株高不況 株高不況

工作機械受注が教えてくれる景況感(22 年6月) 水準と伸び率で異なる印象

藤代 宏一

要旨
  • 日経平均は先行き12ヶ月28,000程度で推移するだろう。
  • USD/JPYは先行き12ヶ月128程度で推移するだろう。
  • 日銀は、現在のYCCを少なくとも2023年4月までは維持するだろう。
  • FEDは、2022年は毎FOMCで利上げを実施するだろう。
目次

金融市場

  • 前日の米国株は下落。NYダウは▲0.5%、S&P500は▲1.2%、NASDAQは▲2.3%で引け。VIXは26.2へと上昇。
  • 米金利はブル・フラット化傾向。債券市場の予想インフレ率(10年BEI)は2.326%(▲4.9bp)へと低下。2年10年金利差はマイナス幅拡大。
  • 為替(G10)はUSDが全面高。USD/JPYは137を突破。コモディティはWTI原油が104.1㌦(▲0.7㌦)へと低下。銅は7584.5㌦(▲221.0㌦)へと低下。金は1731.7㌦(▲10.6㌦)へと低下。

米国 イールドカーブ
米国 イールドカーブ

米国 イールドカーブ
米国 イールドカーブ

米国 イールドカーブ(前日差)
米国 イールドカーブ(前日差)

米国 予想インフレ率(10年BEI)
米国 予想インフレ率(10年BEI)

米国 長短金利差(2年10年)
米国 長短金利差(2年10年)

注目点

  • 工作機械受注統計(日本工作機械工業会)によると、6月の受注額(原数値)は1546億円であった。筆者作成の季節調整値は前月比▲5.6%、1606億円と前月比で減少したものの高水準を維持。もっとも、前年比伸び率(原数値)は+17.1%へと増勢が鈍化。国内向けは季節調整済み前月比+3.3%、原数値前年比+31.3%、外需は季節調整済み前月比▲10.8%、原数値前年比+9.9%であった。グラフの印象は水準と伸び率で大きく異なる。

工作機械受注
工作機械受注

工作機械受注
工作機械受注

工作機械受注
工作機械受注

工作機械受注
工作機械受注

工作機械受注
工作機械受注

  • 地域・業種別詳細は確報の発表を待つ必要があるが、5月までの動向から判断すると外需は欧州と米国向けの底堅さが続いた反面、アジアは中国を中心に伸び悩んだ可能性がある。国内向けは自動車からの受注が回復傾向にある反面、一般機械や金属機械が頭打ち感を強めている。

  • 工作機械業界は、その受注サイクルが世界経済の包括的指標であるOECD景気先行指数と連 動するほか、アナリストの業績予想(TOPIX予想EPS)とも一定の連動性を有する。OECD景気先行指数は日本が改善傾向を維持する反面、アジアは中国や韓国の減速を背景に低下基調にあり、米国と欧州も下を向いている。中国は6月1日に一旦ロックダウンを解除したものの、なお厳格な管理下にあり先行き不透明感は残る。欧州はウクライナ危機とそれに伴うエネルギー戦略の難しさに直面しており当面はダウンサイドリスクが大きい。米国は消費者マインドが極端な悪化を示すなどインフレのマイナス影響が深刻なほか、最近は企業景況感も厳しさを増している。工作機械受注はこうした海外景気の風向きの悪さと一致しているようにみえ、そうした下で日本企業の業績見通しは慎重化している。工作機械は、決して大きくはない業界規模でありながらその受注動向は世界経済のトレンドを掴むうえで優れた尺度と言える。

工作機械受注・OECD景気先行指数
工作機械受注・OECD景気先行指数

工作機械受注・OECD景気先行指数
工作機械受注・OECD景気先行指数

工作機械受注・予想EPS
工作機械受注・予想EPS

  • そこでサイクルの位置取りを確認するために縦軸に工作機械受注の水準(36ヶ月平均からの乖離)、横軸に方向感(6ヶ月前比)をとった循環図をみると、直近数ヶ月はサプライチェーン問題に起因する(海外からの)受注の乱れによって逆走しているが、大きくみれば右上領域を左方向に進んでおり、受注増加の終盤にあると判断される。過去の経験則に従うなら、今後、受注は高水準を維持しつつも、左方向へ下向きのカーブを描くと予想される。株式市場では業績ピークアウトが警戒される時間帯だろう。8月の決算シーズンでは、受注や利益が過去最高を更新する決算を発表しても、投資家の注目は伸び率鈍化に向かいやすいと考えられる。

工作機械受注
工作機械受注

  • なお、こうした構図は半導体(製造装置)も同様。内閣府公表の機械受注統計で半導体製造装置の受注動向が反映される「電子計算機等」をみると、受注額は高水準にあるものの、伸び率は2021年12月をピークに鈍化している。半導体製造装置の受注動向は電子部品や化学品(半導体部材)など広範なIT関連財と関係を有する。半導体製造装置を直接手掛ける企業の存在感は株式市場の方向感を決めるほど大きくはないが、電子部品・デバイス、化学、精密といった関連企業を含めると日経平均に大きなインパクトを与え、結果的に両者が連動する。中長期的にみて広義半導体が有望セクターであることに変わりはないものの、現在の株価指数を持ち上げるにはエンジンの出力が足りない印象だ。

電子計算機等受注額・日経平均
電子計算機等受注額・日経平均

藤代 宏一


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。