工作機械受注が教えてくれる景況感

水準と伸び率で別世界

藤代 宏一

要旨
  • 日経平均は先行き12ヶ月28,000程度で推移するだろう。
  • USD/JPYは先行き12ヶ月117程度で推移するだろう。
  • 日銀は、現在のYCCを少なくとも2023年4月までは維持するだろう。
  • FEDは、2022年は毎FOMCで利上げを実施、5月にはQTに着手するだろう。
目次

金融市場

  • 前日の米国株は上昇。NYダウは▲1.2%、S&P500は▲1.7%、NASDAQは▲2.2%で引け。VIXは24.40へと上昇。
  • 米金利はツイスト・スティープ化。30年金利は中立金利(Fed推計2.4%)を明確に上回る水準にある。債券市場の実質金利は▲0.155%(+3.4bp)へと上昇。
  • 為替(G10通貨)はUSD高基調。USD/JPYは124近傍へと上昇。コモディティはWTI原油が94.3㌦(▲4.0㌦)へと低下。銅は10200.5㌦(▲123.0㌦)へと低下。金は1944.3㌦(+2.7㌦)へと上昇。

米国 イールドカーブ
米国 イールドカーブ

米国 イールドカーブ
米国 イールドカーブ

米国 イールドカーブ
米国 イールドカーブ

米国 予想インフレ率(10年)
米国 予想インフレ率(10年)

米国 実質金利(10年)
米国 実質金利(10年)

注目ポイント

  • 工作機械受注統計(日本工作機械工業会)によると、3月の受注額(原数値)は1664億円と2020年3月対比で2倍超、過去2番目の高水準を記録。筆者作成の季節調整値は前月比+5.5%の1518億円と今次サイクルのピークを更新した。もっとも、前年比(原数値)では+30.2%へと伸び率縮小。国内向けは季節調整済み前月比+0.0%、前年比+48.3%、外需は季節調整済み前月比+9.1%、前年比+21.8%であった。グラフの印象は水準と伸び率で大きく異なる。

工作機械受注
工作機械受注

工作機械受注
工作機械受注

工作機械受注
工作機械受注

工作機械受注
工作機械受注

工作機械受注
工作機械受注

  • 地域・業種別詳細は確報を待つ必要があるが、外需は2月までの傾向から判断すると欧州向けの底堅さが続いた反面、アジア(主に中韓台)と米国が減少した可能性が高い。国内向けは自動車からの受注が低水準に留まるなか、一般機械は頭打ち感を強めている。反対に電気機械や金属機械は増加傾向にある。

  • 工作機械業界は、その受注サイクルが世界経済の包括的指標であるOECD景気先行指数と連 動するほか、アナリストの業績予想(TOPIX予想EPS)とも一定の連動性を有する。OECD景気先行指数は日本、米国が横ばい圏にある一方、中国や韓国の減速を背景にアジアが低下基調にあり、ここへ来て欧州も下向き基調にある。中国は不動産市場の悪化に一服感がみられる反面、製造業の活動はサプライチェーン問題もあって加速感に乏しく、サービス業は厳格なコロナ対策によって大きく落ち込んでいる。米国はなお底堅さを維持しているが、インフレの負の側面が目立ち始めている。欧州はウクライナ危機が重く圧し掛かっておりダウンサイドリスクが大きい。工作機械受注はこの「空気の悪さ」と一致しているようにみえ、そうした下で企業業績の見通しは慎重化している。工作機械は、決して大きくはない業界規模でありながらその受注動向は世界経済のトレンドを掴むうえで優れた尺度と言える。

工作機械受注・OECD景気先行指数
工作機械受注・OECD景気先行指数

工作機械受注・OECD景気先行指数
工作機械受注・OECD景気先行指数

工作機械受注・予想EPS
工作機械受注・予想EPS

  • そこでサイクルの位置取りを確認するために縦軸に工作機械受注の水準(36ヶ月平均からの乖離)、横軸に方向感(6ヶ月前比)をとった循環図をみると、現在は右上領域を左方向に進んでおり、受注増加の終盤にあると判断される。過去の経験則に従うなら、今後受注は高水準を維持するも下向きのカーブを描くと予想される。株式市場目線では、業績ピークアウトが警戒される時間帯だろう。受注や利益が過去最高を更新する決算を発表しても、株式市場では利益確定売りが優勢となるケースが増加するのではないか。

工作機械受注
工作機械受注

藤代 宏一

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