デジタル国家ウクライナ
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スコットランドは来年の独立投票を目指す

~独立への道のりは引き続き険しい~

田中 理

要旨
  • スコットランドのスタージョン第一首相は28日、2023年10月に英国からの独立の是非を問う住民投票を再実施する計画を明らかにした。英国政府は投票実施に否定的で、スコットランド政府は同国議会に投票を実施する権限があるかの判断を最高裁判所に求めている。投票実施の法的権限が認められる可能性は低いうえ、最近の世論調査では残留支持が独立支持を僅かに上回っている。スコットランドが英国から独立する道のりは険しい。

英国を構成する4つのカントリーの1つであるスコットランドのスタージョン第一首相は28日、2023年10月19日に英国からの独立の是非を問う住民投票を再び実施する計画を明らかにした。2014年にスコットランドで行われた住民投票では、事前の世論調査で独立支持が残留支持を一時上回ったものの、独立後の国家運営を巡る不透明感から無難な現状維持票が終盤で延び、賛成45%対反対55%で英国残留が決まった。その後、2016年の国民投票で英国は欧州連合(EU)からの離脱を選択し、3年半もの難しい協議の末に、英国は2020年1月末にEUを正式に離脱した。2016年の国民投票でEU残留派が多数を占めたスコットランドでは、2014年の住民投票当時と状況が変わったことを理由に、独立賛成派を中心に投票再実施を求める声が浮上している。

2021年5月のスコットランド議会選で、独立を支持するスコットランド民族党(SNP)とスコットランド緑の党が議会の過半数を確保して以来、スタージョン第一首相は投票再実施の機会を窺ってきた。1998年スコットランド法第30条によれば、スコットランドが連合に関連する立法行為を行うには、英国議会がスコットランド議会に一時的に関連の立法権限を付与する必要がある。2014年の住民投票は、当時のキャメロン首相が投票実施を認め、スコットランド議会に関連の立法権限を付与する形で行われた。スタージョン第一首相はジョンソン首相に第30条に基づく立法権限の付与を求めている。ジョンソン首相は慎重に検討するとしているが、英国の分裂につながりかねない投票実施を認めるつもりはない。頭ごなしにスコットランド市民から投票機会を奪うのではなく、昨年まではコロナ禍克服が、最近では物価高騰による国民生活への打撃軽減に努めるのが先決として、今は投票再実施の時ではないとの立場を採っている。

スタージョン氏は、スコットランドの民主主義がジョンソン首相の囚人となることは許されないと批判する。だが、あくまで合法的な投票を行うとしており、立法権限の付与なしにスコットランド議会が独立の是非を決めることができるかを巡って、法務長官を通じて英国の最高裁判所の判断を求めている。住民投票の関連法案を議会で通す前に、最高裁判所に判断を求めたのは異例の措置と言える。最高裁判所がスコットランド議会の投票権限を認めない場合、スタージョン氏は2024年に予定される次の英国総選挙で独立の是非を争点に戦う意向を表明している。

スタージョン氏によれば、次回の投票では2014年と同様に、「スコットランドは独立国となるべきか?」を尋ねるとしている。「独立」か「残留」を問う二者択一の投票に比べて、「権限移譲」を加えた三択の投票では、独立派の勝ち目が低下する。二者択一の場合も最近の世論調査の多くで、「残留」が「独立」を僅かに上回る(図)。今回の投票日程の発表にもかかわらず、スコットランドで合法的な投票が行われるか、投票を実施した場合に独立支持が多数となるかは予断を許さない。スコットランドが英国から独立する道のりは険しい。

(図)スコットランド独立是非を問う世論調査
(図)スコットランド独立是非を問う世論調査

以上

田中 理

田中 理

たなか おさむ

経済調査部 主席エコノミスト
担当: 欧州・米国経済

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