可能性がある。
- 目次
売上高・経常利益いずれも上方修正
12月13~14日にかけて公表された12月短観の大企業調査は、11月上旬~12月上旬にかけて資本金10億円以上の大企業約1900社に対して行った調査であり、先日公表された法人企業景気予測調査に続いて、今期業績予想の先行指標として注目される。
そこで本稿では、同調査を用いて、1月下旬から本格化する四半期決算発表で今年度業績計画の上方修正が見込まれる業種を予想してみたい。
資料1は、12月短観の調査対象大企業(全産業、除く金融)が計画する半期別売上高・経常利益前年比の推移を見たものである。まず売上高を見ると、23年度は下期に限れば下方修正だが、年度全体で見れば上方修正となっている。
一方、経常利益を見ても、23年度下期は前回から下方修正となったものの、23年度通期で見れば上方修正となり増益計画となっている。このことから、四半期決算発表では23年度の企業業績見通しを引き上げる企業が増えることが予想される。
売上高大幅上方修正の「自動車」「石油・石炭製品」「宿泊・飲食サービス」
続いて、12月短観の売上高計画を基に、大幅上方修正が見込まれる業種を選定してみたい。資料2は22年度の業種別売上高計画の前年比と修正率をまとめたものである。
結果を見ると、23年度も多くの業種で増収計画となる中で、最大の上方修正率となっているのが「自動車」である。それに続くのが「石油・石炭製品」となり、以下「宿泊飲食サービス」「鉱・採石・砂利採取」「金属製品」と続く。
まず、「自動車」の上方修正については、部品不足の解消で大幅な増産が可能になっていることに加えて、円安や値上げも追い風となっていることが推察される。
また、「石油・石炭製品」や「鉱・採石・砂利採取」「金属製品」等の上方修正については、夏場以降に進んだ資源価格の上昇や円安に伴う製品価格への転嫁が影響した可能性が推察される。
一方、「宿泊・飲食サービス」の上方修正は、コロナからの経済正常化やインバウンド消費の増加等により、価格転嫁や需要の拡大が織り込まれたことが推察される。
従って、次の四半期決算における業績見通しでは、こうした業種に関連する企業について売上高計画がどの程度上方修正されるかが注目されよう。
経常利益大幅上方修正期待は「電気・ガス」「石油・石炭製品」「非鉄金属」
続いて、12月短観の経常利益計画から大幅上方修正が期待される業種を見通してみよう(資料3)。結果を見ると、上方修正率が最も大きいのは「電気・ガス」となっている。こちらは政府の物価高対策延長の効果が含まれることに加え、燃料費調整制度に伴う損益改善や電気料金値上げ、原発再稼働による燃料費削減効果が寄与している可能性が推察される。
それに続くのが「石油・石炭製品」である。こちらは、夏場にかけての原油高に伴う在庫評価益の拡大効果や政府の物価高対策の延長等も寄与しているものと思われる。
また、「非鉄金属」や「鉱・採石・砂利採取」については、夏場にかけて想定以上の円安が進展したこと等に伴う価格転嫁の影響が大きいことが推察される。
それに続くのが「自動車」であり、売上高の上方修正と同様に価格転嫁や半導体などの部品不足緩和等により収益の改善が寄与している可能性が高い。
このように、次の四半期決算で経常利益見通しの上方修正が期待される業種としては、価格転嫁が進めやすいエネルギーや素材関連加えて、価格転嫁や半導体など部品不足緩和の恩恵を受けやすい自動車関連が指摘できる。
為替レートの変動で業績が修正される可能性も
なお、12月短観の収益計画では、企業の想定為替レートも公表されることから、業種別の想定為替レートも今後の業績見通しの修正の可能性を読み解く手がかりとして注目したい。
資料4にて実際に今年度の想定為替レートを確認すると、大企業における事業計画の前提となる想定為替レートはドル円で138.5円/$、ユーロ円で147.9円/€となっている。しかし、足元のドル円レートは140円台となっている。
中でも、製造業で足元のドル円レートよりも特に円高で今期の為替レートを想定しているのが円安の恩恵を最も受けやすい「自動車」となっている。
なお、物品賃貸や各種サービスなど輸入依存度の高い内需関連産業の一部では、円安でむしろ業績の下押し要因となる企業も含まれている可能性があり注意が必要だが、特に輸出関連の製造業が多く含まれる加工業種では137円/$台と円高気味の想定をしていることに注目すべきだろう。
以上の結果を踏まえれば、今後は欧米のインフレ鈍化に伴う過度な利下げ観測の強まり、更には日本企業の賃上げ圧力の高まりなどに伴う日銀の過度な利上げ期待等を通じて、為替レートの水準が急速に円高方向に進まなければ、こうした今期の為替レートを円高水準に想定している業種に属する企業を中心に今期業績が修正される可能性があることにも注目すべきだろう。
永濱 利廣
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 永濱 利廣
ながはま としひろ
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経済調査部 首席エコノミスト
担当: 内外経済市場長期予測、経済統計、マクロ経済分析
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