株高不況 株高不況

穏健な雇用統計をみてFedは利上げ停止へ

藤代 宏一

要旨
  • 日経平均は先行き12ヶ月28,000程度で推移するだろう。
  • USD/JPYは先行き12ヶ月130程度で推移するだろう。
  • 日銀は現在のYCCを6-7月に修正するだろう。長期金利の変動許容幅拡大を見込む。
  • FEDはFF金利を5.25%(誘導幅上限)で据え置くだろう。利下げは10-12月期を見込む。
目次

金融市場

  • 前日の米国株は上昇。S&P500は+1.8%、NASDAQは+2.2%で引け。VIXは17.2へと低下。
  • 米金利はベア・フラット化。予想インフレ率(10年BEI)は2.216%(+2.9bp)へと上昇。実質金利は1.218%(+3.0bp)へと上昇。長短金利差(2年10年)は▲48.1bpへとマイナス幅拡大。
  • 為替(G10通貨)はUSDが中位程度。USD/JPYは134後半へと上伸。コモディティはWTI原油が71.3㌦(+2.8㌦)へと上昇。銅は8581.5㌦(+88.0㌦)へと上昇。金は2024.8㌦(▲30.9㌦)へと低下。

図表1
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図表2
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図表3
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図表4
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図表5
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注目点

  • 6月FOMCを予想する上で重要な材料となる4月米雇用統計は、利上げ停止を催促するほど弱くなく、金融市場目線では「穏健」な結果であった。ただし米銀の連鎖破綻懸念が燻ぶる中、Fedは6月FOMCで利上げを停止すると思われる。FF金利先物は7月に利下げが始まるとの予想を織り込んだ水準にあるが、インフレ率低下に確信を持てない状況では、更なる銀行破綻など、よほどのことが無い限りFedが即座にその選択肢を採用するとは考えにくい。

  • 4月米雇用統計によると、雇用者数は前月比+25.3万人と市場予想に概ね一致。過去2ヶ月分は累積14.9万人分の下方修正となったため3ヶ月平均では+22.2万人となった。企業収益が圧迫される中、新規採用が減少するとの懸念は根強いが、少なくとも4月分においてそれは杞憂に終わった。業種別にみると人手不足のきついレジャー・ホスピタリティ(宿泊・飲食業、+3.1万人)が順調に増加したほか、教育(+7.7万人)、建設(+1.5万人)、運輸(+1.1万人)などが堅調。政府部門(+2.3万人)も強かった。減少は卸売り(▲0.2万人)のみであった。

  • 失業率は3.4%へと低下(3.50%→3.40%)し、歴史的な低水準に到達。失業者を広義の尺度で捉えて算出するU6失業率(フルタイムの職が見つからず止む無くパートタイム勤務に従事している人を失業者と見なす)も6.6%へと低下するなど質的な改善も確認できた。過去数ヶ月、企業が人件費増加に及び腰となる中、フルタイム労働への就職が困難になるとの懸念が浮上していたが、フルタイム労働者の比率は4月も一段と上昇した。企業は「背に腹は代えられぬ」として労働力確保を優先しているとみられる。

図表6
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図表7
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図表8
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図表9
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  • 注目の労働参加率は62.56%へと0.06%pt低下。5ヶ月ぶりに労働市場の「厚み」は減ったものの、大きく見れば人手不足感が緩和する方向にある。ただし労働市場の「歪み」が悪化したことには留意が必要。労働参加率を年代別にみると働き盛り世代の25-54歳(83.3%)がパンデミック発生前を凌駕した水準から一段と上昇する反面、55歳以上(38.6%→38.4%)は2ヶ月ぶりに低下。人手不足の主因になっている55歳以上の労働参加率回復が遅々としてパンデミック発生前後の断層が一向に埋まらない点は、賃金インフレの早期沈静化に疑問を投げかける。

図表10
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図表11
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図表12
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  • 賃金インフレの帰趨を読む上で重要な平均時給は前月比+0.5%、前年比+4.5%となった。前月比の伸びが加速したことで、瞬間風速を示す3ヶ月前比年率は+4.2%へと反転上昇、同3ヶ月平均の伸びは+3.8%となった。過去数ヶ月、企業サーベイでは雇用や人件費に関連する複数の項目が軟化し、そうした下で賃金インフレの炎は下火になりつつあったが、今回の結果は賃金上昇圧力のしぶとさを印象付けた。この間、週平均労働時間は34.4時間と前月比不変であった。

図表13
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  • 4月雇用統計および5月FOMCの結果を整理すると、Fedは5月FOMCにおける25bp利上げを以って様子見姿勢に転じると思われる。直近の状況はインフレ退治に主眼を置いた場合、金融引き締めは道半ばかもしれないが、他方で銀行の連鎖破綻が一部現実のものになり、かつその火種が残存している現状において更なる金融引き締めは、リスク管理の甘い銀行や投資ファンドを必要以上に炙り出してしまう危険性を孕んでいる。銀行貸出態度の厳格化が失業率の急上昇に繋がるという過去の経験則を崩すために現時点で採り得る最良の選択肢は利上げ停止であろう。6月FOMCでは利上げ再開に含みを持たせる形で政策金利を据え置き、その後暫くはインフレデータを見極める時間帯となろう。

藤代 宏一


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